2016年05月05日

「食堂つばめ」矢崎在美

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柳井秀晴が目を開けると、そこは列車の中です。

このような電車に乗ったような、乗らなかったような。

寝ぼけているのかどうも記憶が曖昧です。

お腹がすいた秀晴は、ワンピースにエプロン姿の女性に食堂車に案内され玉子サンドを食べるのですが、これがものすごく美味しい。

やがて電車を降り、駅の外へ出て歩き出すと自分の名前を呼ぶ声が聞こえます。

目を覚ますとそこは病院のICUでした。

どうやら臨死体験をしたようです。

もしあのまま列車を降りなかったら・・・・。

その後もあの美味しかった玉子サンドを食べたい一心のせいか、生と死の間にある街を訪れることになります。

そしてエプロン姿の女性ことノエと再会しいろんな料理を食べさせてもらうのですが、これがまた美味しい。

秀晴は料理上手なノエにこの街で食堂を開くことを勧めます。

死に向かってこの街にやって来た人たちにノエがその人の思い出の味の料理を食べさせ、また現世に帰ってもらおうとするのですが・・・・。

料理で味付けしたファンタジー小説ですかね。

『街』にやって来る人たちのエピソードにちょっとした感動があったりします。

ノエの過去についても。

ただ秀晴が簡単にあっちとこっちを出入りできるというのがちょっとご都合主義です。

どうしてそのようなことができるのかもいまいちわからない。

『街』に行っているあいだ現世の秀晴はどうなっているのでしょう?

そう頻繁にころころと死にかけるわけにもいかんでしょうし。

会社で居眠りしていたなんて記述がありますけど、そうそうねぇ。

そのあたりも含め、今後どのように話を持っていくのか読んでいきたいと思います。

ファンタジーですからあまり細かいことに目くじら立てると楽しめませんけどね。(笑)

ラベル:グルメ本 小説
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2016年04月03日

「牡丹酒 深川黄表紙掛取り帖(二)」山本一力

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シリーズ2作目です。

山師の雄之助は土佐で辛口の酒『司牡丹』と出会います。

蔵元の黒鉄屋や酒盗を作っている中西屋と知り合った雄之助は、江戸で司牡丹を広めることを請け負います。

その役目は息子で定斎売りの蔵秀、女絵師の雅乃、文師の辰次郎、飾り行灯師の宗佑たちです。

紀文こと紀伊国屋文左衛門にも話を持ちかけ、協力を得て4人は土佐に向かいます・・・・。

道中でトラブルがあったり滞在先の土佐で宗佑と金太という少年との心温まる関係があったり。

そして巨大な司牡丹の飾り行灯を拵えて村の人たちを感動させたりもします。

大坂の土佐堀でも披露。

このあたりの話運びはさすがに山本一力ですね。

読ませます。

江戸に戻った蔵秀は富岡八幡宮の勧進相撲の日、大鳥居下に飾り行灯を据付ける掛け合いをまとめてきます。

当日、本殿の左右に十樽ずつの司牡丹を積み上げ、大鳥居の下にも十樽、土俵のわきにも一樽ずつ。

紀文のはからいで酒を振舞うためのぐい飲みが一万五千個。

話が盛り上がってきて、さてどのような広目が展開されるのかと思いきや、あっさりとそのシーンが省略されているではないですか。

これはちょっと肩透かしでした。

梯子をはずされた気分です。

このあともうひとひねりあるんですけどね・・・・。

これを読んでどうにも司牡丹を飲みたくなったのですが、ちょうど近所のスーパーで南国フェアをやっていまして司牡丹が出ていたので購入。

酒盗はなかったのでいかの塩辛をアテに飲みました。

作品に思いを馳せつつ、しみじみ旨しでした。

ラベル:時代小説
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2016年03月24日

「行きつけの店」山口瞳

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著者は直木賞作家。

受賞作よりもおそらく「居酒屋兆治」という作品で一般的には知られているんじゃないでしょうか。

そしてサントリー宣伝部のコピーライターであったという経歴。

「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」というコピーが有名です。

この本のタイトルである「行きつけの店」というのはもちろん飲食店のことなのですが、氏の場合あまりグルメという感じがしません。

それは例えば開高健などと比べてのことですが。

料理そのものよりも店の雰囲気、主人や女将の人柄、そういったことに重点を置いておられます。

なので氏は引越ししてもまずは近所にいい店を見つけ、その店にひたすら通うというスタンスです。

近所に限らず日本全国においても。

ということでこのタイトルなんですね。

そうですね、私も同じ考えなのですが、店はやはり人です。

客と店主(従業員)といえども、結局は人と人との付き合いです。

飲食店ですからもちろん肝心の料理がお粗末では話になりませんが、それをクリアした上でやはり店の人柄。

料理が平凡であっても店主の人柄がよければ居心地よく通ってしまいます。

逆にいくら料理が良くても居心地悪い店には二度と行きません。

最近ソワニエなんて言葉を目にします。

フランス料理店でその店において最上級に扱われる客というような意味らしいですが、そんなのを目指そうという特集が料理雑誌であったりします。

アホかと思いますね。(笑)

そんなのは目指すものではありません。

ごく普通にお気に入りの店に通い、いつの間にやら数十年。

それは高級店であろうが大衆店であろうがです。

ちゃんと常識を守り普通に通っていれば、気が付いたときには店はその客をソワニエとして扱ってくださいます。

この本も結局はそういうことなんじゃないかと思います。

行きつけの店、それはすなわち自分が店を理解し、店も自分を認めて受け入れてくれるということなのだなと。

そのような店を持つことができたならば、ほんとに幸せです。

胸を張って「行きつけの店」と言えます。

ラベル:グルメ本 小説
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2016年02月15日

「異邦人の夜(上・下)」梁石日

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フィリピンからダンサーとして日本に来たマリア。

しかし待っていた現実はヤクザにがんじがらめにされた売春婦でした。

そんなマリアを愛した榎本。

マリアも日本で唯一心を許せる相手として榎本を愛するようになります。

榎本は在日韓国人で実業家の木村の下で脱税の手助けをしていたのですが、それをネタに5000万円を強請り取ります。

その金でマリアと逃亡。

しかしヤクザに捕まり木村は殺され、マリアはなんとか逃げ延びます。

整形して顔を変えたマリアは5000万円を元手にしてクラブを開店させるのですが・・・・。

「断層海流」の続編です。

前作が中途半端な終わり方だったのでこれでどうにか納得。(笑)

ですが続編というには前作とかなり内容がダブっており、結局前作の失敗を無理やり塗りなおしたかのような感があります。

内容もフィリピン人のマリアと在日韓国人の木村の2本立てになっており、それらはわずかに接点はあるものの、どうもまとまりが悪い。

やはりこの作家、構成があまり上手くないようで。

差別や偏見などと戦いながら日本で生きる異邦人というわけですが、マリアか木村のどちらかひとつに絞ってじっくり腰を据えたほうがよかったのではないかと思えました。

ラベル:小説
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2016年02月03日

「空想科学漫画読本」柳田理科雄

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漫画、アニメ、特撮などの設定を科学的に検証するという「空想科学読本」シリーズ。

今回は「空想科学“漫画”読本」ということであり、漫画に絞って取り上げられています。

「北斗の拳」に出てくる17メートルもの大男。

こんな相手と戦って主人公は勝てるものなんでしょうか。

というか、そんな人間がいるというのがすごいのですが。

「巨人の星」の大リーグ養成ギプスは本当に役に立つのか。

「キャプテン翼」の若林君の能力は実はとんでもないレベルだった。

「リングにかけろ」の必殺技の凄まじさといったら・・・・。

などなど。

いままでに何度も書いてきたと思うのですが、笑いの手法のひとつとして馬鹿馬鹿しいことを真剣に論じるというのがあります。

これがその類ですね。

この本に取り上げられている作品を読んだ読者は、当時おそらくなんの疑問も持たずに受け入れていたと思います。

それはやはり「マンガだから」。

ありえないという常識はもちろんわきまえつつ、しかしそんなことは頭の隅っこに追いやり存分に世界に浸っていたはずです。

そこに「ちょっと待った」とチャチャを入れたのがこの本です。

まあミもフタもないツッコミなんですけどね。(笑)

でもこういう楽しみ方もありなわけで。

この本によって自分の好きなマンガ作品が貶されたなんて思う人はいないのではと思います。

むしろ「そうそう、そうなんだよね」と一段と愛着が湧くのでは。

ちなみにこのシリーズの科学的検証について間違いを指摘する本もあります。

科学的な間違いというのは訂正する必要があるというものの、いちいち目くじら立てるのもちょっと野暮かなという気もしますけどね。

それをいうとこの本自体がそうなるか。(笑)

ラベル:漫画本
posted by たろちゃん at 01:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 『や』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする