2020年09月12日

「麻婆豆腐の女房 「赤坂 四川飯店」物語」吉永みち子

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陳建民
日本では中国料理の神様だの四川料理の父だのと呼ばれています。
しかしそれは決して大げさではなく、まだ日本人が中国料理がどんなものか知らなかった時代に日本において中国料理を広めることに大いに貢献しました。
四川省出身の建民が作るのはもちろん四川料理。
今でこそ麻婆豆腐を知らない日本人はいないと思いますが、当時は誰もそんなのを知りません。
建民が根付かせたのです。
エビチリもそうですね。
日本人に合うようにケチャップを使ってアレンジしました。
担担麺も本場では汁なしが普通ですがラーメン風に汁ありにアレンジし、現在の日本ではこれが当たり前になっています。
なので建民が日本の中国料理に与えた影響はあまりにも大きく、基礎を築いたとさえ言えます。
まさに神様であり父でしょう。
そのキャラクターは実にユニーク。
自由闊達、天真爛漫。
そんな建民を支えたのが洋子夫人です。
いやまあ、波乱万丈ですね。
よくもまあこのキャラに付いていったなと。
といってもしおらしく夫に従い、黙って尽くすような女性ではありません。
その逆。
チャキチャキのキャラでビシッと夫を締めておられます。
建民のやりたいようにさせてあげつつも。
それまで国や店を転々としていた風来坊の建民を日本に定着させ、成功に導いたのはまさに洋子夫人の尽力あってのことでしょう。
実に深い夫婦の結びつきが描かれています。
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2020年06月06日

「わが愛しの芸人たち」吉川潮

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演芸評論家の著者がいろんなところに書いた文章をまとめた一冊です。
新聞、雑誌だけでなく、落語会のプログラム、ビデオやCDの解説なども収録しているとのこと。
なので統一感というかまとまりはありませんが、そんなのは大したことではありません。
さて、紹介されているのはやはり東京の芸人が多いですね。
大阪人の私としましては上方の芸人が少ないのはちょっと寂しい。
これはもう著者が東京を拠点にして活動しておられたということでしょうがないのですが。
それでも桂あやめという女性落語家を取り上げておられますし、横山やすしなんていう誰もが知る漫才師についても書いておられます。
あとなぜか(失礼)チャーリー浜。
できれば笑福亭松鶴や桂米朝、桂枝雀らについて著者の手によりじっくり書かれたのも(あるかないか知りませんが)読みたかった。
さて、登場する人物で「ん?」と思ったのがショパン猪狩という芸人さん。
東京ではどうなのかわかりませんが、関西でこの名前を知っている人はほとんどいないのでは?
じゃあ東京コミックショウといえばどうでしょう。
若い人はともかく、ある程度以上の年齢の人なら「あ、聞いたことある」となるのでは。
ではもひとつ突っ込んで「レッドスネーク、カモン」とか言いながら、3つの壺から色違いの蛇を出す人といえばどうでしょう。
「知ってる!」となるんじゃないかと思います。
あの芸人さん、ショパン猪狩さんとおっしゃったんですね。
落語家では三遊亭圓生や古今亭志ん朝について書かれていますが、立川談志については一つの章を設けて書いておられます。
著者は談志にぞっこんだったようで。
これは著者に限らずなんですけど、談志の信者というのはむちゃくちゃ多い。
実は私はいまだ談志のよさがわからないんですよねぇ。
好みと言ってしまえばそれまでなのですが、しかしこれほど評価されている人の落語がさっぱりわからないというのも自分の感性が鈍いのかなと思ってしまったりします。
なにしろいろんな人がこの人の弟子になっているくらいですから。
ビートたけし、上岡龍太郎、高田文夫、赤塚不二夫団鬼六・・・・。
ただこれは普通の弟子入りとは違って有名人枠という上納金を払えば弟子になれるというコースだったそうですが(笑)、それでもあのうるさい上岡龍太郎なんかが弟子になるなんてのはやはり相当評価しておられたということでしょう。
著者の辛口がよく効いているのが『芸術祭』について書かれた章です。
主催している文化庁から依頼があり、審査委員を務めたとのこと。
それについての裏話を暴露しておられます。
まあ役所なんて所詮こんなもんだなという感想です。
現在人気の春風亭昇太や立川志らくについての文章もあります。
こういう人が書かれた芸人についての話。
もっともっと読みたいです。
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2020年04月27日

