2018年02月16日

「熊の敷石」堀江敏幸

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数年ぶりにパリを訪れた私。
しばらく音信不通になっていた友人のヤンと会うことにします。
ヤンの住む田舎を訪れ、ユダヤ人の歴史に触れ、私は目の見えない息子を持つ家主の女性と出会います・・・・。
主人公の『私』は作者を思わせ、私小説のような紀行文のような雰囲気をもつ作品です。
私にとってはなんとなく乾いた空気を感じさせる小説でした。
それはやはり小説としては淡々としているからですかね。
友人ヤンとの再会、家主のカトリーヌ、目の見えない2歳半の息子ダヴィッドとの出会い。
なにがあるのかというと特になにがあるわけでもありません。
それらが柔らかく引っ掛かりのない文章でつづられていきます。
もうちょっとぐっとくるものが欲しい気がしましたね。
それが何かと問われると答えられないのですが。
ラベル:小説
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2017年10月27日

「アメリカの食卓」本間千枝子

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タイトルから想像するとアメリカの家庭料理を紹介した軽いエッセイかなと。
読んでみると違いましたね。
もっと広くアメリカの食文化を紹介した内容です。
といっても学術的な記述ではなく、あくまで個人的な経験を書いたエッセイですが。
アメリカというと料理に関してはどうしても低く見がちです。
代表する料理にハンバーガーなんてあったりしますが、これなんかまさにファストフードの最たるものといったイメージがあります。
実際アメリカ人ってこれが好きなんですよね。
ですがアメリカ人が愛するハンバーガーというのは、日本人が持つイメージとはちょっと違うようで。
『芝生の庭の一隅にしつらえられた煉瓦作りの炉には炭火が熾り、何キログラムもあるような挽き肉の塊りは見るまに幾つものハンバーガーに丸められ、片はしから焼けた鉄網の上にのせられる。肉からしたたる脂が火の上に落ちて、肉の燔ける時独特の、あのおいしい匂いを漂わせながら煙があがる・・・・』
この後も描写は続きます。
いろんなトッピングがあり飲み物があり、子供たちは興奮して走り回り、皆大口を開けてハンバーガーにかぶりつく。
ファストフードで購入するハンバーガーとは大違いではないですか。
もちろんすべてのアメリカ人がこのようなことをしているわけではなく、もしかしたら古き良き時代のアメリカの風景なのかもしれません。
『このような状況の下で食べるハンバーガーは、エレガントな料理の一皿をも凌駕するように思うのだが・・・・』と著者は書きます。
まさしくですね。
このシチュエーションはやはり日本で真似ても“別モノ”になってしまいそうです。
ハンバーガーは一例ですが、アメリカにはアメリカのシチュエーションに合った料理があり、そんな中で食べるのがまた美味しいんでしょうね。
ラベル:グルメ本
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2017年10月25日

「草の上の朝食」保坂和志

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「プレーンソング」の続編です。
といいましても、「プレーンソング」自体なにがどうという話があるわけでなく、毎日をだらだらと過ごしているだけの内容なんですよね。
なのでこちらもそのまんまです。
主人公の部屋に居候しているアキラ、島田、よう子ちゃん。
今回は主人公に工藤さんという彼女(?)ができまして、仲間に加わります・・・・。
ほんと生活感がないんですよね。
いや、違う。
生活感はじゅうぶんにある。
それを支える基盤がまったくないんです。
主人公はどうやらサラリーマンのようですが、なんの仕事をしているのかいっさいわからない。
アキラ、島田、よう子ちゃんもいったいなにやってんだか。
毎日ネコに餌をやったり楽器を演奏したり。
経済的に成り立つのかなんて疑問が湧くのですが、そのようなことにはまったく触れられていない。
これはあくまで私の個人的な思い入れといいますか感想なのですが、過ぎ去った青春の日々を思い出すのです。
青春というにはこの作品の登場人物は歳を取っていますけども。
ただ自分の過去を懐かしく振り返っているような、のどかでノスタルジーな雰囲気があるんですよね。
当時は当然生活の苦労があったわけですが(主に経済的なことで)、今となればそんなことよりも仲間との馬鹿馬鹿しくも楽しい毎日が思い出されるわけです。
この作品はそんな苦労を沈殿させて上澄みをすくったような話、という気がするんですね。
苦労のドロドロは書かず、上の澄んだ部分の話を書く。
なのであっさりとしていてコクがない。
コクはありませんが、出汁はじんわりと効いています。
さりげなく味わいを感じさせます。
それがこの作品の、というかこの作家の持ち味なのかなと思うのですが、どうでしょう。
ラベル:小説
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2016年10月10日

「深夜食堂の勝手口」堀井憲一郎 協力◎安部夜郎

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人気グルメマンガ「深夜食堂」の副読本といいましょうか。

本編に出てきた料理をテーマに著者がエッセイを書いておられます。

例えば最初は『赤いウインナー』。

本編でも第一夜がこれでした。

赤ウインナーといえば当然タコさんウインナーですね。(笑)

これを地元ヤクザの幹部が好んで食べるという話でした。

こちらの本ではエッセイの内容は特に本編とは関係なく、それぞれの料理について本編のカットを数点添え、カラー写真付きでレシピを紹介しています。

タコさんウインナーや猫まんまにレシピもなにもないですけどね。

グルメマンガにもいろいろありまして、ウンチク系、バトル系、B級グルメ系、などなど。

この「深夜食堂」はほのぼのB級グルメ人情系とでもいえますかね。

あまりゴチャゴチャと料理についてのウンチクを垂れたり熱く戦うのはもういいかなと。

こういう日常の料理を扱った身近な話がしみじみいいですね。

あ、本編だけでなくこちらの本も面白いですよ。

小林薫や松重豊らのお気に入り料理紹介ページもあります。

ラベル:グルメ本
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2016年08月01日

「風立ちぬ・美しい村・麦藁帽子」堀辰雄

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高原のサナトリウムで療養する恋人の節子に付き添う私。

二人は見つめ合い、語り合います。

ですが節子は日に日に弱っていくのです・・・・。

話の内容としては非常にシンプル。

当時は不治の病であった結核に冒された恋人に男が寄り添い、二人は生と死を見つめて過ごします。

暗い内容ではあります。

しかし舞台の美しい描写のせいか、切なくはありますが陰鬱ではありません。

死を前にしているゆえに生が輝いて感じられるからでしょうか。

「風立ちぬ、いざ生きめやも」という言葉に前向きさを感じるからかもしれません。

絹のような滑らかな感触の小説です。

他に「美しい村」、「麦藁帽子」、「旅の絵」、「鳥料理」、「『美しい村』ノオト」を収録。

ラベル:小説
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