2014年10月29日

「食べるが勝ち!」星野知子

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著者があちこちの国で食べたいろんな料理。

とはいっても美食の国(街)というわけではありません。

例えばシリア。

ここにはラマダンという断食月があります。

断食する案内役を横目に著者はなにを食べたのか。

中国の奥地、標高5千メートルの青蔵高原では高山病でふらふらになりつつ、しかし下山して思ったのは薄いながらも酸素が最高のこちそうだったと。

インドでは衛生上の問題があると仕事のスタッフから屋台禁止令を出され、しかし仕事を終えたあとはソッコーで屋台に飛び込む・・・・。

食に関してはかなり好奇心旺盛な著者です。

そうですよね、食というのはまず好奇心ですから。

今まで食べたことのない料理を食べてみたい。

食いしんぼうに共通する考えです。

外国に行って何を食べたいか。

観光客向けのレストランの料理ではなく、地元の人がごく普通に食べている料理です。

家庭であったり屋台であったり大衆食堂であったり。

著者の趣旨には大賛成です。

でも日本から持っていったインスタント食品の美味しさに改めてありがたさを感じたりもしておられます。

そう、飽食日本ではインスタント食品を小馬鹿にする食通気取りがいますけども、いざまともな食事ができなくなったとき、どれだけ美味しく便利でありがたい存在であるか。

積極的に食べるべきものではありませんけどね。

この本はまえがきが「いただきます」で始まります。

そしてあとがきは「ごちそうさまでした」で終ります。

どちらも料理、素材の命、そして作ってくださった人に対して感謝の意を表す素晴らしい日本語です。

それをしっかりと理解しておられる著者もまた素晴らしい。

ラベル:グルメ本
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2014年05月04日

「プレーンソング」保坂和志

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付き合っていた女の子と一緒に住もうと思って2LDKの部屋を借りたものの、引越しする前に振られてしまい1人で住むことになった「ぼく」。

ある日部屋の掃除をしていたら窓から覗き込んでいた子猫が気になり、それから餌を与えたり話しかけたりするのですが子猫は気まぐれです。

コミュニケーションが取れているんだかいないんだか。

そんなある日友人のアキラが彼女を連れてやって来て、ぼくの部屋に居付くことになります。

2人の面倒を見られるくらいの給料はもらっているからまあいいかと。

そんなのらりくらりしたぼくの冬から夏にかけての物語です。

なんとも説明の仕様がない小説ですね。

内容がない。

ふわふわと毎日を過ごすぼくや友人たち。

このふわふわさとか曖昧さか優柔不断さは徹底されています。

主人公の名前はいっさい出てきません。

会社に勤めていますがなんの仕事か明らかでない。

毎朝決まった時間にきっちり出勤しているわけでもなさそうです。

ぼくの周りに集まってくる友人たちもブラブラしているだけの人たちです。

焦燥感などまったくなく、猫に餌をやったり競馬をしたり、のどかな毎日。

ただそれだけを書いた小説なんですね。

山あり谷ありのエンターテイメント小説もあれば、このようなただ日常を描いただけの小説もまたありなんだなと思いました。

雰囲気的には村上春樹をもっと薄くした感じですかね。

ラベル:小説
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2014年03月05日

「ようこそ地球さん」星新一

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ショートショート42編収録。

はじめて商業誌に掲載された「セキストラ」や、それよりもまだ昔に書かれた「小さな十字架」なども収められています。

さすがにすべて佳作というわけにはいかず、感心する作品は数本でしょうか。

かといってそれ以外が駄作というわけではありません。

私がこれはと思ったのが「処刑」という作品。

枚数もやや長く、ショートショートというよりは本格的な短編SF小説といった読み応えがあります。

星作品にはユーモラスな雰囲気のものとシリアスなものがありますが、これは後者です。

星新一はもう何十年も前に読んだきりなので内容もほとんど覚えておらず、どれも初めてのような感覚で読めました。

ラベル:小説
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2014年01月14日

「雪沼とその周辺」堀江敏幸

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雪沼という寒い地方にある小さな町。

そんな町で暮らす人たちの様々な人生を切り取った短編集です。

それぞれの話に繋がりはありませんが、舞台が小さな町ですので他の作品で取り上げた話題がさりげなく出てきたりはします。

主人公は手に職を持つ人たち。

「スタンス・ドット」では一人でボーリング場を経営し、メンテナンスも自らやっている年老いた男性の話。

「河岸段丘」は紙の裁断をする主人公とその機械をメンテナンスする友人の話。

「レンガを積む」は昔ながらのステレオを置くレコード店主の話。

仕事を書くのが上手い作家さんだなぁと感心しました。

どの登場人物も“さん付け”で書かれています。

そのせいでどの作品も柔らかくほんわかして雰囲気があるんですね。

エンターテイメント小説ではないので山あり谷ありの内容ではありませんし、ラストも誰もが納得するオチはありません。

地味ですが実に味わい深い。

人物がいい。

他の作品もぜひ読んでみたい作家さんです。

ラベル:小説
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2014年01月08日

「部屋いっぱいのワイン」細川布久子

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著者がパリで行われたワインのコンクールで優勝するシーンから始まります。

といってもソムリエの代表選考会とか世界大会といった大きなものではありませんが。

フィトウというややマイナーなワインの試飲会です。

しかし参加者は著名なワインジャーナリストたち。

そんな中での優勝ですから立派なものです。

賞品として1年間フィトウにあるブドウ畑の所有者となり、1年後その畑で収穫されたブドウで作ったワインを150本贈呈され、しかもエチケット(ワインラベル)には畑の所有者として名前が明記されるとのこと。

ワイン好きにはたまらない名誉ですよね。

そんな導入部から始まって、著者のワインを中心としたパリでの生活の奮闘ぶりやいろんな人たちとの出会いが書かれています。

著者がワインと出会ったのは作家の開高健氏がきっかけだったそうです。

ちなみに単行本で出版されたときのタイトルは「エチケット1994」。

著者の名前が明記されたエチケットからのタイトルですが、もちろん開高健氏の短編集「ロマネ・コンティ・一九三五年」へのオマージュでありましょう。

本書の最後の文章も開高氏への思いで締めくくられています。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 04:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ほ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする