2019年12月17日

「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」渡辺一史

CIMG3563.JPG

筋ジス。
筋ジストロフィーという病気の略で、筋力が低下し自力で体を動かすことができなくなり、呼吸さえできなくなってしまうという難病だそうです。
そんな難病を抱えた重度の身体障害者が鹿野靖明氏です。
彼の周りには24時間体制で大勢のボランティアがいます。
著者は自らも取材を兼ねたボランティアとなります・・・・。
読む前に「だいたいこんな内容なんだろうな」と思っていたのが見事に覆されましたね。
難病を抱えた障害者の苦労、それを世話する人たちの現実。
そういうのが描かれているのだろうと思っていました。
もちろんその通りなのですが、それを超越しているといいますか。
とにかく鹿野氏のわがままっぷりといったら。
しかも相手は無償のボランティアです。
鹿野氏は容赦なくボランティアたちに自分の世話を押し付けます。
上手にできない人には「帰れ!」と怒鳴りつけます。
自分は世話されているのではなく、ボランティアたちに介護の仕方を教育してやっているのだとさえ言います。
それでもなぜ大勢のボランティアたちが鹿野氏に付いていくのか。
鹿野氏の「生きたい!」という思いは半端ではありません。
「人様に迷惑かけて申し訳ない、いっそのこと尊厳死したい」などという気持ちはこれっぽっちもありません。
自分は他人に介護してもらわなくては生きていけない。
それならば堂々と介護してもらおう。
それにより、障害者を介護する技術を身に付けてもらおう。
遠慮していては障害者の本音が伝わらない。
ある意味自分が実験台となり、障害者の立場から介護とはこのようにすべしというのを伝道しているわけですね。
ボランティアには医大生、看護学生、福祉系の学生などがいます。
なるほど彼らにとっては目からうろこの研修となったのかもしれません。
もちろんやってられるかと辞めていく人もいたようですが。
障害者だから、他人に迷惑をかけるからなどと委縮などしません。
とにかく生き続ける。
そのためには片っ端から他人に介護をしてもらう。
なんという生に対する執念でしょう。
これほど生というものを大切に思い毎日を過ごしている健常者が果たしてどれだけいることか・・・・。
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『わ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月23日

「ひらいて」綿矢りさ

CIMG3507.JPG

そこそこ成績もよくクラスでも目立つタイプの愛が好きになったのは、あまりカッコよくもない地味な男子です。
しかし彼には手紙をやりとりする女子がいました。
嫉妬する愛。
そんな愛が取った行動は、彼から彼女を奪い取ることでした・・・・。
何冊かこの作者の作品を読んでいますけども、嫉妬や底意地の悪さというものをけっこう感じます。
そんな自分に対しての苛立ちとか自虐願望とか。
話題になった「蹴りたい背中」なんかでも、主人公の女子がにな川という男子を見ていたら背中を蹴飛ばしたくなって実際蹴飛ばすんですよね。
自分に対するいら立ちを彼に被せてそのような行動を起こしたと私は読んだのですが。
「夢を与える」という作品も、子役のアイドルが芸能界という大人の世界に違和感を持ち自堕落的に人生をドロップアウトしていきますし。
本作でも主人公は彼の気を惹きたいがために彼女を傷つけ、結局はすべてそれが自分を傷つけているんですね。
成績も落ちていき、クラスでも浮いた存在になってしまいます。
折るという字は祈るという字に似ている、というフレーズが作中に出てくるのですが。
最後に愛が折った鶴をほどいていくシーンがあります。
愛は何を祈って鶴を折り、何を解放したのでしょうか。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『わ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月11日

「どこへ行っても美味珍味」渡辺文雄

CIMG3501.JPG

食通として知られ、「くいしん坊!万才」の初代リポーターとしても有名な著者。
この本は日本各地の食べ歩きエッセイであり、また旅のエッセイでもあります。
旅も食べ物もやはり出会いですよね。
ただ単にこんなの食べましたでは面白くもないし味わいもない。
いろんな人に出会い、地元ならではの食べ物を紹介され、味わい、唸る。
その土地に行かなければ出会えない食材や料理に出会うのも旅の楽しみでしょう。
しかし旅番組やグルメ番組などで食べ歩くのもなかなか大変なようで。(笑)
ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『わ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月20日

「おでんの汁にウツを沈めて 44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー」和田靜香

CIMG3141.JPG

著者の本業は音楽ライター。
しかしCD不況もあり、レコード会社や音楽雑誌からの仕事依頼が激減。
というわけで、44歳にしてコンビニ店員デビューとなりました。
そのコンビニというのがマダム店長を始めとして、ベテランのオバチャンたちがずらりと勢ぞろい。
そんな中でうまくやっていけるのか・・・・。
日頃皆がよく利用するコンビニ。
特にその仕事について意識することってないですよね。
コンビニに行けばいつもそれなりに商品がそろっていて、店員さんがいて、レジで対応してくれる。
しかしそんな当たり前の光景も店側からすれば実はいろんな悪戦苦闘があるわけで。
といったコンビニの裏話を書いたお仕事エッセイですね。
どんな仕事もそうでしょうけど、表からはわからないいろんな苦労があります。
それを面白おかしく笑いと涙(?)で綴った一冊。
これを読めば明日から客としてのコンビニでの振る舞いが変わるかも。(笑)
ラベル:エッセイ
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『わ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月27日

「かわいそうだね?」綿矢りさ

CIMG3076.JPG

樹里恵は百貨店の婦人服ブランドショップで働く28歳。
大阪出身で現在は東京在住。
アメリカに住んでいて日本に帰ってきた隆大という彼氏がいます。
その隆大がアメリカにいたときに知り合った元カノのアキヨを自分のアパートに居候させると言い出すのです。
日本に帰ってきても居場所がなくかわいそうだからと。
もちろん樹里恵はいい気分ではありません。
しかしなんとか物分かりのいい彼女を演じて我慢するのですが・・・・。
ま、三角関係ですね。
いまいち煮え切らない彼氏、男好きのするちょっと頼りなくだらしない系な元カノ。
最後に町田康の小説を彷彿させるごとく大阪弁をまくし立てブチ切れる樹里恵がお見事。(笑)
もうひとつの収録作は「亜美ちゃんは美人」。
皆から注目される亜美ちゃんとさかきちゃんは高校時代からの友達。
人のいい亜美ちゃんはさかきちゃんにどっぷりと信用を置いているのですが、さかきちゃんはどこか冷めた目で亜美ちゃんを見ています。
やがて二人は大学生になり、社会人になり、さかきちゃんは亜美ちゃんに結婚相手を紹介されます。
これがとんでもない男で・・・・。
なんでこんないい女がこんなクズみたいな男と・・・・なんてよくあります(?)よね。
そんなパターンなわけですが、でもなんといいますか、亜美ちゃんの純度といいますか天然度といいますか、最後に愛は勝つみたいな。
突き抜けたところにも着地点はあるのだなと。
どちらも面白かったです。
この作者の作品はデビュー作から順を追って読んでいますが、私的にはだんだんとよくなっているように思えます。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『わ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする