主人公は元刑事の私立探偵。
その探偵の下に愛人の弟に死んで欲しいという願いを持ってある女がやってきます。
愛人の弟にレイプされ、それをネタに脅されているのだと。
しかしそのようなことに関しては何も役に立てないと断る探偵ですが、結局は関わりあうことになります。
実際にその弟という人物に会ってみるとろくでもない男です。
「お前を殺しすしかないな・・・・」
おもわずそう言ってしまった探偵ですが、逆に半殺しの目にあわされます。
もちろんその礼はしなければなりません。
しかし調査を進めるうちに意外な事実が判明します・・・・。
作者の第2作目の作品です。
3章に分けられていますが、それぞれ独立した話とも読める連作形式です。
第一話は1人称、第二話は3人称、そして第三話はまた1人称。
そしてエピローグは・・・・。
第二話では矢能という暴力団幹部が出てきます。
最初は敵対的な関係なのですが、やがて主人公といいコンビになりそうな気配になってきます。
しかし・・・・。
前作では漫画家から小説家への転向第1作ということでちょっと力が入りすぎではという感想を書きましたが、いやいや、そうではなくてこのテンションが作者の通常レベルなのかと。
とにかくひたすら緊迫した雰囲気を保っています。
元刑事の私立探偵という設定にしろ文体にしろかなりハードボイルドを意識していますが、しかし設定に頼らず主人公のキャラがいい。
小学生の女の子にもきっちりと敬語を使う律儀さ、どれだけ痛い目にあっても自分が納得いく答えを見つけるための行動力。
そんな主人公の一途さに思わず引き込まれてしまいます。
容赦のないバイオレンスあり、ちょっと心が温かくなるような小さなロマンスあり、ぐっと涙をこらえるような場面あり。
最後までひたすら読ませる1級のエンターテイメントでした。
堪能です。
もっと評価されるべき作家ですね、木内一裕。