2016年03月28日

「ランチのアッコちゃん」柚木麻子

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東京・麹町のはずれにある小学生用の教材を専門とする小さな出版社に勤める澤田三智子は派遣の営業補佐。

会社の近所にはランチメニューやお弁当を出す店がなぜかまったくありません。

ということで昼はいつも誰もいない営業部でひとり、デスクで自作の弁当を広げています。

そんなある日、営業部長の黒川敦子、通称アッコちゃんから1週間ランチを取り替えないかという提案をされます。

三智子の作った弁当を部長が食べ、部長が日頃通っている店に部長の金銭負担で三智子が通う。

あまり気乗りしないながらも受けた三智子ですが、その結果日々にどのような変化が・・・・?

連作短編集です。

表題作とその次の「夜食のアッコちゃん」は三智子が主人公ですが、そのあとの2編はまったく関係なし。

ですがちらっとアッコちゃんが登場します。

でもこれは連作として一冊に収めるために無理やりこじつけたようで、ちょっと苦しい。(笑)

どうせなら三智子とアッコちゃんのコンビでずっといってほしかったです。

もしくは相手が三智子でなくてもアッコちゃんを活躍させませんと。

なんといってもタイトルが「アッコちゃん」なんですから。

続編ではまたアッコちゃんが活躍しているようなので、いずれ読んでみることにしましょう。

ラベル:グルメ本 小説
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2016年03月04日

「フランス料理を料理する 文明の交差点としてのフランス料理」湯浅赳男

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世界の三大料理といえば、フランス料理、中国料理、そしてあとひとつはなんでしょう。

なんてクイズみたいですが、一般的にはトルコ料理といわれています。

でも日本人にとってはトルコ料理なんてピンとこないですよね。

料理そのものの完成度というよりも、地理的文明的な側面から三大料理のひとつに数えられているようです。

フランス料理と中国料理に異論は無いとして、あとひとつは私個人的には日本料理ではないかと思うのですが、3つめはそれぞれ自分の国の料理を付け加えておけばそれが正解なんて論もあります。(笑)

さて、本書は世界最高ともいわれるフランス料理について書かれた本です。

中国料理との比較ではオーブンと蒸篭の違いであると論じておられます。

そして系譜としてローマ帝国やイスラーム、イタリア料理からの影響。

サーヴィスについてはロシアが起源なのか。

マナーや食器について、素材の生産地について、などなど。

料理そのものよりも、歴史や文化といった面から外堀を埋めていくようにフランス料理を分析しておられます。

美味しい物を食べるのに理屈はいりませんが、料理をその国の文化として捉えるならば、この本に書かれているようなことを知っておくのも教養でありましょう。

何年も前に大阪で若い女性料理人が店をオープンさせたのですが、情報誌の取材で店のBGMについて「シャンソンはキモいからかけない」というような発言をしていました。

ロックだったかジャズだったかをかけていると。

別にフランス料理店だからシャンソンをかける必要なんてまったくありません。

しかしフランス料理を志していながらその国の文化をキモいなんて言ってのけるその感性に、私は絶対にこんな料理人の料理は食べたくないと思いました。

フランス料理に思い入れがあるのではなく、店主として料理する自分に自己陶酔しているのでしょう。

それをカッコイイかのように取り上げたライターや雑誌にも情けなさを感じましたね。

話が逸れました。

フランス料理に興味のある人なら、“サイドメニュー”としてご一読を。

ラベル:グルメ本
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2015年06月01日

「あまからカルテット」柚木麻子

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自宅でピアノを教えている咲子、男性月刊誌の編集者をしている薫子、化粧品メーカーの社員でデパートに勤務している満里子、料理研究家の由香子。

アラサーの4人は女子中学校時代からの仲良しです。

それぞれ立場は違いますが、恋に仕事にと悩みは尽きません。

いろんな問題が持ち上がるのですが、そのすべてには食べ物が絡んで・・・・。

タイトルから推察できるように、ある意味グルメ小説といえますかね。

稲荷寿司、甘食、ハイボール、ラー油、おせち。

それぞれの章でひとつの食べ物が取り上げられており、それが問題を解決するキーポイントとなっています。

食べ物に関してのウンチクは浅いですが、マニアックにしつこく語られてもね。

これくらいでいいかと思います。

食べ物がメインではなくあくまで小道具で、4人の友情や恋や生き方といったところがメインですから。

シリーズとしてもう1~2作読んでみたい気がしました。

ラベル:グルメ本 小説
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2014年11月02日

「8月の果て(上・下)」柳美里

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主人公の李雨哲は作者の祖父です。

日本に統治されていた朝鮮の密陽で、マラソンでの五輪出場を目指していました。

しかし1940年の東京オリンピックは幻となり、出場することはできませんでした。

もし出場すれば確実にメダルを取れたほどのランナーです。

雨哲は既婚者にもかかわらずあちこちの女に手を出し、次々と子供を産ませます。

そして弟の李雨根は左翼活動にのめり込んでいきます。

動乱の朝鮮で雨哲はどのように生き抜いていったのか。

そして弟の雨根は・・・・。

上下巻合わせて1000ページを超える大作です。

日本統治下における朝鮮人の生活が痛々しく描かれています。

だからといって日本の過去を糾弾している小説ではありません。

ありませんが、こういうのを突きつけられると言葉に詰まります。

騙されて慰安婦にされた少女の章などはたまりませんね。

李雨哲(イ・ウチョル)という朝鮮名があるにもかかわらず国本雨哲(くにもとうてつ)と名乗らざるを得なくなった、走ることがすべてだった男の人生。

そんな男と弟が生きた時代。

そんな男を祖父に持った作家の物語です。

ひたすら「すっすっはっはっ すっすっはっはっ」という言葉が繰り返されます。

内容がマラソンならそれを書いた作者もマラソン、それを読む読者もマラソンです。

しかしくどいほどに挿入されるこの「すっすっはっはっ すっすっはっはっ」が非常にリズミカルで心地よい。

そして戯曲形式だの歌詞だの日本語と朝鮮語を混在させたりだの、あらゆる手法が使われて物語は進行していきます。

ただちょっと作者の思いが激しく筆が走り過ぎ、手綱を捌き切れていない感はありますけども。

ひたすら涙を流し血を流し走り続け、最後の言葉が「自由!」。

私たち平和な国の日本人が当たり前に享受しているこの言葉のなんと重みのあることか。

柳美里、渾身の作品です。

ラベル:小説
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2013年10月25日

「青春クロスピア」唯川恵

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田村七瀬は高校2年生。

親友の小野弘美に引っ張られて男子バスケットボール部のマネージャーをやることになります。

弘美の目当ては部長の遠山俊介。

七瀬は女嫌いで知られる榊原圭吾がなんとなく気になるのですが・・・・。

大人の女性の恋愛と生き方を描く直木賞作家、唯川恵の長編デビュー作です。

ご存じない方は「えっ、これが!?」と思われるでしょうが、唯川氏はもともとコバルトでデビューされた作家さん。

そう、唯川恵、山本文緒角田光代彩河杏)はコバルト出身の直木賞作家御三家なんですね。

角田氏はあまりコバルト時代の経歴に触れて欲しくないような感じですが。

さてこの作品ですが、設定といい文章といい、いかにも当時のコバルトですね。

まさしく王道といったところ。

簡単に先が読めてしまいますし、こっ恥ずかしさ120%です。(笑)

もうちょっとひねろうよと思うのですが。

でもそんなストレートな青春小説が清々しくもあります。

今となっては貴重な一冊です。

ラベル:小説
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