2013年06月08日

「世界のひびわれと魂の空白を」柳美里

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芥川賞作家、柳美里によるエッセイ集です。

エッセイといいましても内容はかなりシビア。

まあ柳氏が書いて軽いノリになるわけはありませんが。

自身の血脈を遡り、マラソンにおいて幻のオリンピック候補だった祖父を知るために韓国を取材した話。

沖縄の在日米軍問題についても物申しておられます。

オウム真理教事件についても言及。

小説において戦後初の出版差し止め裁判となった処女作である「石に泳ぐ魚」の訴訟問題。

そしていじめや自殺といった問題。

いじめや教育問題についても書いておられますが、この何年も後にご自身が子供を授かり、その子供を虐待して世間を騒がせるとは夢にも思っていらっしゃらなかったでしょう。

現実と理想は違いますしね。

そのような社会的な問題よりも、私は個人的に評論家の福田和也氏への強烈な反論、そして同じく朝日新聞や大江健三郎氏への反論がよかったですね。

なかなかこれらの対象に真正面から立ち向かえる人なんていません。

福田氏に対してはまさにコテンパンでしたし(のちに和解。なんじゃそりゃ 笑)、大江氏はこれに対してどのような対応を取られたのか知りませんけども。

飲み屋で某文芸評論家に侮辱され、平手打ちを3回くらわして眼鏡をすっとばしたその某文芸評論家は、そのあとカウンターの隅に引っ込んだというエピソードも痛快です。

って、こんなミーハーなエピソードに反応していてはだめですよね。(笑)

でも柳美里氏、ご本人は面白くないかもしれませんが、まさに無頼派です。

ギャンブルだなんだと無頼派ぶっている男性作家以上に。

好き嫌いが大きく分かれる作家さんだと思います。

でも私は好きですね、柳美里。

これからも追いかけます。

ラベル:エッセイ
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2012年10月18日

「言葉のレッスン」柳美里

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エッセイ集です。

いろんな書物のフレーズを取り上げ、それをテーマにして書いておられます。

柳氏のエッセイを読んでよく思うのは、フィクションなのかノンフィクションなのかということ。

読んでいて短編小説的な雰囲気を感じるのです。

終り方にそう感じるのかな。

別にどちらでもいいんですけどね。(笑)

なぜ私は柳美里に惹かれるのだろうと思うのですが、やはりその真摯な姿勢ですかね。

真摯というのはちょっと違うか。

孤高な雰囲気がありますし、無頼派な印象もあります。

言動に関しましてもいろいろと話題になっておられますしね。

このエッセイ集を読みましてもどこか黄昏たところがある。

うまく言えませんが、他の女性作家にはないそんなところに魅力を感じるのでしょう。

もちろん小説も鋭敏なその感性に刺激されます。

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2012年04月11日

「息がとまるほど」唯川恵

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八つの短編が収められています。

もちろん主人公はすべて女性。

最初の「無邪気な悪魔」はオフィス用品を扱う会社に入社してから5年目のOLが主人公。

50代の上司と不倫しています。

そして同僚の男性とも付き合っています。

先のない不倫よりもプロポーズしてくれた同僚を選ぼうと決意し、上司といつものバーで最後のデートをするのですが。

それを後輩の女子に目撃されます。

取りあえずは上手くその場をしのいだつもりですが、会社で言いふらされるのではないかと気が気ではありません。

やがてその後輩が結婚することになり、主人公や不倫相手の上司、付き合っている同僚なども披露宴に招待されます。

そこで後輩がとんでもないスピーチをします。

あるバーにて「思いがけないカップルを見てしまいました」。

焦りまくる主人公と上司。

彼女たちがとったリアクション、そしてスピーチの内容とは・・・・。

最後にちょっとひとひねりありまして、それがまたピリッと辛いといいますか、ドツボといいますか。

その他「雨に惑う」なんかも女性のプライドや嫉妬といいますか男性にはないようなドロドロ感が描かれていて、女性という生き物の気持ち悪さがありました。

こういう嫉妬とか優越感、プライド、打算といったものを扱う場合、やはり男性よりも女性ですね。

作者にしても作中人物にしても。

もちろん現実においても。(笑)

ラベル:小説
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2012年04月07日

「仮面の国」柳美里

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柳美里。

在日韓国人の作家です。

97年に芥川賞を受賞されたのですが、その後のサイン会で右翼を名乗る男性からサイン会中止の脅迫をされます。

なんやら柳氏が在日韓国人であるということが原因であるような。

そんな事件をきっかけにして、柳氏は「新潮45」誌上にて小説の仕事を置いてまでも言論界で発言することとなります。

まずはやはり慰安婦問題でしょう。

サイン会中止事件をきっかけに絡んでこられた小林よしのり氏をぶった切ります。

そして神戸市須磨区の少年殺人事件。

犯人の酒鬼薔薇聖斗について柳氏は、実に独自の見解を示されます。

私などはなるほどと頷いたんですけどね。

ま、このような問題はいろんな意見があるでしょうから、誰の意見が正しいとかはともかくとしまして。

児童虐待については今から読めばイタ過ぎます。(笑)

この頃はまだ柳氏も子供がいないわけで、児童虐待についての親の罪を断罪しておられるんですよね。

でもあとになってご自分がそういうことをやらかすとは。

子供がいない立場でものを言うのと実際にその立場になってみるのとでは大きなギャップがあるということです。

しかし柳氏、批判の多い作家ですが、私は好きですよ。

以前どこかで自分が無頼派と称されることに不満を書いておられましたけども、いやいや、じゅうぶん無頼派ですってば。(笑)

今時にして珍しいくらいに。

そんな硬派な柳美里の本領発揮がこの本ではないでしょうか。

ラベル:エッセイ
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2012年01月14日

「窓のある書店から」柳美里

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エッセイ集。

そのときどきの読書や、作家としての矜持のようなものがひりひりと書かれています。

柳氏からはつねにそのようなひりひりさを感じます。

ご本人はどのように受け止められるかわかりませんけども。

それが柳美里の魅力なんですけどね。

「窓のある書店から」というタイトルは、著者がかねがね書店に窓がないのはどうしてだろうか、という疑問を持っておられたことから付けられたタイトルです。

たしかに窓のある書店ってなかなか思いつかないですね。

でもそれはそうでしょう、窓があれば本が日に焼けますから。

単純にそんな理由だと思うのですが。

しかし図書館なんかはけっこう庭に面して広い窓を設けたりしていますね。

でまあ、そんな疑問を持ちつつも、ついに窓のある書店を見つけられます。

著者はちょくちょくとその書店に通われるのですが、さてそれは実在する書店なのか。

私は著者の心の中にある店だと思うのですけどね。

なにしろ柳美里の書く文章はどこまでが真実で虚構か曖昧ですから。

もちろんそれは意図してのことですけど。

ラベル:書評・作家
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