2017年04月12日

「山椒大夫・高瀬舟」森鴎外

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表題作2編を含め、12編を収めた短編集です。
人買いに騙され引き離された母親と姉弟の苦難を描いた「山椒大夫」。
弟を殺して島流しにされる男が真実と心情を語る「高瀬舟」。
「山椒大夫」は「さんせう太夫」という説教節を原話にしているそうで、これは「安寿と厨子王」といえばむしろ誰もが聞いたことあるのではないかと思います。
姉弟の固い絆や母親への愛、自己犠牲の精神などが描かれています。
親が子供を平気で死に至らしめる、あるいはその逆に子が親をという事件が日常茶飯事のように思える昨今。
このような家族の深い愛情と結びつきは新鮮に思えるほど美しく感じてしまいます。
私的にはなんで題名が「山椒大夫」なのと思ってしまうのですが。
「高瀬舟」も、これはつらい話ですね。
目の前で苦しんでいる弟を楽にさせてあげた兄が罪人になるという話です。
いわば安楽死です。
本人が望むことに手を貸してあげて、それがはたして悪いことなのか。
死を目前にして苦しんでいる人を生き伸ばさせることがはたして良いことなのか。
もし私がそのような状況で死を間近にした当人なら・・・・。
はっきり「殺してくれ」と言います。
ただ言われた側は相当に逡巡するでしょうけど。
なので自分が言われた立場ならどうなのかと考えますと、これはもう非常に難しい。
もし手を合わせ号泣しながらもその人の意思を尊重したとして、単純にそれは殺人とされてしまうんでしょうね。
私なら・・・・本当に親愛な人なら、たとえ罪に問われても本人の意思を尊重してあげたいと考えます。
でも、実際にそのような状況になるとそんな勇気は出ないだろうと思いますけど。
虚ろな気分でそんなことを考えさせられる作品でした。
ラベル:小説
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2016年12月23日

「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦

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『私』が密かに想いを寄せる黒髪の『彼女』。
ひたすら彼女を追いかける私ですが、彼女はそんな気持ちには気付かないまま。
夜の先斗町、下鴨納涼古本まつり、大学の学園祭、と私は彼女を追い続け、珍事件に巻き込まれ、あげくの果ては風邪を引いて万年床にダウン。
さて2人の行く末は・・・・。
シュールですが明るく楽しい恋愛ファンタジーです。
出てくるキャラが皆どれも個性的で。
宙に浮かぶ樋口さんや、狭い先斗町に現れる李白さんの3階建ての電車って・・・・。
小難しい語りの割には馬鹿馬鹿しく不器用な主人公やキュートな黒髪の彼女など、いかにもな森見キャラですね。
その他の登場人物も憎めません。
話も各章により趣向を凝らしてあり、まるでおもちゃ箱のよう。
読者を楽しませるエンターテイメント満載です。
古書のウンチク、火鍋の我慢比べ、象のお尻、パンツ総番長、韋駄天コタツ、偏屈王、緋鯉のぬいぐるみ・・・・。
面白く読ませていただきました。
ラベル:小説
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2016年10月28日

「なぜ人妻はそそるのか? 「よろめき」の現代史」本橋信宏

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現在エロ業界ではやたら『人妻・熟女』がもてはやされています。

昔は男性がそそられる対象といえば基本的に若い女性でした。

例えば昔のエロ本やポルノ映画なんてどう見ても30代40代のババアがセーラー服着てましたもんね。(笑)

独身OLや秘書なんて設定で制服着てても売れ残りのお局さんといったところ。

とにかく若作りをしていたわけです。

ですが今ならそんな小細工はせず、堂々と『人妻・熟女』として売り出すことができます。

むしろ女優が実際の年齢よりもいくつかサバを読んで上の年齢に偽っているほど。

なぜ『人妻』という存在が現在のように男をそそる存在になったのか。

この本では戦後の風俗を背景にその時代の映画や小説などを取り上げ、理由と変遷を検証しています。

例えば文学では三島由紀夫の「美徳のよろめき」。

この作品では人妻が夫以外の男に惹かれることを「よろめく」と表現され、読者から支持されたり。

80年代には「金曜日の妻たちへ」というドラマがありまして、これが「キンツマ」なんて呼ばれて不倫がメジャー化しました。

テレクラブームなんてのもありましたね。

人妻(に限らずですが)がどんどん性のテリトリーに進出してきました。

それは女性が性に対して昔からは考えられないほどオープンになったこと、それなりの年齢でもじゅうぶん性的な魅力があることなどが原因でしょう。

若い女性よりも落ち着きと色気がありますし。

なにより人妻の貞操観念のハードルが相当低くなりました。

そりゃそそられます。

男としてはこんなのをほっとく手はありません。

いい時代になったものです。

ありがたく楽しませていただこうではないですか。(笑)

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2016年01月06日

「かっこ悪くていいじゃない」森奈津子

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28歳の金子美里はバイセクシュアル。

プロ作家を目指すためのカルチャーセンターに通っています。

講師はミステリ作家の神野英一郎。

美里とは不倫の関係です。

体の相性が抜群で、彼に代わる男はもう見つけられないだろうと思うほど。

しかしある日、いきつけのゲイ・バーでナナという年上の女性と知り合います。

昔の恋人によく似ている彼女を美里は気に入り、やがてセックスすることになるのですが・・・・。

バイセクシュアルの作者らしく男と女どちらに対してもの恋愛を描いています。

もちろん精神的なことだけではなく肉体的なことも含めて。

美里を中心に神野とナナの三角関係なわけですが、ナナが何者かというのがミソなわけで。

そして修羅場が読ませどころですか。

ゲイ・バーのマスター、カズがとぼけた味わいで重さを緩和しています。

でも小説に出てくるゲイのマスターってこういう役割が多いですね。(笑)

男でも女でもなく客観的に主人公の相談役になってあげてるみたいな。

それはともかくとしまして、この作品は中編ということでほどよいボリームと内容だったと思います。

ラベル:小説
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2015年03月16日

「森枝卓士のカレー・ノート」森枝卓士

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著者はカレー大王と呼ばれているそうです。

そんな著者がインドはもちろん、東南アジアにも足を伸ばし、各国のカレーを取材し、紹介しておられます。

まずカラー写真がふんだんに掲載されているのがいいですね。

やはり料理の紹介には文章は当然として、写真の掲載は実にありがたい。

そしてレシピの紹介。

スパイス・調味料辞典というページも割いておられ、カレーマニアには参考になる本ではないかと。

ラベル:グルメ本
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