2015年06月21日

「その女アレックス」ピエール・ルメートル

Cimg2613

中年男に誘拐されたアレックス。

廃墟ビルに連れ込まれ、前かがみになり膝をかかえて丸くなっているしかない身動きできない状態で格子状の木箱に裸で押し込められ、天井から吊るされます。

なぜわたしなのか。

男は言います。

「おまえがくたばるのを見たいからだ」

一方、アレックスが車に押し込められ拉致されたのを目撃した人物がおり、通報によって警察が動きます。

指揮を執るのは身長145センチのカミーユ・ヴェルーヴェン警部。

以前に妻を誘拐され殺害されたトラウマを持っています。

しかし警察の捜査はまったくはかどりません。

その間、アレックスは糞尿垂れ流しの状態でどんどん衰弱していきます。

やがてネズミが檻の周りに集まりだし、アレックスの命を脅かします・・・・。

ここまでが序章なんですね。

なぜアレックスがこのような目に合わなければならないのか、誘拐した中年男は何者なのか。

読み進めていきますとアレックスが単なるそこらの女性であり被害者ではないことが明らかになってきます。

被害者のアレックスが実は・・・・ということで、ぐわっと立ち上がってくるんです。

この展開はすごいですね。

なんといいますか、何度も右に左にハンドル切って大きく方向転換し、読者を揺さぶってくれます。

ただ、ラストに関しましては私はそれは違うやろと思いました。

「われわれにとって大事なのは、警部、真実ではなく正義ですよ」

違います。

あなたたち警察や予審判事にとって大事なのはあくまでも真実です。

心情的にはわかりますが、真実をもって裁かなければなりません。

なのでこの作品、最後に首をかしげざるを得ませんでした。

ラベル:海外小説
posted by たろちゃん at 03:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ひ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月22日

「永遠の0」百田尚樹

Cimg2573

司法試験に何度も失敗してぶらぶらしている26歳の健太郎と30歳でフリーライターをしている姉の慶子。

二人は特攻隊で亡くなった祖父である宮部久蔵のことを調べ始めます。

いくつかの戦友会に宮部のことを知っている人がいるかどうか手紙を出し、返事が来た何人かと会うことになります。

最初に会った人は、あいつは逃げ回っていた臆病者だと言います。

それを聞いて萎えてしまう二人。

しかしその後も何人かに話を聞いて回るつれ、だんだんと宮部の人間像が浮かびあがってきます。

国のために死ぬのが当たり前という風潮だった当時において、宮部はひたすら生きて家族のもとに帰るのだと主張し続けていたのでした。

特攻隊への半強制的な志願も拒否し続けていたのです。

そんな宮部がなぜ特攻隊で死ぬことになったのか・・・・。

力作ですねぇ。

感動しました。

ですがかなり賛否が分かれているようですね。

特攻隊や戦争を美化しているというような意見に関しては、さすがにそれはありえません。

どこをどう読んでもそんな話は出てこない。

むしろ戦争の悲惨さ、軍上層部の浅はかさや冷酷さ、特攻という行為の愚かさをくどいほどに主張しています。

右傾という批判もあるようですが、主張としてはむしろ左傾でしょう。

人それぞれ考え方が違いますので感想も違ってくるのは当然のことですけど。

映画については観ていないのでなんとも。

私は実にいい小説だと思いました。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 03:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ひ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月10日

「ふらんす料理への招待」日影丈吉

Cimg2550

まず最初の章で読者にフランス料理に高級なイメージを持っていないかと著者は問いかけます。

普通なら決してそんなことはないというところですが、「高級という点は認めてもいいが」ときます。(笑)

ただし「様式的な格式ばった食事は、フランス料理の本質とはなんの関係もない」と。

なんやらようわかりませんが。

この本の内容の初出は1971年と1976年。

今と違い、まだ一般庶民にはフランス料理が馴染みない時代です。

そんな時代にフランス料理を啓蒙しようとしたのは立派。

でもフランス料理といってもピンキリでして、当然ながら一般的なフランス人の食事は決して高級ではありません。

日本でいえば料亭クラスの料理を日本人が毎日食べているわけじゃない。

そんなのは特別です。

この本ではレストランの料理を焦点にして語っておられるので、「高級という点は認めてもいいが」となってしまうのですね。

フランス料理といえばレストランというのがやはり時代を感じさせます。

もちろん今もそうなんですが。

70年代は街中に気さくな店などなく、高級ホテルのレストランで食べる料理という時代でしたし。

なのでこの本はフランス料理への招待というよりも、フランス料理店への招待といったほうがいいかもしれません。

ちなみにこの著者はミステリー作家ですが、フランス料理に対しての造詣は深く、帝国ホテルの村上信夫氏やホテルオークラの小野正吉氏といった伝説のシェフたちを君付けで呼んでおられたような立場です。

すごい。(笑)

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 03:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ひ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月05日

「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉

Cimg2459

宝生麗子は国立署の刑事です。

しかし実は世界に名を轟かせる『宝生グループ』のお嬢様。

ちょっとマヌケな上司、風祭警部は『風祭モータース』の御曹司。

コンビで難事件に挑みますがいつも壁にぶち当たります。

麗子には影山という執事兼運転手がいます。

難事件を相談すると慇懃無礼な口調で麗子を小馬鹿にしつつ、しかし鋭く事件の謎を解き明かしていきます・・・・。

バカミスとまでは言いませんが、まあそれに近いノリのミステリーですね。(笑)

ユーモアミステリーといいますか、文章は読みやすく笑いもあります。

通なミステリーファンは苦笑するかもしれませんが、一般読者には抵抗なく受け入れられる作品ではないでしょうか。

やや古典的でベタですが正統派の謎解き小説であるのはたしかです。

なのでミステリー入門に適した一冊ですね。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ひ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月16日

「タモリ論」樋口毅宏

Cimg2450

誰もが知る芸人タモリ。

30年以上も「笑っていいとも」で昼の生放送を続けてきました。

これはたいへんなことです。

でもお笑い芸人としての本領といいますか、この人の本来のすごさは発揮されていませんでした。

というかテレビでこの人の真髄に触れるのは無理なのかも。

というわけで、この「タモリ論」ではどれほど深くタモリという芸人に切り込んでくれるのかなと期待して読んでみたのですが。

なんですかこれは。

どこが「タモリ論」なんでしょう。

ただ単に著者がタモリに対する思い入れを語り、「笑っていいとも」の思い出を語る。

そして「お笑いBIG3」としてビートたけしや明石家さんまについて語る。

なんとも浅く生ぬるい内容です。

よくもまあ「タモリ論」なんてタイトルをつけられたものです。

posted by たろちゃん at 03:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ひ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする