テレビの「くいしん坊!万才」の初代レポーターだった俳優・渡辺文雄氏。
食通としても知られた人でした。
5分間の番組では伝えられなかったことを本にしたとまえがきにあります。
読んでいて味わい深いのは、決して食べ物自慢でないところ。
あんな店行ったこんな物食べたというのを自慢げに語る人がよくいますが、そのような嫌味はありません。
ほんとに食べることがお好きなんだなぁということが伝わって来ますし、食べ物を通じて人との出会いが描かれているからこそなんでしょうね。
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テレビの「くいしん坊!万才」の初代レポーターだった俳優・渡辺文雄氏。
食通としても知られた人でした。
5分間の番組では伝えられなかったことを本にしたとまえがきにあります。
読んでいて味わい深いのは、決して食べ物自慢でないところ。
あんな店行ったこんな物食べたというのを自慢げに語る人がよくいますが、そのような嫌味はありません。
ほんとに食べることがお好きなんだなぁということが伝わって来ますし、食べ物を通じて人との出会いが描かれているからこそなんでしょうね。
著者は元「宮内庁管理部大膳課厨司」。
えらい大層な肩書きですが、タイトルからもわかるように天皇陛下のお食事を作っておられたのですね。
昭和天皇、今上天皇、そして皇太子殿下と三代に渡ってお仕えされたそうです。
昭和天皇はどのようなお食事を召し上がっておられたのか。
なかなか興味あるところです。
皇室だからといって決して贅沢な食材ばかりではなく、さつまいもやら鯖の味噌煮やらといった庶民的なメニューもよく召し上がっておられたようです。
ただし料理にかける手間がめちゃくちゃに細かい。
骨はすべて抜き取るとか、食材をすべてきっちりと同じ大きさに切りそろえるとか、普通の店でやっていたらとんでもない手間がかかって相当な値段を取らなければ割に合いません。
ホテル出身の著者が大膳課に入った当初、まったく自分の技術が通用せず自信が消え失せてしまったとか。
そんな厨房内での内情やら、そしてやはり昭和天皇や皇太子殿下のお人柄を紹介したいろんなエピソードがいいですね。
著者は本当に天皇陛下、そして皇室を敬愛しておられたことがよく伺えます。
皇室の方々の微笑ましく心優しいお人柄のエピソードには私も親しみを感じました。
残念ながら著者の渡辺誠氏は2003年に55歳の若さで急逝しておられます。
食通として知られた俳優の渡辺文雄のエッセイです。
つねにあちこちを旅しておられたようで、その先々での食べ物との出会いを楽しく書いておられます。
もちろんどれも都会にいては口にできないような、その土地ならではの物ばかり。
それは鮮度のせいもありますし、ローカル色の強い素材のせいであったりします。
あの有名店で食べた、何百軒何千軒食べ歩いたといったような俗物的な内容ではなく、その土地の食文化に直接触れるこういう食べ歩きこそが贅沢であり食を楽しみ愛することなんだなと感じますね。
そして決して食べることだけではなく、その土地の人との出会いや心のふれあいも大切にしておられます。
著者のように全国を旅するわけにはいきませんので、この本を読んで気分だけでも舌つづみを打ちました。(笑)
主人公の女子高生はクラスや部活にあまり馴染めない存在です。
そんな主人公にとってクラスメート(男子)の「にな川」は、同じようなタイプの気になる存在。
オリチャンという人気モデルのファンな彼は、授業中にそのモデルが載っている女性ファッション誌を拡げているようなオタクです。
実物のオリチャンに会ったことがあるという主人公はその話題がきっかけで彼の部屋に招待され、なんとなくな付き合いが始まります。
2回目に彼の部屋を訪れたとき、彼はオリチャンのラジオ番組をイヤホンで聴き始めます。
目の前に彼女の存在なんかないかのように。
そんな彼の後姿を見て「この、もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい。痛がるにな川を見たい」という欲望に駆られ、主人公は彼の背中を蹴飛ばすんですね。
タイトルはここからきているわけです。
蹴られた「にな川は前にのめり、イヤホンは引っぱられCDデッキから外れて、ラジオの曲が部屋中に大音量で鳴り響」き、「驚いた瞳で、彼は息をつめて私を見つめている」という描写には、絵が浮かんできて笑ってしまいました。
笑う箇所かどうかわかりませんけども。
なんで彼女が彼の背中を蹴ったかですが、解説の斉藤美奈子は一種の性衝動と読みます。
たしかに高校生の男女が二人きりで部屋にいながら、エロい雰囲気にはならないんですね。
どちらも頑なに自分の殻にこもるタイプ。
普通の青春小説ならどちらともなく求め合い・・・・といった展開になるのでしょうが。
私は「相手に自分の姿を見ていたたまれなくなった」という気がしました。
自己嫌悪をある意味自分と似たようなタイプの相手にぶつけたのではないかと。
自分に対する苛立ちやもどかしさがそのような形になって噴出したというような気もします。
まあ読み方は人それぞれとしまして、作者にとっては「インストール」に続く第二作。
デビュー作よりはよかったと思います。
ただどちらも閉鎖的といいますか、広がりがない気がしますが。
著者は宮内庁大膳課に勤務され、皇太子殿下や同妃殿下の西洋料理部門の主厨を勤められた方です。
現在は宮内庁を退官され、大学の講師や食文化研究家としてご活躍なさっておられるとか。
第一章は著名人を自宅に招き、食事をしながらの対談です。
そしてその場にふさわしい音楽。
ゲストは大林宣彦・赤川次郎、久石譲・金洪才、妹尾河童・澤地久枝。
第二章では宮中のエピソードが語られます。
一般の料理店の料理人とは違い、皇室や国賓の方々をおもてなしされた裏話など。
そしてマナーについても触れておられます。
皇室の方が洋食を召し上がるとき、ひと口残されるとのこと。
それは上流社会の礼儀なんでしょうか。
答えを読みまして、皇室の方のお心遣いに納得した次第です。
ベルギー国王の弟殿下のエピソードもそう。
相手のミスを何事もなかったかのように、さりげなくフォローされる。
上辺だけの知識でどうこうではなく、こういうのをマナーといいますか、教養というのでしょうね。
いい勉強になりました。