2018年04月23日

「火花」又吉直樹

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徳永はお笑い芸人です。
売れてません。
先輩芸人の神谷と出会い、弟子入りします。
神谷も売れているわけではないのですが。
芸人として、人間として、2人はどのように生きていくのか・・・・。
お笑い芸人の作者が芥川賞を受賞したということで大きな話題になった作品です。
なるほど芸人の立場から書かれたということで、これは専業作家には書けない内容かもしれませんね。
ですが小説としてどうなんでしょう。
なんで徳永が神谷に弟子入りしたのかいまいちよくわかりません。
その徳永に生活感がまるでありませんし、お笑いをとことん追求しているという思い詰めた熱心さも感じられない。
理屈ばっかりこねてなにやってんだかなぁという印象。
かなり作者の観念的な思いが書き綴られ、私的にはついていけませんでした。
「言おうとしていることはわからなくもないが、もうちょっとリラックスしたら? あんまり思い詰めたら知恵熱出るよ」というのが率直な印象ですね。
単行本が250万部ほど売れたようですが、はて、これを読んだどれくらいの人が納得満足したでしょうか。
芥川賞作品がこれほど売れるのはちょっと異常ですし、普段小説を読まない人が殺到したのは明らか。
そんな人たちがどう読んだのか。
私はこの作者の作家としての評価は、今後芸人の世界とはまったく離れた世界の話をどれほど書けるかだと思います。
これはこれとして、今後どんな作品を書かれるのでしょう。
問題はそこですね。
ラベル:小説
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2018年04月05日

「三世相 並木拍子郎種取帳」松井今朝子

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シリーズ第3弾です。
5編収録で表題作は「三世相」。
貧乏な町民にも親切だった医者、良庵が殺されます。
その前に拍子郎は人気の占い師、徳満卜泉のもとで良庵の女房を見かけています。
さて、良庵夫婦ににいったいどのような事情があったのか。
拍子郎がいつものように首を突っ込むことになるのですが・・・・。
今も昔も女性というのは占いが好きなんですね。
本作でもおあさが占いを気にしたりして。
で、なぜかわかりませんが人気の占い師というのはもてはやされたりするんですよね。
今もそうですが、昔はもっと高い扱いを受けていたと思えます。
しかしそんな地位を利用してよからぬことを企む輩もまたいるようで。
ですが人気の占い師だからといって、はたして人間としてどうなんでしょうか。
それはまた別の話ですよね。
私は表題作よりも最初の「短い春」なんかよかったように思います。
タイトルがまさにそのまんまという感じで、読み終わってじわっときます。
人殺しなんて出てきません。
なんでもかんでも殺人事件で話を作るのはもううんざり。
それを求める読者も悪いと思うんですけどね。
なんたら殺人事件なんて人を殺す話でないと満足しない。
そんな話の何がいいんだか。
ま、表題作はまさにそれなんですけども。
最後の「旅芝居」なんてのも勘当された若旦那の人物を味わい深く描いています。
やはり私は殺人事件よりもこういう話のほうが好きです。
ラベル:時代小説
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2018年03月22日

「日本の居酒屋文化 赤提灯の魅力を探る」マイク・モラスキー

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赤提灯の居酒屋を考察した本です。
居酒屋について書かれた本は多数あると思いますが、著者がアメリカ人というのが目を引きます。
著者にとってはそういう紹介のされ方は不本意かもしれませんけども。
しかし赤提灯という日本の文化に対して非常によく馴染んでおられ、また実によく分析しておられます。
居酒屋を愛する気持ちがしっかりと伝わってくるのですが、しかし整然とした文章のせいでしょうか過剰なベタつきのある雰囲気にはなっておらず、清々しく読むことができます。
へんに思い入れを前面に出し過ぎている人もいますからね。
このあたりアメリカ人であるということが関係あるのかないのか。
紹介しておられる店も北海道から沖縄まで幅広い。
居酒屋を語った本としては実に秀逸だと思います。
ちびりちびりと飲りながら楽しみたい一冊です。
ラベル:グルメ本
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2017年11月04日

「夜を乗り越える」又吉直樹

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お笑い芸人で芥川賞受賞ということで大きな話題になった又吉直樹氏。
以前に「第2図書係補佐」という著作を読んで、これほどの読書家ならご自身で小説も書けるのではとこのブログで感想を書いたことがあります。
その時点ですでに小説を書いておられたのかどうかは知りませんが、すぐそのあと「火花」を発表され、芥川賞候補になったと話題になり、受賞され、大騒ぎに。
さすがに芥川賞とまでは思いませんでしたが、やはり文才はおありだったようで。
さて、本書はそんな著者がご自身の経歴を語りつつ、本について、文学について書かれた一冊です。
太宰を始めとして近代文学で小説の面白さにのめり込まれたようですね。
けっこう正統派の文学少年かと。(笑)
作家や作品への思いなどいろいろとエピソードも交えながら書いておられるのですが、どうも例え話が多くてまとまりがないといいますか。
もうちょっとストレートに書いてほしかったですね。
また著者とは考えが違うところも多々あり、納得の読後感とはなりませんでした。
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2017年08月26日

「花腐し」松浦寿輝

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栩谷はデザイン事務所を経営していましたが倒産寸前です。
あちこちのノンバンクで借金していましたが、その中の社長の小坂という男からある依頼を受けます。
自分の持っている古いアパートを取り壊したいのだが、一人だけ居座っている住人がいる、そいつをなんとかしてもらえないか。
なんとかしてくれたら借金のことは多少考えてやろうじゃないか。
もうどうにもならないと開き直っている栩谷は、時間潰し程度にその話を引き受けます。
訪ねて行った先には伊関という男がおり、パソコンの機材が山のように積み上げられた部屋ではマジック・マッシュルームを栽培しています。
そんななんともつかみどころのない伊関を相手に栩谷は・・・・。
「花腐し」というのは万葉集の和歌にある言葉で、卯月ごろに卯の花を腐らせるように降り続く長雨のことをいうのだとか。
なるほど、そのような言葉から感じさせる雰囲気がこの作品全体に漂っていますね。
借金を背負って自己破産しかない栩谷。
今にも崩れそうなアパートに住み続ける伊関。
どちらも人生に対して投げやりでどこか達観したようでもありますが、この気怠さは実に湿気があって陰気です。
昔の女を思い出すあたり、よけいにじっとりと気が滅入る気がしますね。
ですが明るく人並みの生活だけが人生じゃない。
いろいろな過去を抱えつつ、陰で生きていくのもこれまた人生でありましょう。
ラベル:小説
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