2019年02月16日

「はなうた日和」山本幸久

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9編収録の短編集です。
どの作品もさりげない話です。
日常のさりげない話と書いてしまいそうになりますが、さりげなくはありますが日常的ではありません。
会ったことのない父親が実はいつも観ている特撮の悪のボス役だったり、部長が部下のOLからその気があるっぽく飲みに誘われて「副社長を殴ってほしい」と頼まれたり。
不倫は今や普通としても、その相手が実はとんでもなかったり。
どれも日常ではなかなかあり得ない設定です。
しかしそれをさりげなく読ませるのがこの作者の作風といいますか技術なんでしょうね。
共通しているのは世田谷線界隈を舞台にしていること。
なのでなんだかほのぼの感があります。
「はなうた日和」というタイトルもまさにそんな雰囲気ですよね。
そして連作というわけではないのですが、登場人物などが各作品でリンクしていたりします。
なのでなんとなくこじんまりとした一体感のようなものを感じさせます。
「〇〇殺人事件」のような小説よりも私はこのような小説のほうが好きですし、また多く読まれてほしいと思いますね。
ラベル:小説
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2018年11月17日

「みんないってしまう」山本文緒

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12編が収められた短編集です。
昼下がりのデパートで年賀状のやり取りさえ途絶えてしまった幼なじみとばったり遭遇した主人公。
二人は最上階の食堂に行き旧交を温めます。
そんな中で出てきたのが中学で一緒だった成井君という男の子の名前。
実は二人は同時期に彼と付き合っていたということが判明します。
つまり二股をかけられていたわけで。
憤慨した友人は成井君の実家に電話するのですが・・・・。(表題作)
ちょっとせつないような笑ってしまうような話です。
本のタイトルを見ますと人が皆自分から去っていくというイメージですが、全編読みますとそれは決して人だけではありません。
人はいろんなものを失っていくのだなと思わされます。
しかし失うものもあれば、また得るものもあるんですよね。
表題作では主人公がそのような感想を述べています。
収められているどの作品も明快なオチのようなものはありません。
含みを持たせているといいますか、その後は読者が頭の中で描いていくということです。
例えば一番最初の「裸にネルのシャツ」。
主人公はこのあとどうしたのか。
その後のストーリーについては読者の数だけありということですね。
ラベル:小説
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2018年10月02日

「流転の魔女」楊逸

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中国人女性の林杏は日本の大学で法律を勉強している留学生。
居酒屋で時給900円のアルバイトをしています。
生活はぎりぎりです。
ある日、友人から弁護士をしている父親の通訳を頼まれます。
留置場に拘束されている中国人容疑者と接見するために通訳をしてほしいと。
その仕事が終わったあと貰った封筒を家に帰って開けてみると、報酬は1万5千円でした。
びっくりする林杏。
数時間で彼女の3日分のアルバイト代です。
林杏は貰った5千円札に『おせん』と名前を付け、「きっと戻ってくるんだよ」と心の中で呟き、コンビニで焼き肉スタミナ弁当やらなんやら、おまけにデザートまで買って“贅沢”をし、その5千円札を手放します。
そこから人から人へ渡っていく『おせん』の旅が始まり、また林杏はその後も通訳を続けるのですが・・・・。
通訳で中国人容疑者と関わる林杏、そして旅を続ける5千円札の『おせん』の話が交互に描かれていきます。
どちらにせよ描かれているのはお金です。
ン十円のお金さえ使うのに躊躇し振り回される林杏。
かと思えば『おせん』のほうはいろんな立場の人間の手に渡っていき、人生を垣間見ていきます。
お金に振り回される人間の悲哀といいますか。
この2つの話がどのようにひとつに収束するのかなと思いながら読んでいたのですが、結局はそのまんまなんですね。(笑)
私的にはお札を擬人化した『おせん』の章がどうも面白く感じられませんでした。
だいたい5千円札がそんなに海外のいろんな人の手を通り過ぎるとは思えませんし。
海外のお札と接触させるための設定なんでしょうが、ちょっと無理があるように思います。
面白い構成だとはと思いますが、わざわざこんなことする必要があるんですかね?
ラベル:小説
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2018年08月29日

「アンダーマイスキン」山内詠

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社会人4年目の鈴木久美子は地味なOLです。
下半身デブということで、服装はいつもサイズ選びが比較的楽なスカートです。
しかしそうなるとパンストを穿かなければならず、これが大嫌い。
ある日通販でガーターストッキングが目に入り、試しに買ってみたらこれがパンストよりも都合がいい。
というわけでガーターベルトも揃えて着用することにしました。
あくまでセクシー狙いではなく実用一辺倒ですが。
そんなある日、ひとり残業していたら総務の高野課長が現れ、ゴミの片付けなどを手伝ってくれます。
優しい人だなと思っていたら、課長はいきなり久美子の足に触れ甲にキスを。
どうやらガーターストッキングを穿いていることに気づかれ、それが彼を刺激したようで・・・・。
いきなり冒頭からエロ全開です。(笑)
下半身デブなOLと足フェチの課長という設定が面白いじゃないですか。
これ、足フェチな男性が読むといいんじゃないでしょうか。
二人きりの会社の中でいきなり足にキスするというシチュエーションはセクハラを通り越して強制わいせつですし、そのままホテルに連れ込んでエッチしてしまうというのも強制性交罪です。(笑)
ま、なんやかんやと合意に至るのですが。
非現実的な展開ではありますが、そのあたりはエタニティブックスとしてはじゅうぶん許容の範囲内であり、お約束な展開でしょう。
中学生の頃、男子のちょっとしたひとことがトラウマとなり、それ以来男性が苦手になってしまった久美子。
そんな久美子を少しずつ解きほぐしていく高野課長。
当然途中にライバル登場による誤解があったりもして、これまたお約束です。
最後に男性(高野課長)からの視線で小さな章が添えられており、これも女性(久美子)との視線の違いがちゃんと描かれており面白かったです。
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2018年08月01日

「食堂つばめ3 駄菓子屋の味」矢崎存美

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生と死のあいだの世界にある街。
そこには「食堂つばめ」というどんな料理も作ることができる不思議な店があります。
今回そんな店を訪れたのは30代の男性会社員。
ですが今までここを訪れた人とはどうも様子が違います。
ピンぼけのようなぼんやりした印象です。
どうやら何者かに殺されてこの街にやってきたようなのですが・・・・。
シリーズ第3弾。
今までは読み切り形式でしたが今回は長編(中編?)です。
そして殺された人物というのも初登場では。
しかしだからどうということもなく、わざわざ長編にする必要もないように思えましたが。
かえって短編を引き延ばしたような薄い印象を受けましたね。
出てくる料理は色々な肉料理や駄菓子屋のもんじゃ焼き。
サブタイトルにもあるようにこの「駄菓子屋の味」が今回のメインなわけですが、ん~、これもちょっと苦しいかな。
駄菓子屋の味を取り上げるのならもっと別のアプローチがあったのではと思ってしまいました。
なぜこの内容でわざわざ長編にしたのかがわかりません。
語り手である柳井秀晴のご都合的な存在もウザくなってきました。
このシリーズ、8巻で終了のようです。
最終巻まですでに購入済みですので、我慢して読みましょう。
さて、今後の内容に感動はあるのか。
ラベル:小説 グルメ本
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