2014年06月01日

「横道世之介」吉田修一

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東京の大学に入学することになり田舎から上京してきた横道世之介。

素朴な人間です。

なんだか成り行きでいろいろと友達もでき、サンバサークルにも入会し、高級ホテルで夜間のルームサービスのバイトをすることにもなり。

祥子という彼女もでき。

そんな世之介の青春物語です。

なんといいますか、ちょっと不思議な読み心地の小説です。

主人公の世之介は特に個性が際立っているというわけではありません。

カッコイイわけでもなく、優れた才能を持っているわけでもなく。

大きなドラマがあるわけでもありません。

でも読まされてしまうのはなんなんでしょう。

なんだかやんわりと磁気を放出するような存在なんですね。

知らず知らず魅力に引き込まれてしまう。

それは作中の登場人物にしろ読み手にしろ。

世之介の大学生生活を現在にして、いくつか突然に十数年後の話が挿入されます。

最初はなんなんだろうこの構成はと思ったのですが、なるほどこういうことかと納得。

ネタバレになるので書けませんが、こういう話もありなんだなぁと。

そのために作者はこのような構成にされたのだなぁと。

派手さはありませんが、じわじわっと染み入るようないい小説です。

ラベル:小説
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2013年09月07日

「作家の放課後」yom yom編集部編

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作家がいろんなことにチャレンジ。

それを自らレポートしておられます。

「yom yom」という「小説新潮」の別冊となる文芸誌に企画連載されていたものです。

さてさて、皆さんどのようなことにチャレンジし、その結果はいかがだったのか。

そりゃもういろいろです。

西加奈子氏は占いめぐりをしておられます。

万城目学氏はロッククライミングに挑戦。

森見登美彦氏は富士山登頂。

角田光代氏はボーイスカウトに参加・・・・。

という具合に、それぞれいろんなジャンルを体験されるのですが。

登場するのは22名。

作家以外にもデザイナー、書評家、翻訳家など。

執筆者を列挙しておきましょうか。

畠中恵、酒井順子西加奈子万城目学、辛酸なめ子、有吉玉青山本文緒中島京子、谷村志穂、角田光代森絵都森見登美彦、斎藤由香、及川賢治、小池昌代大森望、辻村深月、豊崎由美乃南アサ青山七恵朝井リョウ、岸本佐知子。

錚々たるメンバーですね。

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2013年08月24日

「悪魔が来りて笛を吹く」横溝正史

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東京衛生局の人間だと偽り銀座の宝石店の店員たちに毒を飲ませて殺害し、宝石を奪っていった天銀堂事件。

その容疑者とされる椿元子爵が失踪、林の中で死体が見つかります。

娘に宛てた遺書が見つかり、「これ以上の屈辱、不名誉にたえられない」と書かれていました。

その半年後、椿家で次々と殺人事件が起こるのですが、どうやら椿元子爵の影がちらついているのです。

死んだはずの椿元子爵がなぜ・・・・。

連続殺人事件の犯人は誰なのか・・・・。

椿元子爵の遺書の意味は・・・・。

今まで何冊か読んだ作品はすべて地方での事件でしたが、今回の舞台は麻布六本木です。

なので地方に残る言い伝えのようなものはありませんが、斜陽貴族やタイトルにもなっている「悪魔が来りて笛を吹く」というフルートによる音楽が物語の雰囲気を作っています。

事件を解決するのはご存知、金田一耕助。

いつもながらタイトルほど内容はおどろおどろしくないのですが、細かい文字が詰まった450ページを退屈することなく読めました。

ラベル:小説
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2013年07月25日

「食べものの話」吉本隆明

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いろんな人が食について語った本を出しておられますけども、こんな人までが出しておられるとは思いませんでした。

吉本隆明。

なんだかイメージが違います。(笑)

といっても内容はいわゆるグルメというには程遠い。

それは決して悪い意味ではなく。

子供のころ月島にあった「三浦屋の肉フライ」(レバー・カツ)が美味しかったとか、どこそこの煎餅が美味しいとか。

読んでみるといかにも著者らしい内容だなと思えてきます。

巻末には料理人の道場六三郎氏との対談も収録。

面白い顔合わせでした。

ラベル:グルメ本
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2013年05月22日

「クライマーズ・ハイ」横山秀夫

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1985年8月、群馬県御巣鷹山に日航ジャンボ機123便が墜落しました。

乗客・乗員合せて520人という史上最大の航空事故です。

地元である『北関東新聞』社内は喧騒の坩堝となります。

そこで記者をしている主人公の悠木はこの事故に関しての全権デスクに任命されます。

悠木は同僚の安西と『衝立岩』という岩壁に登る約束をしていたのですが、それどころではありません。

約束を破ることになってしまいました。

詳細がわからないながらも怒涛のごとく次々と入ってくる情報。

デスクの悠木は慌しく事件に巻き込まれていくのですが、そんな中、安西が病院に運ばれたというのです。

安西になにが?

そして史上最大の航空事故と向かい合うことになったデスクの悠木は、社内の軋轢の中でどのような記事を生み出していくのか・・・・。

実在の事故に材を取った小説です。

ちなみに作者は当時地元の新聞社で記者をしておられたとのこと。

なので実体験が元になっているんですね。

最後まで弛むことのない息詰まる緊迫感は、まさしく事故を目の当たりにしたこの作者にしか書けないものでしょう。

墜落事故を物語のメインとし、そこに新聞記者といえどもサラリーマンという組織の一員である悲哀、そして家族の絆などが描かれています。

私はこの作者の作品はまだこれで2冊目なのですが、渾身の一冊という感を持ちました。

読んでよかったと思えた小説でした。

ラベル:小説
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