2013年08月24日

「悪魔が来りて笛を吹く」横溝正史

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東京衛生局の人間だと偽り銀座の宝石店の店員たちに毒を飲ませて殺害し、宝石を奪っていった天銀堂事件。

その容疑者とされる椿元子爵が失踪、林の中で死体が見つかります。

娘に宛てた遺書が見つかり、「これ以上の屈辱、不名誉にたえられない」と書かれていました。

その半年後、椿家で次々と殺人事件が起こるのですが、どうやら椿元子爵の影がちらついているのです。

死んだはずの椿元子爵がなぜ・・・・。

連続殺人事件の犯人は誰なのか・・・・。

椿元子爵の遺書の意味は・・・・。

今まで何冊か読んだ作品はすべて地方での事件でしたが、今回の舞台は麻布六本木です。

なので地方に残る言い伝えのようなものはありませんが、斜陽貴族やタイトルにもなっている「悪魔が来りて笛を吹く」というフルートによる音楽が物語の雰囲気を作っています。

事件を解決するのはご存知、金田一耕助。

いつもながらタイトルほど内容はおどろおどろしくないのですが、細かい文字が詰まった450ページを退屈することなく読めました。

ラベル:小説
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2013年07月25日

「食べものの話」吉本隆明

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いろんな人が食について語った本を出しておられますけども、こんな人までが出しておられるとは思いませんでした。

吉本隆明。

なんだかイメージが違います。(笑)

といっても内容はいわゆるグルメというには程遠い。

それは決して悪い意味ではなく。

子供のころ月島にあった「三浦屋の肉フライ」(レバー・カツ)が美味しかったとか、どこそこの煎餅が美味しいとか。

読んでみるといかにも著者らしい内容だなと思えてきます。

巻末には料理人の道場六三郎氏との対談も収録。

面白い顔合わせでした。

ラベル:グルメ本
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2013年05月22日

「クライマーズ・ハイ」横山秀夫

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1985年8月、群馬県御巣鷹山に日航ジャンボ機123便が墜落しました。

乗客・乗員合せて520人という史上最大の航空事故です。

地元である『北関東新聞』社内は喧騒の坩堝となります。

そこで記者をしている主人公の悠木はこの事故に関しての全権デスクに任命されます。

悠木は同僚の安西と『衝立岩』という岩壁に登る約束をしていたのですが、それどころではありません。

約束を破ることになってしまいました。

詳細がわからないながらも怒涛のごとく次々と入ってくる情報。

デスクの悠木は慌しく事件に巻き込まれていくのですが、そんな中、安西が病院に運ばれたというのです。

安西になにが?

そして史上最大の航空事故と向かい合うことになったデスクの悠木は、社内の軋轢の中でどのような記事を生み出していくのか・・・・。

実在の事故に材を取った小説です。

ちなみに作者は当時地元の新聞社で記者をしておられたとのこと。

なので実体験が元になっているんですね。

最後まで弛むことのない息詰まる緊迫感は、まさしく事故を目の当たりにしたこの作者にしか書けないものでしょう。

墜落事故を物語のメインとし、そこに新聞記者といえどもサラリーマンという組織の一員である悲哀、そして家族の絆などが描かれています。

私はこの作者の作品はまだこれで2冊目なのですが、渾身の一冊という感を持ちました。

読んでよかったと思えた小説でした。

ラベル:小説
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2012年07月28日

「獄門島」横溝正史

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瀬戸内海にある「獄門島」と呼ばれる島。

金田一耕助が死んだ戦友の遺言を持ってこの島を訪れます。

その遺言とは「獄門島へ行ってくれ・・・・三人の妹が殺される・・・・おれに代わって行ってくれ」というもの。

しかし金田一が居ながらにして三姉妹は次々と殺されていくのです。

しかも奇妙な殺され方で・・・・。

数ある横溝作品の中でこれをベスト1に推す人も少なくない作品です。

俳句にちなんだ三姉妹の殺され方のそれぞれ違ったトリック、最後まで予想のつかない犯人など。

しかし最初の犠牲者は木に逆さに吊るされていたわけですが、人間を木に逆さ吊りするなんてかなり骨の折れる作業です。

犯人はそれを一人でしかもほんのわずかな時間でやってのけています。

これがどうも納得いかない。

第二の犠牲者は釣鐘の中に置かれていたわけですが、これも時間差のトリックの種明かしを読んでみれば子供だましのような内容。

私はトリックやらアリバイやらといった話はあまり好きではないので、そのように冷めた目で見てしまうのかもしれませんが。

ただ金田一(読者)の目を最後まで犯人に絞らせない人物配置や物語設定などは見事だなと思いました。

どっしりと読み応えのある大作ではあります。

ラベル:小説
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2012年06月18日

「帽子」吉村昭

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短編九編収録です。

どれも非常に地味な話なのですが、ふっと心の琴線に触れるのですね。

表題作の「帽子」は癌に冒された妻を持つ男性が主人公。

病院からの帰り道、車から見えたビルの二階にある帽子屋に妻が興味を持ちます。

ベッドで寝たきりになっている妻に、夫はその帽子屋でさまざまな帽子を買ってきて与えてやります。

「買い物籠」では医者である主人公とその家に昔家事手伝いとして働いていた女性との話。

ある飲み屋で客とホステスとして再会します。

それをきっかけに主人公が過去を振り返り、境遇が語られます。

それだけの話です。

再会して男と女の仲になってどうのこうのとはなりません。

その他の作品も同じくでして、人生のささいな日常の中のちょっとイレギュラーな出来事を切り抜いたような話です。

地味ながら味わい深い。

はっきりとストーリーのあるエンターテイメントも読み応えあっていいですが、こういうのもまたしみじみいいいですね。

posted by たろちゃん at 04:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 『よ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする