2020年01月14日

「跳べ、ジョー! B・Bの魂が見てるぞ」川上健一

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スポーツをテーマにした8つの短編です。
テニス、野球、ボクシング、ラグビー、アイスホッケー、バスケットボール。
表題作はバスケットボールです。
身長175cmしかない黒人のジョー。
しかしひたすらダンクシュートにこだわります。
白人への捌け口をバスケットリングにぶつけるかのように・・・・。
私がいちばんよかったと思ったのは「熱いトライ」です。
タイトルからわかるようにラグビーをテーマにしています。
ワントライも上げることができずラグビーの試合中に亡くなった父親の遺志を息子が受け継ぎます。
ベタな話ではあるのですが、それでも読んでいて感情移入してしまいました。
試合の描写が実に熱い。
ただ表題作もそうなんですけど、一人称で書かれている作品の文章がちょっと気取りすぎで鼻につきます。
まあデビュー作品集ということで、それもまた初々しさでしょうか。
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2020年01月12日

「あのひとは蜘蛛を潰せない」彩瀬まる

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28歳の梨枝は24時間営業のドラッグストアの店長。
躾に厳しい母のもとで実家暮らしです。
男性経験もなかった梨枝ですが、ある日入ってきた大学生と付き合い始めます。
それがきっかけでしょうか、母に反発し、いよいよ一人暮らしを始めます。
しかし母から離れてみて、自分はいかに母の躾を叩き込まれていたか、ことあるごとに気付かされます。
失踪した中年店員の柳原、彼氏の三葉君、来店するたびにバファリンを買っていく鎮痛剤依存症の“バファリン女”、義姉で幼馴染みの雪ちゃん、いろんな人たちと関わりながら梨枝もひたすら毎日を過ごしていきます・・・・。
梨枝の現状というのがなんといいますか非常に宙ぶらりんなんですね。
ドラッグストアの店長といっても、あちこち主力でない店に回されています。
自分に自信がないので、売り場のレイアウトなども部下に意見を聞かないと不安で独断による決定ができません。
家庭でも28歳という年齢でいまだ母親の呪縛から抜けられていない。
夜勤から帰ってきてもきっちりと栄養のバランスを考えた朝食が用意されています。
家の中はつねに母により掃除が行き届いています。
一人暮らしをしたいと母親に伝えたときは、あんた一人で何ができるのかと罵倒されます。
それでも飛び出して一人暮らしを始める。
うんうん、そんなもんです。
今までできなかった、していなかったことでもいずれはしていかなければしょうがない。
人間関係にしても、立ち向かっていかなければしょうがない。
いろんな人に対して、いろんな状況に対して。
そんな梨枝の成長の物語といえば大げさですね。
少しずつ変化していく日々です。
タイトルの「蜘蛛を潰せない」というのは失踪した柳原さんのエピソード。
深夜の仕事中、レジカウンターに現れた小さな蜘蛛に戸惑う柳原さん。
梨枝がティッシュにくるんで店の外に放ちます。
そんな柳原さんがある日、若い女と失踪する。
柳原さんは最初の章に出てくるだけです。
蜘蛛は最後の章にも出てきます。
平気で蜘蛛を潰せるアルバイトの小林君の前に。
ですが梨枝は「潰さないで」と蜘蛛を外に逃がしてやります。
ラベル:小説
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2020年01月10日

「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」七月隆文

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京都に住む大学生の南山高寿は、電車の中で女の子に一目惚れしてしまいます。
思い切って声を掛け、付き合ってもらえることに。
彼女の名前は福寿愛美。
高寿は何度かデートして会話した中に、どうも腑に落ちない愛美の言葉に気付きます。
なぜか知るはずのないことを知っている。
実は彼女は別の世界からやって来て、この世界とは時間を逆に進む世界の女性でした・・・・。
ちょっと話がややこしいです。(笑)
彼の時間は未来へと進み、彼女の時間は過去へと進む。
そのすれ違いの期間を描いています。
普通、恋愛して付き合うとなると、二人で時間的に同じベクトルを向いて一緒に思い出を築き上げていきます。
一緒に歳を重ねていきます。
でもこの場合、どんどん遠ざかっていくのですね。
電車がすれ違うように。
そのすれ違っている時間が彼らのすべてなんです。
これはせつないですね。
やり切れません。
しかし二人は目一杯その時間を大切に過ごします。
現実離れした設定ではあります。
ですが、愛する人との今この時間。
それがどれだけ貴重で、その瞬間しか体験できないものであることか。
考えさせられる作品でした。
ラベル:小説
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2020年01月08日

「評論家入門 清貧でもいいから物書きになりたい人に」小谷野敦

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世の中いろんな評論家がいますよね。
なにか事件があるとそれに見合ったジャンルの評論家がすかさずテレビに登場します。
戦争が起これば軍事評論家、飛行機事故があれば航空評論家とか。
他にもいろんな評論家がいます。
料理評論家、美術評論家、野球評論家、などなど。
さて、この本でいう評論家とは主に文藝に対しての評論家ですかね。
あとは社会学とか心理学とか、これも文藝評論の流れという感じで。
まあ評論家なんて自分で名乗ればとりあえずは今日からなれるんですけどね。
しかし世間に認められるにはある程度の実績がなければなりません。
やはりまずは著書でしょうか。
本を出しませんとね。
しかしこれがなかなか。
出したからといって売れるわけでなし。
というわけで、サブタイトルにもありますように「清貧でもいいから物書きになりたい人に」となるわけです。
著者の実体験を踏まえ、評論というものについていろんな角度から考察しておられるのですが、これらを飲み込んで、なおかつ評論家、物書きになりたいか。
たぶんそれでもなりたいという人はかなりの数いると思います。
貧乏でもいいから文章を書いてなんとか生計が立てられるのならそれでもいい、と。
でも現実はそんなに甘くないです。
生計を立てられるほどの収入を得ることさえ相当難しいです。
大学教授みたいに本職があって、サブの肩書でなんたら評論家ならいいですけどね。
まったくのフリーで評論家の看板をあげて生活するのはよほどの人でないと。
評論家じゃないですけど、人気作家の伊坂幸太郎氏
サラリーマンをしておられたのですが、小説1本でやっていこうと会社を辞めたとき担当の編集者から「なんで辞めたんですか」と心配されたそうです。
つまり小説を書いて食べていけるなんてほんの一握りの人だけなんですね。
あの伊坂幸太郎でさえ担当編集者は今後の生活(収入)を危惧したわけです。
ましてや評論家なんて。
それでも物書きになりたい人は、ぜひ本書をお読みください。(笑)
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2020年01月06日

「H(アッシュ)」姫野カオルコ

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10編収録の短編集です。
アパートの壁に穴を開け、隣の空室を覗き続ける男性。
その空室に女性が入居してきます。
セックスなどしそうもない清楚な雰囲気の女性です。
男は勝手に彼女を菜穂子と名付け、覗き続けます。
しかしそこに中年男がやって来て、嫌がる彼女を無理やり・・・・。(エンドレス・ラブ)
自分の店を持つことを夢見ている女性美容師のもとに客としてやって来る友人のミア。
主婦で子供もいて飲食店でパートをしているくせに肩書が『舞台人』な女。
白塗りしてわけのわからないのセリフと踊りを演じているだけの自己満足なショウをやっているだけの女。
そんなミアが大嫌い・・・・。(鞄の中の妖精)
などなど。
う~ん、なんといいますか、収録作すべてではありませんが、けっこうバカエロですね。(笑)
「正調・H物語」は平家物語のポルノ仕立てのパロディですし。
そのあたりのバカバカしさは森奈津子に似たものがあります。
まあ楽しめましたけど、なんだかあと一歩な感の作品集でした。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『ひ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする