2012年01月12日

「鳥葬の山」夢枕獏

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短編集です。

どれも幻想小説といえばいいんですかね。

表題作はチベットで鳥葬を見た主人公が、それ以降帰国してからも悪夢にうなされる話。

鳥葬というのは、遺体をハゲワシに処理させるという儀式です。

悪夢どころか現実では烏の群れに追いかけられて・・・・。

八編収録されていますが、どれもなんだかなぁ。

「超高層ハンティング」なんてまったくいやはや。

出来の悪い漫画のような駄作。

もしかしてこれはデビュー前の習作をまとめたものかと思いましたが、そうでもないようで。

思いっきり肩透かしな一冊でした。

ラベル:小説
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2011年09月22日

「私語辞典」柳美里

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辞典の形式で書かれたエッセイです。

「あ」から「わ」までの語を頭にする単語を取り上げ、柳氏独特の視点と体験によるエッセイを展開しておられます。

例えば「あ」なら合鍵。

十代の流浪な生活をしていた頃、いろんな友人から合鍵を貰い、数十個の合鍵が手元に残っているといった内容。

「お」ではずばり男。

妻子ある中年男性に魅力を感じるということが書かれています。

なるほど、氏の遍歴はたしかにそうですよね。(笑)

小説には私小説という言葉(ジャンル)がありますけども、エッセイには私エッセイという言葉はありません。

そもそもエッセイというのは私的なものですから。

しかしこれを読むとあえて私エッセイだなぁという気がするのですね。

いかにも柳美里だなと思えるエッセイ集です。

ラベル:エッセイ
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2011年04月27日

「家族の標本」柳美里

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柳美里初のエッセイ集。

ですが身辺の出来事や時事に関して書かれているわけではありません。

身辺の出来事といえばそうなのですが、ご自分の周りのさまざまな家族に絞って書かれています。

そのどれもが不幸を抱えてたりするんですね。

さすがは柳美里。

この人の書く小説の家族はすべて崩壊していますから。(笑)

読んでいて思いましたのが、これはすべて実話なんだろうかと。

ショートショートな純文学のフィクションとも思えます。

しかし最後の章に「この連載は実在する家族をモデルにしている」とあります。

私はそんな言葉を真に受けませんが。(笑)

また、編集者から「短編小説にできる素材を原稿用紙四枚のエッセイに毎週出してしまってもったいないといわれた」とあります。

たしかにそれぞれを膨らませれば、柳氏独特の小説に仕上がるでしょうね。

私がショートショートな純文学と感じたのはまさにそれです。

他人の家族を観察し書くことにより、柳氏の文学に対するテーマが鮮やかに浮かび上がっているエッセイではないでしょうか。

ラベル:エッセイ
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2010年11月09日

「雨と夢のあとに」柳美里

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主人公の雨は十二歳の女の子。

蝶を専門に撮る写真家の父親、朝晴と二人暮らしです。

台湾の山奥に撮影に出かけた朝晴は蝶を捕るのに夢中になり、穴に落ちてしまいます。

5メートルほどの穴の底には動物の白骨がいくつも重なっています。

助けを求めようにももちろん周りに人などいません。

スコールに打たれずぶ濡れになりながら、朝晴は娘の写真を取り出し心の中で一心に名前を唱えます。

雨・・・・雨・・・・雨・・・・雨・・・・雨・・・・。

朝晴から連絡の途絶えた雨は、それでも一人で生活しながら父親を待ち続けます。

10日後、学童クラブから雨が帰宅してみると父親が帰っていました。

ほっと安心し、またいつものように二人の生活が始まるのですが・・・・。

しかしどうもおかしい。

チェーンがかかったままの玄関ドアを出入りしたり、一緒に撮ったプリクラに姿が写っていなかったり。

授業参観で雨には姿が見えたのに、友達や他の保護者は姿を見なかったといいます。

隣に住む女性とも親しくなるのですが、その女性も部屋にいる気配はないのに雨親子の部屋には頻繁に訪れてきます。

雨は少しずつそのおかしさに気付きつつも、ひたすら父親との生活を楽しみ続けるのです・・・・。

全編にしっとりと静謐な雰囲気が流れていますね。

地の文と少女の独白をあえて交錯させてみたり、絵文字の入ったケイタイメールのやりとりが出てきたりと十二歳の少女の無邪気さを浮き立たせているのですが、その無邪気さが一生懸命な強がりに思えてけなげな悲しみを誘います。

なんとなく真実をわかってはいるのだけれど、認めたくない、認めてしまえば今すべてがなくなってしまう。

そんな痛々しさが溢れているのです。

そして二歳のときに自分を置いて出て行った母親のこと、その母親と朝晴との結婚に関すること、自分の出生についてのこと、お互い恋心を抱いていた男の子の転校などのエピソードも雨の周りを囲います。

そんな中で大好きな父親を頼りに一生懸命に生きていく雨の姿が心を打ちます。

裏表紙にはホラー小説と書かれていますが、これをホラーといってしまうのはちょっと違う気がします。

たしかにそのような設定であり、シビアな描写も出てきますが。

ファンタジーというほど甘い世界でもないんですけどね。

静かで、悲しく、切なく、でも美しい小説でした。

ラベル:小説
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2010年08月28日

「燃えつきるまで」唯川恵

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別れないか。

いきなりこの文章から物語が始まります。

主人公の怜子はハウジングメーカーに勤める三十一歳。

会社では五人のチームを任せられているチーフという立場です。

ひとつ年上の耕一郎と五年の付き合いですが、突如別れを告げられます。

まったく問題なく付き合ってきたつもりなのに一方的な別れの宣告。

怜子はうろたえます。

ここからどんどん怜子の生活が狂っていくのですね。

仕事も手に付かず、体にも精神にも異常をきたし始めます。

失ってしみじみと耕一郎の存在の大きさに気付く怜子。

プライドを捨てても耕一郎にすがりつきますが、耕一郎の決心は変わりません。

やがて耕一郎に恋人ができたとの話を聞き、怜子は激しく嫉妬します。

自分がこんなに苦しんでいるのに耕一郎はもう新しい女を作っているのかと。

しかも相手は妊娠までしていると。

怜子はストーカーのようになっていきます。

返していなかった耕一郎の部屋の鍵を使って部屋に忍び込んだり、そこにあった新しい恋人の部屋の鍵を盗み彼女の部屋にまで忍び込んだり。

怜子はどうなっていくのか・・・・。

とても怖い話ですね。

仕事ができて恋人もいる三十歳過ぎの女性。

それが恋人を失うことによりボロボロになっていく。

仕事だなんだといっても男を失うことにより転げ落ちてしまう女の哀れさ。

そしてその恨みが狂気となり異常な行動を取ることになる。

この怖さは女ならではでしょう。

もちろん男にもそんな変なのはいますけども。

幽霊にしてもそう。

昔から怨念として描かれるのは女の幽霊。

男の幽霊なんて滑稽ですが、女の幽霊はほんとに怖い。(笑)

動物でいうと女は猫、男は犬ですか。

化け猫というのはありますけども化け犬というのは聞いたことありませんしね。

話が逸れましたけども、やはりこの作者らしく、いわゆるキャリアウーマンと専業主婦といった対照的な立場の対比も描かれています。

どんな生き方が正解なのかは誰にもわかりませんが。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 18:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ゆ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする