2021年02月14日

「日本食紀行 味の原点を探る」山田ゆりか

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著者は食べ物の“素材”をめぐって全国を取材しておられます。
ここぞという生産者たちです。
それぞれの素材はどのようにして作られているのか。
そして地元ではどのように料理されているのか。
生産の現場を取材するだけではなく、しっかりと料理のレシピも伝授されておられます。
もちろんそれらをしっかりと公開。
こういう本ってほんと貴重だと思います。
この本の取材は昭和56年から59年の3年間とのこと。
もう40年近く前になります。
取材時のオトーサン、オカーサンは、もうお亡くなりでしょう。
もしかしたらその会社自体なくなっているかもしれない。
それって、良心的に素材を供給してくださる生産者がどんどん減ってきているということです。
つらい話です。
伝統的な日本の食文化。
絶やすことなく受け継いでいきたいですね。
ラベル:グルメ本
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2020年12月18日

「酒を愛する男の酒」矢口純

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著者は雑誌の編集者をしておられたということで、やはり作家たちとの交流が深かったようです。
というわけでタイトルの「酒を愛する男」というのは、つまりこの本に登場する人たちというのはほとんど作家です。
井伏鱒二、藤原審爾、遠藤周作、川端康成、吉行淳之介、安岡正太郎、梶山季之、伊丹十三山口瞳開高健立原正秋・・・・。
いやいや、すごい顔ぶれですね。
それぞれの作家のエピソードが語られています。
以前にも書いたことがありますが、昔の作家って酒が似合いますね。
酒というか酒場というか酒についてのエピソードというか。
現在の作家でそのような人はいませんねぇ。
北方謙三なんて声もあるかもしれませんが、あの人はバーに入って「あ、北方謙三だ」という声を聴いたら、バーテンダーに「いつもの」といってウイスキーのストレートを出させる。
それを一気飲みして「じゃあな」と店を出る。
それを見た客は「さすが。カッコイイ」となるのですが。
でもこれ実はこういうときのために用意してあるウーロン茶なんですね。
バーテンダーもグルになって演出してる。(笑)
それに私が勝手に思う酒の似合う作家というのは、ハードボイルドに出てくるようなバーじゃない。
バーはバーでもやはり文壇バーでしょうし、それよりも場末の飲み屋が似合う作家がいい。
でも昭和にあったような文壇バーなんて今はもうないでしょうし、場末の飲み屋なんてのも場末自体がない。
あっても若い作家なんてそんなとこに行かない。
なのでこのような酒を愛した作家たちのエピソードは貴重な過去の記録です。
時代が違うといえばその通りなんでしょうけど、今の作家にはない魅力がありました。
昔は作品とは別に作家本人にも個性というか魅力がありましたね。
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2020年12月11日

「パスタぎらい」ヤマザキマリ

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著者はマンガ家です。
「テルマエ・ロマエ」の作者として有名ですね。
17歳でイタリアに暮らし始めてから2019年で35年になるといいます。
フィレンツェで貧乏暮らししていたとき、『アーリオ・オリオ・エ・ペペロンチーノ』を散々食べたそうです。
安上がりだから。
原価はせいぜい30円程度だったとか。
ところがあるテレビ局のプロデューサーにつれて行ってもらった日本のレストランでは1000円以上。
思わず「ほとんどレストランの丸儲けじゃないですか」と漏らしてしまったと。(笑)
しかもスタッフたちは皆日本人なのに「ペルファヴォーレ!」、「グラッツィエ!」などとやっている。
客はやたらワイングラスをぐるぐる回している。
イタリアでもフランスでもそんなことやっている人はいませんし、著者のイタリア人の夫はそのような光景を見て苦笑するそうです。
日本人の受け入れ方ってどこか間違ってますよね。
まあそれはともかく、若い時に過剰に摂取したせいか、パスタ全般に食欲をそそられることはなくなってしまったそうです。
あえて食べたくなるとすれば、ケチャップを使ったナポリタンやタラコソース、納豆スパなどの和風スパゲッティだとか。
イタリアに何十年暮らしていても、やはり日本人なんですねぇ。
最初にそのようなエピソードが紹介されていますが、別に丸々一冊パスタぎらいについて書かれているわけではなく、幅広くイタリアの食文化について書いておられます。
しっかりと軸足をイタリアに置いておられるので、読んでいてブレがないのが心地よい。
楽しく読ませていただきました。
ラベル:グルメ本
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2020年11月18日

「だいこん」山本一力

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つばきは三人娘の長女です。
父親の安治は腕のいい大工ですが博打好き。
それが原因で莫大な借金を拵え、利子の支払いだけで精いっぱいの貧しい暮らしです。
母のみのぶは家計を支えるために蕎麦屋で働きます。
そんなみのぶを見て自分も将来このような仕事がしたいと思うつばき。
ある日江戸の大半を焼き尽くす大火事があり、つばきはみのぶと一緒に炊き出しの手伝いをします。
そのときに教えられた飯炊きでとんでもない才能を開花させます。
こんなに美味い飯が炊けるのならとつばきは火の見番小屋の賄いを任され、飯にうるさい荒くれ男どもをも黙らせました。
月日が流れ、やがて「だいこん」という一膳飯屋を浅草に開業することになります。
みのぶや二人の妹にも手伝ってもらい、飯の美味さや安さで店は大繁盛。
ですがいろんな困難も待ち構えています・・・・。
主人公つばきの成長の物語ですね。
負けん気が強く毅然としたつばきのキャラがいい。
ただそれ以外の登場人物の描かれ方がちょっと中途半端な気がしました。
父親の安治はつばきが店を始めてからはあまり出てきません。
最初に散々出てきただけに今は何をしてるんだろうと。(笑)
ま、要所要所で出てきてつばきに助言したりはするのですが。
この話は最初に現在が語られ、その後過去に戻って徐々に語られていくという構成なのですが、最初に芳三郎という貸元とつばきのあいだでやり取りがあったと語られています。
しかしその後そのような場面は出てきません。
最初に名前を出してほったらかしです。
やはりこれは重要なエピソードなのできっちりと書いておくべきでしょう。
辰吉とのことも未消化のまま終わってますしね。
ただこの作品、このあとも続編が出ています。
シリーズ化することも含んでの構成かもしれませんが。
また楽しみに読ませていただきましょう。
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2020年07月02日

「紙婚式」山本文緒

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8編収録の短編集。
表題作の「紙婚式」。
子供は作らず、部屋は別々、自分の食い扶持は自分で稼ぎ、自分のことは全部自分でする。
そんな条件をお互い了解の上で結婚して10年になる夫婦。
友人の結婚式の2次会で夫が「俺は女房を養う気なんか全然ないよ」という台詞を口にします。
それを聞いてショックを受ける私。
なぜ私はショックを受けたのか・・・・。
まったくなんのために結婚したのかわからないカップルです。
食事中に妻が恋人と電話で話していても夫は無関心ですし。
そもそも籍さえ入れていない。
つまり結婚ごっこですね。
2次会で同席した女の子から「あなた達、変よ。それじゃ結婚している意味がないじゃない」と言われます。
これをヘタに追及すると、じゃあ結婚している意味とはなんなのか、という泥沼問答にはまってしまうわけですが。(笑)
この小説の例は極端としても、こういうドライな結婚生活に憧れている人もいるんじゃないかと思います。
特に女性。
仕事を持っていて夫に負けないくらいの収入がある女性は「私は夫に養ってもらってるわけじゃない」というプライドがある。
女だからといって夫の後ろに一歩下がるなんてとんでもない。
男女は平等なのだから。
こうなると憧れというよりも主張ですが。
ある著名人がこんな発言をしていました。
「なんで夫のことを主人なんて呼ばなくちゃいけないの。わたしはペットじゃないのよ」と。
笑いましたね。
なるほど、ポチじゃないんだからと。
一理あります。
話はこの小説に戻りますが、結婚していても生活的に完全に自立孤立しているわけですから、本来なら「養う気なんか全然ない」と言われても「今さらなにを」で終いです。
しかしそれはあまりにも脆い虚構の生活でした。
惰性で回っているコマなんてちょっと触れればひっくり返って止まってしまいます。
でもそうなって初めて気づくこともあるんだろうな、というラストです。
他の作品も結婚生活をテーマに書かれています。
山本文緒流の、ちょっと怖さのある内容です。
ラベル:小説
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