2015年05月16日

「半島を出よ(上・下)」村上龍

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時代は2011年。

経済破綻した日本は失業者が溢れています。

そんな中、武装した北朝鮮のコマンド9人が九州に上陸。

彼らは北朝鮮の反乱軍を名乗り、試合中の福岡ドームを占拠します。

そして2時間後には500人の特殊部隊が複葉機で次々と到着。

福岡市の中心部を制圧します。

その後12万人の本隊も到着するというのです。

なすすべのない日本政府は福岡を封鎖。

事実上反乱軍の占領下となります・・・・。

退廃した日本を舞台にした近未来的な設定です。

もし北朝鮮が日本に攻め込んできたら。

それに対しての日本政府の愚かな対応、頼みの綱のアメリカの反応。

まさかとは思いますが、でもありえそうにも思われるのは作者の筆力でしょうか。

ドームが占拠されたときの観客たちの反応など、思いっきり日本の平和ボケを皮肉っていますしね。

反乱軍に対して立ち上がるのはアウトローな若者たちの集団です。

頼りにならない日本政府を尻目に、彼らは福岡そして日本を救うことができるのか・・・・。

私はむしろ北朝鮮軍に感情移入して読んだのですが、読み方としてはどうでしょうか。

毅然とした行動を取れずあたふたしている日本人よりも、ストイックで規律ある行動をする純朴な彼らに共感を覚えました。

しかし力作ですね。

上下巻あわせて1000ページを超え、改行が少なくみっちりと文字が埋まっています。

ですがほとんど苦にならず読めました。

若者たちのシーンがちょっとだるかったかな。

ただ登場人物がやたらに多く、さすがにそれぞれの人物は描ききれていませんでした。

まあ作者が登場人物すべてに責任を持つ必要もないでしょうけど。

読む価値ありの一冊だと思います。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 03:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 『む』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月10日

「都立水商!」室積光

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新宿歌舞伎町に設立された「東京都立水商業高等学校」。

通称「都立水商」。

なんと水商売を専門に教育する高校です。

ホステス科、マネージャー科、バーテン科、ソープ科、ヘルス科、ホスト科、ゲイバー科。

集まってきた新入生は中学時代に問題を抱えていた生徒ばかりです。

先生たちの奮闘、そして生徒たちはどのように成長していくのか・・・・。

いやはやなんとも馬鹿馬鹿しい設定の小説を書いたものです。

ところがこれがバツグンに面白いんですね。

決して思い付きの企画倒れに終わっていません。

というよりも設定を超えた感動すらあります。

水商売の学校物だからといってフーゾク的な話ばかりが詰め込まれているわけではありません。

いちばんの読ませ所はやはり野球部の快進撃でしょう。

これはもう爽快な青春小説です。

そして作者の高校野球に対するチクリとした風刺も読み取ることができますね。

江夏や長嶋といった実在の人物が出てくるのもぶっとんだ設定の中にリアリティを添え、話を締める効果があるように思えます。

この作品は作者のデビュー作とのこと。

すごいですね。

笑いあり感動ありの素晴らしいエンターテイメント小説でした。

ラベル:小説
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2013年01月16日

「鍋の中」村田喜代子

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いとこ4人が田舎の祖母の家で夏休みを過ごします。

主人公は17歳のたみちゃん、弟の信次郎、同い年のみな子、その兄の縦男。

やや記憶がぼけている祖母の話は、いかにも昔の田舎にありそうな忌憚的な話だったりします。

そんな中に主人公は親との血のつながりの真実を垣間見たり。

祖母が持ち出してきた古く大きな鉄鍋。

そこには80年の人生を歩んできた祖母のいろんなことが詰まっているのでしょう。

私は表題作よりも他の3編のほうがよかったです。

幼い女の子を亡くし、同じような境遇の遺族の会に参加して活動する母親の話、「水中の声」。

友人とツーリングに出かけ、前を走っていたはずの友人が待ち合わせの場所にいない「熱愛」。

懲罰をきっかけにひたすら学校中の便器を磨きあげる高校生の話、「盟友」。

どれもわかりやすい話ではありません。

なんだか淡々と冷んやりした印象は共通しているように思えました。

ラベル:小説
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2012年11月13日

「授乳」村田沙耶香

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主人公である女子中学生のもとにやってきた大学院の家庭教師。

表情のない無口な青年です。

自分の意思がないようなそんな家庭教師を主人公は「ゲームしようよ」と支配下に置き、性的な時間を共有します。

主人公は家庭教師に自分の乳房を口に含ませ・・・・。

閉ざされた空間で無抵抗な相手を思い通りにする。

ちょっと危ないですね。(笑)

エロい設定ではありますが、なんだか無機質なものを感じさせます。

乳房を与えるということで母性というものを感じたりもしますが。

なんにせよ二人のあいだには愛情というものはありません。

まったくのゲームであり、家庭教師の心理が一切描かれていないのもまたトーンを無機質なものにしています。

そして主人公にはどこか女性であることを汚らわしく思っているようなところがありますね。

少女から大人になり始める時期の微妙な戸惑い、といったところなんでしょうか。

いちど読んだだけではちょっと理解するのは難しい作品ですね。

ラベル:小説
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2012年06月28日

「日本人が食べたいほんもの」向笠千恵子

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グルメブームなんて言葉がありますけども。

今はブームというよりも完全に定着していますよね。

まさに雨後の筍のごとく自称グルメがうじゃうじゃ発生しています。

特にブログという表現媒体が現れてから。

しかしその大部分がミーハーな輩ではないでしょうか。

マスコミが紹介する店を追いかけ、あの店いきました、こんなの食べました。

真剣に食を考えている人なんて少数でしょう。

なのでこのような本が貴重なわけです。

ここでは志ある生産者の方々が作る本物の食を紹介しておられます。(といっても私自身確認したわけではありませんが)

流行の店に行ってどーたらこーたらではないんです。

これなんですよね。

例えばいちばん最初の章に紹介されているのが梅干し。

グルメを自認する人たちのどれほどが梅干しについて語っておられるでしょうか。

フランス料理店のソースがどうワインがどう、どこそこの寿司屋の魚がどう、もちろんそれも大きな関心です。

でも日本人として普段食べる基本的な素材についてどうなのよという話です。

梅干し以外にも醤油であったり味噌であったり。

魚の干物であったり。

家庭でそのようなことに気を使わず外食であーだこーだ言っている場合ではないでしょう。

というようなことを考えさせられる本なのですね。

今さらですが根本から食について考えなければと思わされました。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 04:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 『む』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする