2018年10月02日

「流転の魔女」楊逸

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中国人女性の林杏は日本の大学で法律を勉強している留学生。
居酒屋で時給900円のアルバイトをしています。
生活はぎりぎりです。
ある日、友人から弁護士をしている父親の通訳を頼まれます。
留置場に拘束されている中国人容疑者と接見するために通訳をしてほしいと。
その仕事が終わったあと貰った封筒を家に帰って開けてみると、報酬は1万5千円でした。
びっくりする林杏。
数時間で彼女の3日分のアルバイト代です。
林杏は貰った5千円札に『おせん』と名前を付け、「きっと戻ってくるんだよ」と心の中で呟き、コンビニで焼き肉スタミナ弁当やらなんやら、おまけにデザートまで買って“贅沢”をし、その5千円札を手放します。
そこから人から人へ渡っていく『おせん』の旅が始まり、また林杏はその後も通訳を続けるのですが・・・・。
通訳で中国人容疑者と関わる林杏、そして旅を続ける5千円札の『おせん』の話が交互に描かれていきます。
どちらにせよ描かれているのはお金です。
ン十円のお金さえ使うのに躊躇し振り回される林杏。
かと思えば『おせん』のほうはいろんな立場の人間の手に渡っていき、人生を垣間見ていきます。
お金に振り回される人間の悲哀といいますか。
この2つの話がどのようにひとつに収束するのかなと思いながら読んでいたのですが、結局はそのまんまなんですね。(笑)
私的にはお札を擬人化した『おせん』の章がどうも面白く感じられませんでした。
だいたい5千円札がそんなに海外のいろんな人の手を通り過ぎるとは思えませんし。
海外のお札と接触させるための設定なんでしょうが、ちょっと無理があるように思います。
面白い構成だとはと思いますが、わざわざこんなことする必要があるんですかね?
ラベル:小説
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2018年08月29日

「アンダーマイスキン」山内詠

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社会人4年目の鈴木久美子は地味なOLです。
下半身デブということで、服装はいつもサイズ選びが比較的楽なスカートです。
しかしそうなるとパンストを穿かなければならず、これが大嫌い。
ある日通販でガーターストッキングが目に入り、試しに買ってみたらこれがパンストよりも都合がいい。
というわけでガーターベルトも揃えて着用することにしました。
あくまでセクシー狙いではなく実用一辺倒ですが。
そんなある日、ひとり残業していたら総務の高野課長が現れ、ゴミの片付けなどを手伝ってくれます。
優しい人だなと思っていたら、課長はいきなり久美子の足に触れ甲にキスを。
どうやらガーターストッキングを穿いていることに気づかれ、それが彼を刺激したようで・・・・。
いきなり冒頭からエロ全開です。(笑)
下半身デブなOLと足フェチの課長という設定が面白いじゃないですか。
これ、足フェチな男性が読むといいんじゃないでしょうか。
二人きりの会社の中でいきなり足にキスするというシチュエーションはセクハラを通り越して強制わいせつですし、そのままホテルに連れ込んでエッチしてしまうというのも強制性交罪です。(笑)
ま、なんやかんやと合意に至るのですが。
非現実的な展開ではありますが、そのあたりはエタニティブックスとしてはじゅうぶん許容の範囲内であり、お約束な展開でしょう。
中学生の頃、男子のちょっとしたひとことがトラウマとなり、それ以来男性が苦手になってしまった久美子。
そんな久美子を少しずつ解きほぐしていく高野課長。
当然途中にライバル登場による誤解があったりもして、これまたお約束です。
最後に男性(高野課長)からの視線で小さな章が添えられており、これも女性(久美子)との視線の違いがちゃんと描かれており面白かったです。
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2018年08月01日

「食堂つばめ3 駄菓子屋の味」矢崎存美

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生と死のあいだの世界にある街。
そこには「食堂つばめ」というどんな料理も作ることができる不思議な店があります。
今回そんな店を訪れたのは30代の男性会社員。
ですが今までここを訪れた人とはどうも様子が違います。
ピンぼけのようなぼんやりした印象です。
どうやら何者かに殺されてこの街にやってきたようなのですが・・・・。
シリーズ第3弾。
今までは読み切り形式でしたが今回は長編(中編?)です。
そして殺された人物というのも初登場では。
しかしだからどうということもなく、わざわざ長編にする必要もないように思えましたが。
かえって短編を引き延ばしたような薄い印象を受けましたね。
出てくる料理は色々な肉料理や駄菓子屋のもんじゃ焼き。
サブタイトルにもあるようにこの「駄菓子屋の味」が今回のメインなわけですが、ん~、これもちょっと苦しいかな。
駄菓子屋の味を取り上げるのならもっと別のアプローチがあったのではと思ってしまいました。
なぜこの内容でわざわざ長編にしたのかがわかりません。
語り手である柳井秀晴のご都合的な存在もウザくなってきました。
このシリーズ、8巻で終了のようです。
最終巻まですでに購入済みですので、我慢して読みましょう。
さて、今後の内容に感動はあるのか。
ラベル:小説 グルメ本
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2018年07月28日

「欅しぐれ」山本一力

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深川の桔梗屋といえば履物を扱う老舗の大店です。
その主人である太兵衛はふとしたきっかけで賭場の貸元猪之吉と知り合います。
酒の席に誘って自己紹介した太兵衛に猪之吉は言います。
「そこまでで止したほうがいい」
江戸でも指折りの問屋である桔梗屋が渡世人と付き合うなど考えられないことです。
しかしこの後のやり取りのあと猪之吉は言うのです。
「これからは、五分の付き合いをさせてもらおう」
住む世界は違えども、お互いの侠気に惹かれあうのですね。
その時点ですでに病に冒されていた太兵衛ですが、また間の悪いことに店の乗っ取りを企む連中が絡んでくるのです。
太兵衛は信頼する猪之吉に店の後見人になるよう言い残し息を引き取ります。
渡世人が大店の後見人。
もちろん皆抵抗はあったものの損得ではなくまっすぐに桔梗屋を守ろうとする猪之吉に、内儀しずを始め、頭取番頭も信頼を置きます。
猪之吉(桔梗屋)と乗っ取りを企む一味との死闘が始まります・・・・。
いやあ、いいですねぇ。
猪之吉といえば山本一力作品ではお馴染みの人物です。
今回は主人公としてその魅力を存分に発揮しています。
ですがなんといいますかしゃしゃり出すぎていない。
大店の主の代わりに店を仕切るものの、しかしそれはあくまで乗っ取り屋から桔梗屋を守るため。
ほいほいと商売に口を出す下衆な人間ではもちろんありません。
しかしつねに相手を先回りして手を打ち続ける差配はさすがです。
渡世人である猪之吉の器量と魅力、また大店の主であるという立場にも関わらずそれを受け入れた太兵衛もまた人物でしょう。
そして内儀しずの凛とした姿勢。
その他の登場人物にもしっかりと味付けがあります。
さすが。
山本一力の世界を存分に味わえる一冊ですね。
ラベル:時代小説
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2018年04月17日

「海に沈む太陽(上・下)」梁石日

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曾我輝雅は妾の子です。
そのせいで学校でもいじめられたりしています。
船乗りに憧れ、16歳のとき家出をして念願の船乗りとなります。
乗り込んだ船はLST。
ランディング・シップ・タンクの略で、アメリカの軍需物資を運ぶ船です。
釜山、沖縄、台湾、フィリビン、ベトナムなどをいったりきたりしました。
ベトナムでは米兵の遺体に囲まれ、迫撃砲にさらされ、死にかけたこともあります。
やがて船を降りた輝雅は道頓堀を根城にし、カツアゲから始まり、宝石や腕時計などの密輸品を扱うようになります。
しかしいつまでもそんなことをしていられません。
輝雅は好きな絵を生かし、デザイン事務所に就職します。
そしてイラストレーターになるという夢を抱き、ニューヨークへ。
輝雅の夢は叶うのか・・・・。
イラストレーター黒田征太郎の半生を描いた小説とのことです。
ノンフィクションではなくあくまでフィクションなので、書かれていることのどこまでが本当のことなのかはわかりません。
しかしまとまりのない作品ですね。(笑)
船乗りになったり大阪で裏の商売をしてみたり、かと思ったらイラストレーターを目指してニューヨークに行ってみたり。
まとまりもなにも実際の経歴を基にしているのだからしょうがないとか、波乱万丈の半生という言い方もできるわけですが。
じゃあラストはどのように収束させているのかといえば、なんじゃそりゃといったような肩透かしなラストです。
ふりだしに戻ってるじゃないですか。
なんのために長々と書いてきたのかと。(笑)
この作者は短編よりもやはり長編ですが、どうも構成に難があるように思います。
ラベル:小説
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