「満願」米澤穂信

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短編6編収録。
法律を勉強している貧乏な大学生。
主人と奥さん二人きりの家に下宿することになります。
奥さんは実にいい人で、親身になって世話してくれます。
そんな奥さんが殺人を犯してしまいました。
学校を出て弁護士となった主人公は、もちろん奥さんを弁護します。
しかし奥さんは控訴を取り下げます。
懲役8年。
彼女はなぜ控訴を取り下げたのか・・・・。(表題作)
短編集ですが、どの作品も非常に密度があります。
しっかりと人間の業といいますか、その人の内に秘めたものといいますか、人の心の奥底のようなものを描いておられますね。
で、読んでいて先が見えない。
作者はこの話をどこに持っていこうとしているのか。
これがどのような展開になるのか。
読み進めていきまして、あ、そういうことだったのか、と。
上手いと思いました。
まさに粒ぞろいの短編集です。
山本周五郎賞を受賞し、「このミステリーがすごい!」、「ミステリが読みたい!」、「週刊文春ミステリーベスト10」のすべてで1位になり、史上初の3冠達成とのこと。
他に阻止するレベルの作品はなかったのかよとも思いますが(笑)、しかしまあ読む値打ちのある一冊ではありますね。
ミステリーといいましても犯人は誰だトリックがどうだといった内容ではなく心理サスペンス的な要素がありますので、私にもじゅうぶん楽しめました。
ラベル:小説
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2019年10月16日

「わすれなぐさ」吉屋信子

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女学校に通うタイプの違う3人の少女たち。
個人主義で無口な牧子、美人でわがままなお嬢様陽子、まじめでロボットとあだ名される一枝。
なぜか陽子は牧子に興味を持ち、やたら親しく近づいてきます。
しかし自分とはまったくタイプの違う陽子に牧子は戸惑い、振り回されてしまいます。
むしろ自分は一枝と仲良くなりたいのですが。
まるでゲームを楽しむかのように牧子を翻弄する陽子。
そんな中、病弱だった牧子の母親が亡くなってしまい・・・・。
学校での少女たちの三角関係といいますか友情を描きつつ、家に帰れば愛情を注がれたことのない父親との葛藤があったりします。
少女小説らしく根本には性善説があり、悪人は出てきません。
のどかといえばのどかです。
牧子の父親は大学で教授をしている理学博士で子供たちにも非常に厳しいのですが、最後にあっけなくいい父親に様変わりしてしまいますしね。(笑)
まあ昭和初期の少女ロマンといいますか、レトロな雰囲気のある作品ではありますね。
ラベル:小説
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2018年02月22日

「サブカル・スーパースター鬱伝」吉田豪

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サブカルは40歳を超えると鬱になる。
そのようなテーゼを持つに至った著者は、実際に鬱の経験があるサブカル界の人たちにインタビューを試みます。
登場するのは、リリー・フランキー大槻ケンヂ、川勝正幸、杉作J太郎、菊池成孔、みうらじゅん、ECD、松尾スズキ、枡野浩一、唐沢俊一、香山リカ、ユースケ・サンタマリア。
最後のユースケ・サンタマリアがちょっと異質ですけども。
これは文庫版だけの増補です。
さて、日本には厄年という概念があって、男性の場合は42歳なんですよね。
つまりこの本のでいう「40歳を超えると」というのに当てはまります。
しかしこの厄年には科学的医学的な根拠はありません。
ですが40年も生きていればそろそろガタもくるでしょうし、社会人になって20年も働いていれば精神的なストレスも相当溜まることでしょう。
なので厄年というのもあながち的外れではないのかもしれません。
そういう意味ではこの本に登場する人たちもそれに当てはまっているのかなと。
ただサブカルに限らずということにはなりますが。
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