2013年02月03日

「あんただけ死なない」森奈津子

Cimg2102

憎む相手の死を願うとなぜか本当に死んでしまうという能力を持つ緋紗子。

ちなみに彼女はバイセクシャルです。

中学3年のとき、自分を犯した一つ上の先輩。

彼は交通事故で亡くなりました。

大学時代に振られた相手は急性アル中で。

同じく大学時代、弄ばれた人妻は脳溢血で。

二十五歳のとき付き合っていた年上の商社マンは酔って凍死。

そしていちばん最近につきあっていた誠一もやはり公園で首を吊りました。

しかし一人だけ死なない人物がいます。

現在の恋人である小雪です。

彼女は緋紗子に継男という男と結婚するといいます。

当然緋紗子はその継男を激しく憎み、やはりビルの窓から落ちて死んでしまいます。

そんな事件があって、ある日フリーライターを名乗る鉄郎という人物が緋紗子の前に現れるのですが、彼は緋紗子の能力を知り自分も同類だというのです・・・・。

なぜ緋紗子にそのような能力があるのか、そして鉄郎の言う同類というのはどういう意味なのか。

このあたりが読ませどころですね。

なるほど、その能力の源をそちらのほうに持っていきましたか。

ネタバレになるのでそれは書きませんけども、SFではなくいかにもホラーっぽいですね。

そして森奈津子ですから適度にエロやレズもあって。

タイトルにもなっている「あんただけ死なない」も最後になるほどと辻褄を合せています。

でも小雪のキャラ設定がちょっと中途半端な気がしますけども。

小粒ではありますがそこそこ楽しめました。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 『も』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月28日

「介護入門」モブ・ノリオ

Cimg2035_2

主人公はマリファナだの大麻だのどうこういっている無職の男。

いかにもちゃらちゃらしてそうな人物なのですが、祖母を母といっしょに自宅介護しているのですね。

そんな毎日を宗教的、哲学的、社会批判的、「YO、朋輩(ニガー)」なんてヒップホップ的なノリで語ります。

髪の毛まっキンキンの若者が電車の中で大股拡げてギャハギャハしていながら、老人が乗車してくるとさっと席を立ち「どうぞ」と譲るようなミスマッチ感。

そんなのがまあこの小説のウリなんでしょうか。

老人の自宅介護ということについてはけっこうしっかりと描かれていると思います。

これはやはり経験しないとわからないことでしょう。

芥川賞を受賞した本編よりも、私は併録されている「既知との遭遇」のほうが楽しかったです。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 『も』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月20日

「西城秀樹のおかげです」森奈津子

Cimg1952

SFとレズビアンを融合させたエロくて笑える短編集です。

表題作は謎のウィルスで人類が滅亡した世界で、ただひとり生き残った少女の話。

しかしまあフタを開けてみればこれがとんでもない内容で。(笑)

日本SF大賞の候補作だったそうですが、なんでこんなのが・・・・。

私はそれよりも他の作品のほうが面白かった。

「エロチカ79」が笑えましたね。

『後生だから』という言葉に反応して必ず出てくるサドの女子高生生徒会長が馬鹿馬鹿しくてたまりません。

そして「悶絶! バナナワニ園!」がなかなかエロい。

男勝りな女性私立探偵が女性たちの手により辱めを受けます。

「テーブル物語」は中国や中近東を思わせる舞台でちょっと幻想的な雰囲気もあります。

正直言いましてどれも小説としての出来は散々ですが、それをじゅうぶん補う勢いがあります。

不勉強なことにたまたま本屋でこの本を手に取るまで、この作家を知りませんでした。

読み終えましてすぐに他の作品も購入した次第です。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 03:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 『も』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月23日

「いつかパラソルの下で」森絵都

Cimg1935

主人公の柏原野々は厳しすぎる父と馬が合わず5年前に家を飛び出し、彼氏の家に転がり込んで同棲中の25歳。

天然石を扱うショップで働いています。

そんな神経質なほどに厳格だった父も亡くなったのですが、実は愛人がいたことが判明。

そのせいか母の様子もおかしくなってしまいました。

愛人と会った野々は父のことをいろいろと聞くのですが、「自分には暗い血が流れている」と漏らしたことがあったそうです。

「暗い血」とはどういう意味なのか。

野々は兄や妹と一緒に父の故郷である佐渡へ行き、父のルーツを探ります・・・・。

児童文学で数々の賞を受賞してこられた作者が書いた、大人の小説です。

そのあたり意識しておられるのでしょうか、いきなり性描写で始まります。

そして父の愛人問題にしても主人公の不感症問題にしても、扱っておられるのは性的なことなんですね。

しかしそれがテーマだというわけではありません。

厳格すぎた父が子供たちに与えた影響。

そうせざるを得なかった父のそれまでの人生。

父のルーツを探ることにより、今さらながらに父を知り、自分を知ることになります。

バラバラになっていた家族が父の死という出来事をきっかけに、あらためてしっかりと家族というものを認識するあたりが温かく爽やか。

微笑ましい小説でした。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 12:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 『も』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月15日

「四畳半神話大系」森見登美彦

Cimg1904

主人公はオンボロの四畳半に暮らす大学3回生。

2年前に薔薇色のキャンパスライフを夢見て入学したものの、女性や勉強その他もろもろ、さっぱりな生活を送っています。

小津という悪友や樋口という仙人の様な師匠(先輩)に引きずり回され、黒髪の乙女・明石さんとの仲も思うようになりません。

これもやはり映画サークル「みそぎ」に入ったせいなのか。

もし入学時に他のサークルに入っていれば薔薇色のキャンパスライフを謳歌できたのではないか。

主人公は苦悩(けっこう刺激的で楽しそうですが 笑)の大学生活を過ごすわけですが・・・・。

デビュー作「太陽の塔」に続いての第2作目ですが、やはり京都を舞台として大学生を描いています。

昔の書生さんのような研究者のようなやや大上段に構えたような文体、そんな文体で馬鹿馬鹿しいことをまじめに書くおかしさ。

そしてどうも二枚目になれない冴えない主人公。

そういったものがこの作者の持ち味ですね。

この作品は4つの章に分かれているのですが、それぞれ大学入学時に別の道を選択したらどうなったかというのが描かれています。

第一話なら主人公は「みそぎ」という映画サークルを選びます。

第二話では「弟子求ム」というようわからんビラに惹かれ、第三話では「ほんわか」という脱力系のソフトボールサークルに入り、最終話では「福猫飯店」という秘密機関に入ります。

大まかな流れは共通なのですが、当然それぞれ違うキャンパスライフが展開されるわけです。

特に最終話は四畳半の部屋から出られないという完全なSFです。

玄関から外に出ればそこにも同じ部屋が。

では窓から外に出てみるとやはりそこにも同じ部屋が。

「八十日間四畳半一周」というタイトルも馬鹿らしいやらなるほどやら。

真面目なようなふざけているような、どうも憎めない登場人物たちが織り成す青春物語。

まさしく「森見ワールド」と呼ぶべき独特の世界を読ませてくださる作家です。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 04:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 『も』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする