2012年01月14日

「窓のある書店から」柳美里

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エッセイ集。

そのときどきの読書や、作家としての矜持のようなものがひりひりと書かれています。

柳氏からはつねにそのようなひりひりさを感じます。

ご本人はどのように受け止められるかわかりませんけども。

それが柳美里の魅力なんですけどね。

「窓のある書店から」というタイトルは、著者がかねがね書店に窓がないのはどうしてだろうか、という疑問を持っておられたことから付けられたタイトルです。

たしかに窓のある書店ってなかなか思いつかないですね。

でもそれはそうでしょう、窓があれば本が日に焼けますから。

単純にそんな理由だと思うのですが。

しかし図書館なんかはけっこう庭に面して広い窓を設けたりしていますね。

でまあ、そんな疑問を持ちつつも、ついに窓のある書店を見つけられます。

著者はちょくちょくとその書店に通われるのですが、さてそれは実在する書店なのか。

私は著者の心の中にある店だと思うのですけどね。

なにしろ柳美里の書く文章はどこまでが真実で虚構か曖昧ですから。

もちろんそれは意図してのことですけど。

ラベル:書評・作家
posted by たろちゃん at 18:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ゆ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月12日

「鳥葬の山」夢枕獏

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短編集です。

どれも幻想小説といえばいいんですかね。

表題作はチベットで鳥葬を見た主人公が、それ以降帰国してからも悪夢にうなされる話。

鳥葬というのは、遺体をハゲワシに処理させるという儀式です。

悪夢どころか現実では烏の群れに追いかけられて・・・・。

八編収録されていますが、どれもなんだかなぁ。

「超高層ハンティング」なんてまったくいやはや。

出来の悪い漫画のような駄作。

もしかしてこれはデビュー前の習作をまとめたものかと思いましたが、そうでもないようで。

思いっきり肩透かしな一冊でした。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 19:32| Comment(0) | TrackBack(1) | 『ゆ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月22日

「私語辞典」柳美里

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辞典の形式で書かれたエッセイです。

「あ」から「わ」までの語を頭にする単語を取り上げ、柳氏独特の視点と体験によるエッセイを展開しておられます。

例えば「あ」なら合鍵。

十代の流浪な生活をしていた頃、いろんな友人から合鍵を貰い、数十個の合鍵が手元に残っているといった内容。

「お」ではずばり男。

妻子ある中年男性に魅力を感じるということが書かれています。

なるほど、氏の遍歴はたしかにそうですよね。(笑)

小説には私小説という言葉(ジャンル)がありますけども、エッセイには私エッセイという言葉はありません。

そもそもエッセイというのは私的なものですから。

しかしこれを読むとあえて私エッセイだなぁという気がするのですね。

いかにも柳美里だなと思えるエッセイ集です。

ラベル:エッセイ
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2011年04月27日

「家族の標本」柳美里

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柳美里初のエッセイ集。

ですが身辺の出来事や時事に関して書かれているわけではありません。

身辺の出来事といえばそうなのですが、ご自分の周りのさまざまな家族に絞って書かれています。

そのどれもが不幸を抱えてたりするんですね。

さすがは柳美里。

この人の書く小説の家族はすべて崩壊していますから。(笑)

読んでいて思いましたのが、これはすべて実話なんだろうかと。

ショートショートな純文学のフィクションとも思えます。

しかし最後の章に「この連載は実在する家族をモデルにしている」とあります。

私はそんな言葉を真に受けませんが。(笑)

また、編集者から「短編小説にできる素材を原稿用紙四枚のエッセイに毎週出してしまってもったいないといわれた」とあります。

たしかにそれぞれを膨らませれば、柳氏独特の小説に仕上がるでしょうね。

私がショートショートな純文学と感じたのはまさにそれです。

他人の家族を観察し書くことにより、柳氏の文学に対するテーマが鮮やかに浮かび上がっているエッセイではないでしょうか。

ラベル:エッセイ
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2010年11月09日

「雨と夢のあとに」柳美里

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主人公の雨は十二歳の女の子。

蝶を専門に撮る写真家の父親、朝晴と二人暮らしです。

台湾の山奥に撮影に出かけた朝晴は蝶を捕るのに夢中になり、穴に落ちてしまいます。

5メートルほどの穴の底には動物の白骨がいくつも重なっています。

助けを求めようにももちろん周りに人などいません。

スコールに打たれずぶ濡れになりながら、朝晴は娘の写真を取り出し心の中で一心に名前を唱えます。

雨・・・・雨・・・・雨・・・・雨・・・・雨・・・・。

朝晴から連絡の途絶えた雨は、それでも一人で生活しながら父親を待ち続けます。

10日後、学童クラブから雨が帰宅してみると父親が帰っていました。

ほっと安心し、またいつものように二人の生活が始まるのですが・・・・。

しかしどうもおかしい。

チェーンがかかったままの玄関ドアを出入りしたり、一緒に撮ったプリクラに姿が写っていなかったり。

授業参観で雨には姿が見えたのに、友達や他の保護者は姿を見なかったといいます。

隣に住む女性とも親しくなるのですが、その女性も部屋にいる気配はないのに雨親子の部屋には頻繁に訪れてきます。

雨は少しずつそのおかしさに気付きつつも、ひたすら父親との生活を楽しみ続けるのです・・・・。

全編にしっとりと静謐な雰囲気が流れていますね。

地の文と少女の独白をあえて交錯させてみたり、絵文字の入ったケイタイメールのやりとりが出てきたりと十二歳の少女の無邪気さを浮き立たせているのですが、その無邪気さが一生懸命な強がりに思えてけなげな悲しみを誘います。

なんとなく真実をわかってはいるのだけれど、認めたくない、認めてしまえば今すべてがなくなってしまう。

そんな痛々しさが溢れているのです。

そして二歳のときに自分を置いて出て行った母親のこと、その母親と朝晴との結婚に関すること、自分の出生についてのこと、お互い恋心を抱いていた男の子の転校などのエピソードも雨の周りを囲います。

そんな中で大好きな父親を頼りに一生懸命に生きていく雨の姿が心を打ちます。

裏表紙にはホラー小説と書かれていますが、これをホラーといってしまうのはちょっと違う気がします。

たしかにそのような設定であり、シビアな描写も出てきますが。

ファンタジーというほど甘い世界でもないんですけどね。

静かで、悲しく、切なく、でも美しい小説でした。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 05:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ゆ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする