2019年09月18日

「雨の塔」宮木あや子

CIMG3520.JPG

この世の果てのような岬にある女子だけの全寮制の学校。
好きなものはなんでも手に入りますが、外からの情報はいっさい入ってきません。
そんな閉鎖された世界で暮らす、それぞれ複雑な事情を持った4人の少女たち。
友情や恋愛的な感情を交差させ、複雑な関係で日々を過ごしていくのですが・・・・。
シチュエーションがいいですね。
完全に外の世界とは隔離された設定で、登場人物も4人の他ほとんど出てきません。
なんとも静寂な世界です。
そんな中で女性同士の友情、恋愛、嫉妬といった感情が描かれ、耽美的な雰囲気があります。
キラキラした笑いのある日々とは無縁。
つねにどんよりと曇ったような毎日です。
痛さや切なさがひりひりと伝わってきます。
これはもう舞台設定の勝利でしょうか。
しっとりとした映像で観てみたい気がしました。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『み』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月17日

「牛への道」宮沢章夫

CIMG3504.JPG

エッセイ集です。
ほんの些細なところに目をつけて掘り下げる。
笑いを狙ったエッセイの、これはひとつのパターンですね。
ただどういうところに目をつけるか、それをどのように掘り下げるかが文才と言いますかセンスなわけで。
言語感覚といいますか。
そういうことで言えばこの著者は非常に優れたセンスをお持ちです。
爆笑というほどの炸裂感はないのですが、そこそこ笑えます。
ただご本人が意識しているのかしておられないのかわかりませんが、ひとつのツボといいますかパターンを使いまわししている感があり、ややあざといかなという気がします。
まあそれが著者のセンスであり文体だと言ってしまえばそうなんでしょうけど。
誰しも自分なりの型がありますからね。
後半の章は書評です。
といってもやはりただの書評ではなく、その本をきっかけに展開する笑える話が読ませどころです。
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『み』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月20日

「スイートトラップ」水城夕

CIMG3475.JPG

会社の休憩室で付き合って1年になる彼から別れを告げられた真梨乃。
その様子を見て冷笑したのは新入社員の相馬陸です。
その夜同僚の早希子とヤケ酒を飲み帰宅した真梨乃はまだ飲み足りず、自宅でも飲み続けて酔っぱらって部屋を出ると隣の部屋の健二とばったり。
健二は真梨乃の中学時代の後輩です。
健二の部屋になだれ込んだ真梨乃は一夜を過ごしてセックスしてしまうのですが、翌朝起きてみるとそれは健二ではなくなぜか相馬陸で・・・・。
もうなんといいますか、ムチャクチャな小説です。(笑)
弟と暮らしている部屋の隣には中学時代の後輩、反対側の隣には同じ会社の相馬陸。
今まで隣に陸が住んでいたことに気づかなかったというのは100歩譲っても、いくら酔っぱらっていたとはいえ健二と間違えてセックスするか。
健二だとわかっていても普通しないでしょ。
そのあとは陸に誘われるままに会社でもしてるし。
ただのヤリマン女です。
設定もなぁ。
皆のいる会社の休憩室で別れを告げる彼氏というのもどうかと思いますし、同じ会社でありながらその彼氏は二度と出てきません。
まあいいですけど。
住んでいるマンションの部屋の両隣に中学の後輩と同じ会社の新入社員というシチュエーションもなんともいやはやですし、真梨乃が勤める大手商社に徒歩で通えるというくらいですからかなり都会にあるマンションですね。
相当いい暮らしです。
健二は真梨乃の中学時代の後輩のはずなのですが、なぜか真梨乃の高校時代、同級生の中に健二に思いを寄せる女の子がいたとか。
わけわからん。
文章もなぁ。
「嘆息」という言葉が何十回出てくることか。
なにかあれば主人公は嘆息します。(笑)
ストーリーに至ってはラストの展開に椅子からずり落ちそうになりました。
恋愛小説がいきなりミステリーに変貌し、しかもとんでもない衝撃の真実。
なんですかこのバカミスっぷりは。
唖然としました。
書くほうも書くほうですが、これを通した編集者も相当なものです。
以前に読んだ作品もたいがいでしたが、これはさらに磨きがかかっています。(笑)
恐れ入りました。
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『み』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月12日

「羊と鋼の森」宮下奈都

CIMG3423.JPG

高校時代にたまたまピアノ調律師の板鳥さんと出会った外村。
その仕事に魅せられた外村は調律師を目指し、専門学校に通い、板鳥さんのいる楽器店に就職します。
調律師としてのスタートです。
憧れの板鳥さんとはなかなか顔を合わせる機会もありませんが、それぞれ個性を持つ先輩たちの下で外村は調律師としての修業を始めます・・・・。
まずタイトルなんですが、「羊と鋼の森」なんてどんな内容なんだと思いますよね。
それがピアノの調律師のお話なんです。
読んでいきますとタイトルに込められた意味と思いがわかります。
主人公の外村がピアノの調律という仕事に惹かれ、3人の異なる個性を持つ先輩たちの言動や仕事を目の当たりにし、調律師として成長していく過程を描いています。
そしてふたごの姉妹。
この姉妹の存在が一段と外村の情熱を強くします。
姉妹と変に恋愛話にならないところがまた清々しくていい。
2016年の本屋大賞を受賞したということで、たしかにいかにも本屋大賞好みな内容ではあります。
じんわりと心に染み入るいい小説でした。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 03:43| Comment(0) | 『み』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月02日

「ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~」三上延

CIMG3418.JPG

栞子から太宰治の「晩年」を奪うために階段から突き落とした田中敏雄。
おかげで栞子はいまだに杖をついて歩かなければなりません。
そんな田中から脅迫めいた手紙がビブリア古書堂に投げ込まれます。
五浦は田中に会いますが、手紙はどうやら田中ではなさそうです。
では誰が騙っているのか。
逆に田中は違う「晩年」を探してくれと依頼します・・・・。
シリーズ第6弾。
どんどんマニアックになってきましたね。
もともと古書を扱った作品ですからなんら路線は間違っていないのですが、ちょっと一般読者にとっては入り込み過ぎかなという気がしました。
逆に言えば古書マニアにはたまらないのかもしれませんが。
なにしろ太宰ですからね。
そしてアンカットがどうとかこうとか。
このあたり難しい所です。
いよいよ次巻で最終ですが。
まあ潮時でしょう。
さて、どのようにまとめるのか。
また時間をおいて読ませていただきます。
ラベル:小説 本・書店
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『み』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする