2018年12月01日

「握りの真髄 江戸前寿司の三職人が語る」文藝春秋 編

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江戸前寿司の職人が3人登場し、その仕事の内容や握り寿司の写真を原寸大で紹介した一冊です。
紹介されている職人は、技が完成の域に達した『すきやばし次郎』小野二郎、ほぼ完成した『おけい寿司』村瀬泰行、完成過程にある『はしぐち』橋口敏郎。
なるほど、ただ単に3人の職人を紹介するというのではなく、年齢や技の完成度という視点からも考慮された人選なわけです。
私など寿司屋というと回転している店しか知らないもので(笑)、このような職人の仕事を目の当たりにすることはないので実に興味深い。
ごはんの上に魚の薄切りを乗っけただけといえばその通りではあるのですが、しかしそこには魚の目利きから下拵え、仕込み、握りの技術など、実は何年もかけて習得された技があります。
まさに職人仕事ですね。
私も一度そのような仕事がされた握り寿司を食べてみたいものです。
と言いつつ、このような店に行くことはないでしょうけど。(笑)
ラベル:グルメ本
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2018年08月19日

「杳子・妻隠」古井由吉

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山登りをしていた青年が谷に下ります。
その深い谷底にひとり座っていたのが女子大生の杳子です。
どう考えてもまともな精神の持ち主ではありません。
かといってあからさまに異常というわけでもないのですが。
それから3か月後、彼はまた偶然に駅で杳子と再会します。
そこから彼と杳子は定期的に会うことになるのですが・・・・。
精神を病んでいる女子大生と青年の恋愛です。
青年は杳子の庇護者的存在なのですが、しかし客観的な視線(読者の視線)で見ますと、彼も杳子ほどではないにせよ同じ世界の人間なんですよね。
そしてどちらも現実感というか生活感がない。
特に彼のほうはひたすら杳子の相手をしていますが、まったくそれ以外の生活が描かれていない。
ひたすら物語は二人の世界を描いています。
世界が閉塞している印象を受けますね。
併録されている「妻隠」はアパートに住む若夫婦の夫の視線で語られています。
アパートの隣には一軒家があり、建築の仕事をしている男たちの寮です。
荒くれな男たちの視線に妻はいつも晒されています。
だからといって別に事件が起こるわけでもないのですが、全体に不穏な空気が流れていますね。
住居のシチュエーションがそうですし、夫婦のつながりのバランスもどうも不安定です。
どちらの作品も暗く狭く、そのぶん世界は濃密です。
ラベル:小説
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2018年07月22日

「東京たべもの探検」文藝春秋編

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タイトル通り東京のいろんな美味しいものを紹介した本です。
記事の初出は昭和57年。
なのでいまさら実用性を期待してはいけません。
あくまで読み物として、そして当時の食事情、飲食店事情の資料としてはじゅうぶんに読む価値があるかと思います。
まずは築地の紹介です。
築地のシステムや飲食店などを紹介しておられます。
そしてラーメンや丼、浅草の美味、東京のフランス料理など。
さすがにもう40年近く昔の内容ですから、飲食店などは閉店している店も多いでしょう。
しかし健在な店もありまして、そのような店はさすがの風格ですね。
築地なら「大和寿司」とか「愛養」とか。
ラーメンでは「たいめいけん」、「ホープ軒」。
浅草では「並木藪蕎麦」など。
まあ私は大阪人ですしわざわざ東京にまで食べにいくほどの道楽ではありませんので、それらの店は未経験なんですけども。
ですがそんな私でも名前を知っている店ということですからね。
たいしたものだと思います。
カラー写真もふんだんに掲載され、大阪人の私にも楽しい一冊でした。
ラベル:グルメ本
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2018年07月08日

「はるいろ恋愛工房」藤谷郁

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尾崎梨乃の週に1度の楽しみは、会社帰りに立ち寄る和風雑貨の店で気に入った小物をひとつ選ぶこと。
そしてその店に毎週金曜日に現れるスーツ姿の男性を見ること。
遠くから見つめるだけだったその男性が梨乃がうっかり皿を割ってしまったことをかばってくれ、急速に親しくなります。
その男性こと奈良哲美の趣味は陶芸です。
哲美に陶芸教室に入ることを勧められこれは大チャンスとばかりに入る決心をする梨乃ですが、哲美は茶碗や皿にしか興味がない陶芸バカのようで・・・・。
不器用な梨乃が哲美の指導で少しずつ陶芸に目覚めていく過程が微笑ましい。
そして作者はちゃんと陶芸の知識がおありのようで、そのあたりがきちっと作品の骨になっているんですね。
なので上辺だけ陶芸を扱ったチャラい恋愛小説にはなっていません。
エタニティ文庫の赤といえば一定以上の性描写があるということになっていますが、そのようなシーンが出てくるのも作品の半分くらいになってようやくです。
しっかりと物語を書いておられるのですね。
ライバルが登場したり哲美に過去があったり、そのあたりは当然押さえておられます。
思いのほか読み応えがあり、満足の読後感でした。
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2018年03月10日

「爪と目」藤野可織

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母を亡くした3歳の“わたし”。
父は母が生きていたころから“あなた”と付き合っていました。
不倫です。
母が亡くなったあと父は“あなた”と再婚し、“わたし”と一緒に暮らすことになります・・・・。
裏表紙のあらすじを読みますとホラーということですが、私はちょっと違うと思いますね。
一般的にイメージするホラーじゃない。
どちらかというと心理サスペンスという気がしますが、まあラストはたしかにホラーなのかも。
しかし3歳児がこのような考えや行動をとるということにいくらなんでも無理があると思います。
解説ではそのような常識的な思い込みは捨てようとあるのですが。
それはともかくとしまして、父も新しく母となった“あなた”も“わたし”にまったくの無関心です。
なにも見ていない“あなた”に“わたし”はなにをしたのか。
復讐ともいえますし、あなたのお望みどおりにしてあげるという親切心(怖)ともいえます。
他2編収録。
どちらもややシュールで不穏な雰囲気の作品です。
ラベル:小説
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