2015年10月29日

「職人で選ぶ 45歳からのレストラン」宮下裕史

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『本書は流行を追うのではなく、本質を求める「大人」の見識を持った方々に応えるレストランガイドブックでありたいと願っている。』

著者ははじめにこう書いておられます。

飲食店のガイドブックというとやはり流行の店ということになりがちです。

例えば某女性情報誌などは半年に一度各ジャンルの飲食店にグランプリを与えたりしています。

ですが2~3年前にグランプリだった店が今はまったく取り上げられません。

読者に飽きられるのでいつまでも同じ店を紹介し続けるわけにはいかないからです。

その店は相変わらず同じレベルを維持し続けているとしても。

「え? ○○○? あんな店もう古いよ。今は×××でしょ」なんて。

しかし本当にいい店というのはそういうものじゃないですよね。

話題になるとかならないとかではなく、自分にとって合う店を見つけたらひたすら通う。

10年でも20年でも。

店が10年20年続くかどうかはともかく。

そして料理は人だと著者は言います。

職人ですね。

料理や店にはその職人の個性が表れます。

その職人仕事に惚れ込み、黙って通い続ける。

それこそがミーハーな若い連中とは違う大人の店との付き合い方でしょう。

ここに紹介されているのは49店。

老舗が多数でさすがにどこもしっかりとした客層の店だろうなと思わせます。

店を選ぶのは客ですが、しかし店もまた客を選びます。

これらの店に出かけても浮かない大人に私はなりたい。

すでに手遅れですが。(笑)

ラベル:グルメ本
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2015年10月09日

「仮面の告白」三島由紀夫

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子供の頃から女性に興味を持つことができなかった『私』。

初めて“ひりつくような欲望”を感じたのは男性に対してでした。

しかも肥桶をかついで汚れた手ぬぐいで鉢巻をした汚穢屋(糞尿汲取人)です。

その後も軍隊の兵士たちの汗の匂いに惹かれたり、豊穣な腋毛の同級生に恋をしたり。

そしてサディスティックな死に対する憧れも持つようになります。

同性愛者であることを隠しつつカモフラージュ的にある女性と付き合うのですが、相手も周りも結婚を前提と認めるようになり、『私』は追い詰められ逃げ出します。

それでも虚勢を張り続ける『私』・・・・。

作者の自伝的な小説です。

同性愛という自身の性癖を肯定しつつも外部には隠し、世間体もあり女性と交際もするがやはり失敗に終わってしまう。

そんな苦悩を端正な文章で描いています。

その後の三島の言動を見ますと、結果論ですがこの作品にすでに将来を予見させるものが全部含まれていますね。

ボディビルやボクシングでの肉体鍛錬、自衛隊への体験入隊、映画での切腹シーン撮影。

すべてこの作品にその要素があります。

そして最期は軍服(楯の会の制服)を着ての自決。

しかし昔の作家はみんな“真剣”だったんだなぁと思います。

もちろん時代もありますが、三島みたいなことをやる作家なんて今後出てこないでしょ。

やればいいってもんじゃないですけどね。(笑)

ラベル:小説
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2015年09月11日

「ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~」三上延

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それぞれの地域にある古書組合が加盟店のあいだで商品取引する市場、古書交換会。

それに出品することにした栞子は大輔を連れて出かけます。

ですがそこで盗難事件があります。

後日聞いた話によると本の束の中からコバルト文庫の「たんぽぽ娘」という本が抜き取られていたというのです。

落札したヒトリ書房という古書店の井上という店主は、大輔と栞子がその本の束の近くに居たことを理由に犯人は栞子だと決め付けます。

束を見て落札したときはあった、しかし手元に届いてみるとなくなっていると。

大輔はヒヤリとします。

なぜかというとその話を聞く前に栞子が「たんぽぽ娘」を店に出したからです。

タイミング的にあまりにも。

この本は栞子が市場から抜き取ったものではないのか。

大輔は疑います。

井上はビブリア古書堂を訪れ、「たんぽぽ娘」を見てやはりお前かと栞子を責めます・・・・。

今回は栞子と家を出て行った母親についてのことに触れられています。

井上はどうも栞子の母親が気にくわなかったらしい。

なので栞子にもきつく当たるんですね。

そして大輔にあの女には気をつけろとアドバイスします。

栞子は母の行方を知らないと言っていますが、実は連絡を取り合っているというのです。

おまえは騙されていると。

疑心暗鬼になる大輔。

しかし・・・・。

栞子の死んだ父への思い、出て行った母への思いがじわじわと描かれています。

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2015年06月13日

「暴力団」溝口敦

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暴力団。

一般人にとっては怖い存在です。

その実態はいったいどうなのか。

第一章の『暴力団とはなにか?』から始まり、『どのように稼いでいるか?』、『警察とのつながりとは?』、『代替勢力「半グレ集団」とは?』など、丁寧に解説されています。

犯罪に関わったり一般人を怯えさせる存在なんだから強引にでも無くせばええやんと思いますが、そう簡単なものでもありません。

ですが暴力団は現在曲がり角にいると著者はいいます。

お先真っ暗で経済的にも生活していけないと。

社会的な制約もあります。

そんな魅力のない不便な世界に若者もわざわざ“就職”したがりません。

これは著者に限らず現在よくいわれていることですよね。

そのあたりの事情がまた“半グレ集団”といった存在につながっているのですが。

著者は暴力団関係のジャーナリストとしては第一人者ではないでしょうか。

島田紳助と暴力団との関係も問題になる何年も前に追求しておられますし、細木数子についても一冊の本に記しておられます。

自身や長男も暴力団に襲撃された経験がありながら、しかしこのようなテーマを追い続けておられるのには敬服いたします。

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2015年06月09日

「お父ちゃんのゲゲゲな毎日」水木悦子

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『ゲゲゲの鬼太郎』など妖怪漫画の第一人者、水木しげる

著者は水木氏の次女で、水木プロダクションの社員として氏を支えておられます。

娘としてスタッフとしてつねに傍にいる立場から見た水木しげるの素顔とは。

これがとんでもなく面白いんですね。

奇行といいますか天然といいますか。

紹介されているエピソードはどれも無邪気で微笑ましい。

やはり天才というのはどこか凡人とは言動が違うようです。

奇行といえば赤塚不二夫氏なんかもそうでしたけど、赤塚氏の場合は計算があります。

他人を笑わせてやろうとかびっくりさせてやろうとか、ネタを作っての言動でした。

水木氏は違う。

完全に天然です。(笑)

本人は大真面目なんですけど傍から見ると実に滑稽なんですね。

そんな“お父ちゃん”の魅力をを愛情あふれる視点と文章で綴った好エッセイです。

ラベル:漫画本
posted by たろちゃん at 03:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 『み』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする