今まで時代小説にはまったく興味なかったのですが、最近なぜか読んでみたい気分になりまして。
何冊か購入しまして、まず読んでみたのがこれです。
主人公の文四郎は十五歳。
その少年の成長が描かれています。
年齢なりの武士としての矜持、友情、恋愛。
現代小説では味わえない清々しく真っ直ぐなその生き様に、身の引き締まる思いがしました。
きっちりと話の山もあります。
奉納試合での剣術のやりとりにはわくわくしましたし、後半の陰謀に巻き込まれ狼藉者との切り合いには息を呑みました。
そして二十数年後、郡奉行となった文四郎。
殿の妾となり、今や尼になろうとする幼馴染みのお福との再会。
「文四郎さんの御子が私の子で、私の子供が文四郎さんの御子であるような道はなかったのでしょうか」
「それが出来なかったことを、それがし、生涯の悔いとしております」
このやりとりにはぐっときましたね。
涙が出ました。
いやあ、よかった。
実にいい小説を読ませていただいたと余韻に浸りました。