2009年03月25日

「めまい」唯川恵

これはホラー小説になるのでしょうか。

この作者にとってはちょっと異質なジャンルですね。

今まで読んできたのはたいがい同じパターン。

どの内容がどの作品だったかこんがらがります。

この短編集を読みまして、ああ、こういうのも書かれるのだなと。

ホラーといいましても精神的な怖さです。

人間の狂気といいますか。

死人だとか呪いだとかよりもこういうほうがよほど現実的で怖い。

どれもなかなか後味の悪い小説ですが、最後の「月光の果て」などはちょっと哀愁があったりして。

この作品集で作家としての幅を見せられましたね。

ラベル:小説
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2009年03月21日

「男」柳美里

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主人公が編集者からポルノ小説の依頼を受け、それを書き進めていくことで話が進みます。

主人公というのは作者の柳氏です。

過去の告白文といいますかエッセイといいますか、そういう形式の中にポルノ小説をはめ込んでいます。

各章は男性の体のパーツがテーマとなっており、目、耳、爪、尻・・と取り上げられています。

地の部分はほぼ作者の実体験と思われますが、しかしエッセイもブログもフィクションであると公言しておられる柳氏のこと、どこまでが現実で虚構なのか。

真正面からのポルノ小説ではなくこのような形式を選んだのは、この時点での作者のポルノ小説に対しての見解なのでしょう。

さて、次は命四部作にいってみましょうか。

ラベル:小説
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2008年09月05日

「女学生の友」柳美里

老人と女子高生たちが老人の息子に援助交際持ちかけ、恐喝してお金を巻き上げる。

なんともまあ奇想天外な内容です。

息子夫婦と暮らす老人は定年退職して時間を持て余し、自殺さえも考えたほど虚しい毎日。

孫娘とのつながりで老人は4人組の女子高生と知り合います。

女子高生4人組のひとりは父親の仕事がうまくいかず、家庭崩壊寸前。

また別のひとりは妊娠です。

子供を堕ろす費用を稼ぐため4人は援助交際を考えるのですが、老人に相談し、その老人が自分の息子を援助交際の罠にはめて金を巻き上げるという提案をし、実行します。

いつもながらこの作者の小説は、家庭が虚しい場所として書かれていますね。

ぎこちない夫婦間、そして親子関係。

とても深刻なのですが、でもこの作者はそれをシニカルに、私の個人的にはギャグにさえ映ります。

併録されているのは「少年倶楽部」という作品。

小学生たちが女性をレイプするという内容です。

柳美里、やっぱりいいなぁ。

ラベル:小説
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2008年07月09日

「瑠璃の方舟」夢枕獏

作者の自伝的な小説です。
とても青臭い内容です。
「私小説」ではなく「私小説風」とのことで、ノンフィクションを基本にフィクションを散りばめておられるようで。
どこからどこまでが実話なのかはわかりません。
大筋は作者の経歴のままでしょうけど。
この作品において主人公以外にスポットが当てられている人物は二人。
五十嵐恵子と河野城平です。
作中では五十嵐恵子は、将棋界においてアマチュア女流名人という人物。
男と女の枠を超えたような、主人公のよき親友です。
河野城平は伝説の真剣師。
プロ棋士ではなく、お金を賭けて将棋を指す、いわば裏のプロですね。
この河野城平の存在が、この作品にどっしりとした厚みを与えています。
むしろ主人公よりも存在感があり、この人物を描くことによって対比的に主人公も浮かび上がってきます。
読んでいて面白くなってきたのは、最後の4分の1あたりからでしょうか。
河野の真剣の描写あたりからです。
さすがにこういう緊迫感を書かせるとこの作者は強いですね。
この河野という人物だけでも1作品書けるのではないでしょうか。
ちなみに五十嵐恵子や河野城平、検索したところそのような人物は存在しませんでした。
モデルがいるのか、完全な虚構の人物なのか。
まあ深くは追求しないことにしましょう。

ラベル:小説
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2008年04月30日

「ゴールドラッシュ」柳美里

登校拒否の14歳の少年、知的障害者の兄、援助交際している姉、ワンマン経営でパチンコ屋を経営し愛人のいる父親、別居している母親。
この作家の書く小説はいつも家族が崩壊しています。
父親からパチンコ屋の跡取りと任命され、大人の支配人や従業員を平気で呼び捨てにして命令する少年。
そのように育てられたからでしょうか、自分の気に入らないことはすべて癇癪を起して否定するような性格です。
いわゆる「ムカツイ」て「キレ」る性格ですね。
少年は父親さえも殺してしまいます。
死体を地下室の床下にある金庫に閉じ込めての生活が始まります。
そして中学生である自分がパチンコ屋の社長として振舞おうとしますが、もちろんそう甘くはありません。
少年はだんだんと精神的に追い込まれてしまいます。
完全に教育が間違っていますね。
現実にもこのような甘やかせの例があるのでは。
小説の中にも書かれていますが、一従業員として便所掃除や玉替えからやらせればこのようにはならなかっただろうと。
当然少年は現実的にも精神的にもじわじわと追い込まれていきます。
ラストはどのようになるのかとワクワク読んでいましたら、ちょっと期待はずれでした。
抽象的といいますか、象徴的といいますか。
作者の小説にしてはそれまでよりもエンターテイメント的な要素が強いと思いますが、やはり具体的なラストにしてしまってはサスペンス小説になってしまうということでしょうか。
読み応えありました。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 20:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ゆ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする