2018年07月28日

「欅しぐれ」山本一力

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深川の桔梗屋といえば履物を扱う老舗の大店です。
その主人である太兵衛はふとしたきっかけで賭場の貸元猪之吉と知り合います。
酒の席に誘って自己紹介した太兵衛に猪之吉は言います。
「そこまでで止したほうがいい」
江戸でも指折りの問屋である桔梗屋が渡世人と付き合うなど考えられないことです。
しかしこの後のやり取りのあと猪之吉は言うのです。
「これからは、五分の付き合いをさせてもらおう」
住む世界は違えども、お互いの侠気に惹かれあうのですね。
その時点ですでに病に冒されていた太兵衛ですが、また間の悪いことに店の乗っ取りを企む連中が絡んでくるのです。
太兵衛は信頼する猪之吉に店の後見人になるよう言い残し息を引き取ります。
渡世人が大店の後見人。
もちろん皆抵抗はあったものの損得ではなくまっすぐに桔梗屋を守ろうとする猪之吉に、内儀しずを始め、頭取番頭も信頼を置きます。
猪之吉(桔梗屋)と乗っ取りを企む一味との死闘が始まります・・・・。
いやあ、いいですねぇ。
猪之吉といえば山本一力作品ではお馴染みの人物です。
今回は主人公としてその魅力を存分に発揮しています。
ですがなんといいますかしゃしゃり出すぎていない。
大店の主の代わりに店を仕切るものの、しかしそれはあくまで乗っ取り屋から桔梗屋を守るため。
ほいほいと商売に口を出す下衆な人間ではもちろんありません。
しかしつねに相手を先回りして手を打ち続ける差配はさすがです。
渡世人である猪之吉の器量と魅力、また大店の主であるという立場にも関わらずそれを受け入れた太兵衛もまた人物でしょう。
そして内儀しずの凛とした姿勢。
その他の登場人物にもしっかりと味付けがあります。
さすが。
山本一力の世界を存分に味わえる一冊ですね。
ラベル:時代小説
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2018年04月17日

「海に沈む太陽(上・下)」梁石日

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曾我輝雅は妾の子です。
そのせいで学校でもいじめられたりしています。
船乗りに憧れ、16歳のとき家出をして念願の船乗りとなります。
乗り込んだ船はLST。
ランディング・シップ・タンクの略で、アメリカの軍需物資を運ぶ船です。
釜山、沖縄、台湾、フィリビン、ベトナムなどをいったりきたりしました。
ベトナムでは米兵の遺体に囲まれ、迫撃砲にさらされ、死にかけたこともあります。
やがて船を降りた輝雅は道頓堀を根城にし、カツアゲから始まり、宝石や腕時計などの密輸品を扱うようになります。
しかしいつまでもそんなことをしていられません。
輝雅は好きな絵を生かし、デザイン事務所に就職します。
そしてイラストレーターになるという夢を抱き、ニューヨークへ。
輝雅の夢は叶うのか・・・・。
イラストレーター黒田征太郎の半生を描いた小説とのことです。
ノンフィクションではなくあくまでフィクションなので、書かれていることのどこまでが本当のことなのかはわかりません。
しかしまとまりのない作品ですね。(笑)
船乗りになったり大阪で裏の商売をしてみたり、かと思ったらイラストレーターを目指してニューヨークに行ってみたり。
まとまりもなにも実際の経歴を基にしているのだからしょうがないとか、波乱万丈の半生という言い方もできるわけですが。
じゃあラストはどのように収束させているのかといえば、なんじゃそりゃといったような肩透かしなラストです。
ふりだしに戻ってるじゃないですか。
なんのために長々と書いてきたのかと。(笑)
この作者は短編よりもやはり長編ですが、どうも構成に難があるように思います。
ラベル:小説
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2017年10月15日

「草笛の音次郎」山本一力

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天明八年の江戸。
今戸の貸元、恵比寿の芳三郎のもとに佐原の兄弟から手紙が届きます。
香取神宮の祭りを見にこいと。
しかし芳三郎は風邪が抜けきっておらず体調が良くありません。
さりとて兄弟からの誘いを断るわけにもいかず。
代貸の源七に話をすると、源七は音次郎を名代として推します。
つまり芳三郎の名、組を背負って佐原に旅に出るわけです。
芳三郎には優男に思える音次郎ですが、源七の見る目を信用し佐原に出させることにします。
渡世人としての作法をみっちりと仕込まれ旅にでる音次郎ですが、道中いろんなことが待ち受けています・・・・。
いわゆる股旅物というやつですね。
渡世人としての言葉遣いもままならず、江戸を出たこともない音次郎が大きな役目を背負った旅を通じて、一人前の男に成長していく姿を描いています。
ただちょっと変わり様が急すぎる気もしましたが。(笑)
ですが音次郎の成長が微笑ましく頼もしく、渡世人のやりとりや言葉遣いも歯切れよく、非常に清々しいく心地よい読後感があります。
堪能しました。
やっぱり山本一力にはハズレがないなぁ。
ちなみに本作に登場する恵比寿の芳三郎は「深川駕籠」シリーズにも登場しています。
山本一力の作品にはこのような登場人物のリンクがあって、ファンとしてはそれも楽しみの一つです。
ラベル:時代小説
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2017年09月23日

「サイゼリヤ革命 世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話」山口芳生

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サイゼリヤといえば誰もが口をそろえて言うのが、とにかく安い。
ファミリーレストランの中でも抜きん出ていますね。
私も頻繁に利用させていただいております。
私の場合は飲み屋としてですけど。(笑)
なにしろグラスワインが100円なんですから。
昼間っからおおいに飲ませていただいております。
さて、本書はそんなサイゼリヤの創業者であり現会長の正垣泰彦氏が語る経営論です。
なんともユニークな経営者ですね。
楽天家といえば語弊があるでしょうか。
失敗するとわかっていて店を出し、やっぱり失敗したなんてあっけらかんと言っておられる。
客が来ないのなら安くすればいい、じゃあ7割引きだ、とか発想が笑ってしまいます。
とにかく独特の経営哲学をお持ちで、その結果がどうなのかは現状が証明しています。
今後もサイゼリヤがどのように成長していくのか楽しみに見させていただきましょう。
安いワインを飲みながら。(笑)
ラベル:グルメ本
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2017年08月24日

「男と点と線」山崎ナオコーラ

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短編6編収録。
世界のあちこちでの男女の物語。
表題作の「男と点と線」の舞台はニューヨークです。
42歳で独身の惣次郎は、バツイチで幼馴染みのさおりからいきなりニューヨークへ一緒に行かないかと誘われます。
話に乗る惣次郎。
さおりの娘で12歳の亜衣と3人でニューヨークへ出発します。
ブルーノートでジャズを聴いたり、メトロポリタンオペラを観に行ったり。
セントラルパークにひとり散歩に出かけた惣次郎は、さおりへの思いを再確認します。
メトロポリタン美術館に行き、モネやクリムト、シーレなどの絵に感動しつつ、自分の気持ちをしっかりと踏み固めます・・・・。
飄々とした雰囲気で話は進んでいきますが、書かれている内容といいますとこれかなり至高の愛といった感じですね。(笑)
こういう悟りといいますか達観といいますか、ここまで純化された思考を持てる男というのもちょっといないだろうと。
穢れなく爽やかといえばそうですし、ある意味男女における理想の友達関係といえるかもしれませんが。
この本の他の作品もそうですけど、男女の肉体関係のようなものは描かれていません。
そのような男女関係もまたあり、ということでしょうか。
ラベル:小説
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