2019年11月25日

「性人伝」いその・えいたろう

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“性”について極めた10人の男性へのインタビューです。
本妻、妾、合わせて15人の女性と同時進行で“性活”する男性。
84歳で週2回とか。
女性の汚れ下着を収集し、その数およそ1200枚という人もいらっしゃいます。
といっても決して下着泥棒で集めたのではなく、街中で声を掛けて貰ったといいますから、むしろその交渉術のほうがすごいのでは。(笑)
スワッピング1000回以上のご夫婦なんてのも登場します・・・・。
いやしかし。
どんな世界にも達人といいますか、その道を極めている人というのはいるのですねぇ。
私もスケベにおいては相当なものと自負しておりますが(恥)、こんな人たちを見せられたら。
性欲と双璧である食欲の場合、それを自慢する人は老若男女数多い。
グルメだ食通だと皆誇らしげです。
しかしそんな人たちも“性”に関しては口をつぐみます。
世間では“食”は陽であり“性”は陰という認識でしょう。
“性”について公に語るのははしたないと。
この本に登場する人たちはそんな陰の趣味を堂々と恥じることなく実践しておられる。
いや、趣味ではなくライフワークであり人生そのものですね。
まことにあっぱれです。
着飾って高級なレストランで食事している男女も、いざ密室に二人きりとなると本能むき出しで性欲を堪能しています。
しかし日常ではそんなことしてませんというような顔をし、このような人たちの性癖に顔をしかめたりしてはいないでしょうか。
同じですよ、食を語るのも性を語るのも。
世の中に食通がいるように、性通がいてもいいじゃないか。(笑)
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2019年11月23日

「33年後のなんとなく、クリスタル」田中康夫

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1980年に発表された小説、「なんとなく、クリスタル」
当時はずいぶんと話題になりました。
それから33年。
大学生だった登場人物たちも今は50代。
ヤスオは主人公だった由利と再会し、当時の記憶と現在が入り交じります・・・・。
この小説の主人公ヤスオというのはもちろん作者の田中康夫氏です。
どこまでが実話かはわかりませんが、長野県知事時代のことなどもきっちりと記述しておられます。
知事以外にも参議院議員、衆議院議員、などを経歴してこられたわけですが、しかしこの小説の肩の力の抜け感はどうよ、と思いますね。
ことさらそれを誇示するわけでなく、あくまでもさらり淡々と書いておられます。
もちろんそれがテーマの小説ではありませんので当然ですけども。
あくまでただの経歴です。
今、目の前の快楽を享受する若者たちを描いた前作と、そのスタンスはなんら変わりないように思えます。
と言いましてもこの国の未来を憂う気持ちはひしひしと伝わってきますが。
前作は中身がないだなんだの評価も飛び交いましたが(私もそう思ってました)、今から思えばさりげないけどとんでもなくしっかりきっちりと日本の現在と未来を書いておられたんですよね。
最後に日本の出生率のデータが記されているのですが、私など当時はその唐突な提示に「なんじゃこりゃ」と思ったものです。
とんでもない。
今後の日本の未来をビシッと突き付けておられたわけです。
本作のラストはヤスオが黄昏時の光に向かい歩み出すシーンで終わります。
「微力だけど無力じゃない」という言葉が作中に何度か出てきます。
それぞれが自分の生き方で歩んでいく。
その結果・・・・まだ希望はありますよね。
ラベル:小説
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2019年11月21日

「酒に謎あり」小泉武夫

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この地球上、酒を持たない民族はほとんどいないそうです。
そう考えると不思議な気がしますね。
大昔の文化の交流がなかった時代にも、地球のこちら側とあちら側で酒という飲み物が発生していたということですから。
どこかに発生源があり広まったわけではなく、自然と各地で誕生したんですね。
最初は偶然の発酵によるものだったはずですが、人間はそれを見逃さなかった。
つまりそれほど酒というのは人間にとって魅力ある飲み物だということです。
人種に関係なく。
で、当然その土地に応じた酒が発展していくわけです。
日本なら米を使った酒、フランスなら葡萄とか。
そんな風に人間と酒は大昔から切っても切れない関係なわけですが、この本では『味覚人飛行物体』、『鋼鉄の胃袋』、『発酵仮面』など様々な異名を持つ小泉センセイが、酒の歴史を縦軸に世界各国の酒を横軸に、縦横無尽に酒について検証しておられます。
身近な存在でありながら意外と知られていない酒についての話。
例えば『酒』という言葉はどこから来たのか、といういきなりなストレートパンチでこの本は始まります。
酒飲みを自負する人でもほとんどが答えられないでしょう。
なるほど、まさに「酒に謎あり」です。
ラベル:グルメ本
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2019年11月19日

「東京・地震・たんぽぽ」豊島ミホ

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東京で震度6強の大地震が発生。
被災したさまざまな人たちを描いた連作短編集です。
東京で大地震というとSFやパニック小説を想像しがちですが、作者は豊島ミホ。
もちろんそのような話にはなりません。
極限状況でありながら、しかしそれぞれの人にとってはあくまで日常なんですね。
ヒーローやヒロインが活躍するようなドラマなんかではないわけです。
例えば最初の話に出てくる主人公。
地学科の大学院に進んだ友人が何気なく言います。
「十六日に東京に大地震が来るらしい」
重要機密だが、政府関係者にはもう伝わっているらしい。
その間、田舎に帰ったらと友人はアドバイスします。
まさかと思いながらも、まあ話に乗ってみてもいいかと帰省する主人公。
実際に大地震はやって来て東京は壊滅状態。
結果的に自分は友人を東京に残して逃げてきたことになります。
愕然とする主人公。
だからといって彼が突然ヒーローになりなにか大活躍するわけではありません。
現実としてただ受け入れるしかないわけです。
子供と公園にいて生き埋めになってしまった主婦の話も痛々しくつらい。
ただ淡々とした一犠牲者です。
その他、このような状況の中でも人々は日常をこなしていかなければならないんだなという話です。
つらい現実を受け入れつつ。
へたなパニック小説なんかよりも、よほど被災の辛さや痛みを感じさせる小説集だと思います。
ラベル:小説
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2019年11月17日

「テロリストのパラソル」藤原伊織

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全共闘で活動し、思いがけない事故で人を死なせ、指名手配になっていた島村。
事件は時効を迎えていますが、今も名前を変えてひっそりと暮らしています。
現在はアル中のバーテンダー。
ある日、昼の公園でいつものように酒を飲んでいたら爆弾テロがおきます。
事件に巻き込まれるとやっかいなことになると判断した島村はとっさにその場を離れるのですが、ウイスキーの瓶とカップを忘れます。
この事件に関係ないとはいえ、それらに残された指紋から自分のところに警察がたどり着くのは時間の問題です。
やがて島村は知らない間に自分がこの事件に巻き込まれていることに気付きます。
学生時代一緒に活動していた仲間や恋人がこの事件に巻き込まれ死亡していたり、ヤクザが関わってきたり、昔の恋人の娘が訪ねてきたり。
島村の生活が一変します。
自分に関わる人物が被害者の中にいるということで、島村は犯人を捜すことになるのですが。
犯人はどのような目的でこのようなことをしたのか。
単なる無差別なテロなのか。
じわじわと真実に近づいていくのですが・・・・。
そうですね、5分の4くらいまではけっこうワクワクしながら読みましたかね。
でもラストの展開がどうも。
偶然も含めて何から何まで一か所に収斂し過ぎです。
いくらなんでもの感ありです。
伏線の回収による収束感とはまた違うんです。
ご都合主義の羅列です。
途中まではよかったのに最後で白けてしまいました。
ラベル:小説
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