2020年01月20日

「太陽がイッパイいっぱい」三羽省吾

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3流私立大学4回生のイズミは解体現場で働いています。
もともとのきっかけは当時付き合っていたフェラチオ上手な彼女がどうしても海外旅行に行くと言い出し、しょうがなくピザ屋のバイトを辞めて稼げる日雇いに出たのでした。
結局彼女とは別れたのですが、現場で汗を流し、仕事帰りに飲むビールの旨さが病みつきになり、フェラテクだけで付き合っていた彼女などどうでもよくなり、大学もほったらかしにして「マルショウ解体」の一員となります・・・・。
ナニワのガテン系小説ですね。
作者は実際に大学卒業後就職した会社を3年で辞め、肉体労働のバイトをしておられたそうです。
なので解体現場の描写が実にリアル。
作業はもちろん、体の節々の痛みまでも伝わってくるようです。
仕事の後ガード下の立ち飲み屋で仲間とウダウダしゃべりながら飲むなんてのも実感ありますね。
その仲間というのが巨漢でマッチョなカン、肉体労働者には見えないイケメンのクドウ、会社をリストラされたワケありのハカセなど、「マルショウ解体」のメンバー。
これらキャラクターたちが実にいい配分です。
特にカンは準主役。
この男が起こす騒動がこの物語のメインだったりします。
夜のミナミで暴れて走り回るシーンなど、毎日のようにこの界隈を徘徊している私にとっては光景が目に浮かびましたね。
喧嘩のシーンも迫力ありました。
女の子も登場しますし、「マルショウ解体」の経営状態の問題など、いろいろとエピソードも盛り込まれています。
いいエンターテイメント小説でした。
いつも書店で目にしていた本なのですが、なんだかタイトルが軽くて手を出さなかったんですよね。
なぜか手を伸ばし購入したのですが。
解説が北上次郎だったというのも多少影響あるかもしれません。
氏の好みはけっこう私と合いますもので。
読んでみて大正解でした。
ただひとつ難癖をつけるならば、男性器を“ちくわぶ”と例えた章。
大阪でそれはあり得ません。
ちくわぶに馴染みのない大阪人が例えに“ちくわぶ”を持ち出すことなど絶対にない。
食べたことも見たこともないという人がほとんどですから。
ここが目立ってリアリティを損ねていました。
ラベル:小説
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2020年01月18日

「増補版 ディズニーランドの経済学」粟田房穂 高成田享

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1983年に開業した東京ディズニーランド。
もう今年で37年になりますか。
しかし長く続いていますね。
2018年にはディズニーシーと合わせてですが、過去最高の入園者数を記録したとか。
まさに遊園地の中では独り勝ちの感さえあります。
アメリカ生まれのディズニーランドがなぜここまで日本に受け入れられたのか。
ハード面ソフト面、様々な角度からそれを分析しています。
この本が最初に出たのが1984年。
開業の翌年ですね。
あとがきには「この成功がいつまで続くだろうか」と書いたそうですが、40年近くも独走しているわけです。
著者もこれはさすがに予想外だったようですね。
まるで生命体のように姿を変化させていくとは思ってもみなかったと。
そう、このような施設はつねに進化し続けていないと飽きられてしまいます。
あの手この手を打ち出して客を呼び込んでいます。
アトラクションの追加、そしてディズニーシーを立ち上げ、東京ディズニーリゾートとして進化しています。
さて、10年後20年後はどのようになっているのでしょう。
少子化がどのように影響するのかも懸念ですね。
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2020年01月16日

「かけら」青山七恵

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3編収録の短編集。
桐子は写真教室に通う女子大生。
家族5人でさくらんぼ狩りツアーに行く予定だったのですが、兄の小さい娘が熱を出し、心配した母が行かないと言い、兄も行かないと言い出します。
結局は桐子と父の2人で出かけることになります。
父と2人きりという状況がどうも気詰まりです。
しかし一緒に行動しているあいだ、桐子は父の今まで見たことのなかった顔を目にします・・・・。
他の2編もそうなのですが、共通して底辺に流れているのは所詮自分以外の人間のことなんてその正体はわからないということですね。
わからないのだけど、だからこそ(?)気になってぎこちなく意識してしまう。
父と娘であっても知らない部分はたくさんあるわけです。
「欅の部屋」は婚約者がいる男性が同じマンションに住む元カノの心境が理解できず、結婚を控えていながらも心を乱されるというような話です。
付き合っていた時に彼女がこのマンションに引っ越してきたのですが、いきなり一方的に別れを告げ、しかしいまだに同じマンションに住み続けています。
どうやら彼から乗り換えた相手とは破局したようですが。
もしかしてまだ自分のことを・・・・などとうぬぼれた気持ちを持ってしまったりもします。
「山猫」は西表島に住む叔母の娘が東京の大学に進学したいということで、東京を案内してあげてほしいと頼まれ、しばらく新婚家庭に寝泊まりさせることになります。
しかし表情もなく口数の少ないその少女は何を考えているのかわからない。
自分と夫とでは態度も違います。
彼女の言動が不快に感じ、声を荒げてしまったりもします。
人間、つい他人に自分が思い込んでいるイメージを求めがちですが、決してそんなわけはないのですね。
ラベル:小説
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2020年01月14日

「跳べ、ジョー! B・Bの魂が見てるぞ」川上健一

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スポーツをテーマにした8つの短編です。
テニス、野球、ボクシング、ラグビー、アイスホッケー、バスケットボール。
表題作はバスケットボールです。
身長175cmしかない黒人のジョー。
しかしひたすらダンクシュートにこだわります。
白人への捌け口をバスケットリングにぶつけるかのように・・・・。
私がいちばんよかったと思ったのは「熱いトライ」です。
タイトルからわかるようにラグビーをテーマにしています。
ワントライも上げることができずラグビーの試合中に亡くなった父親の遺志を息子が受け継ぎます。
ベタな話ではあるのですが、それでも読んでいて感情移入してしまいました。
試合の描写が実に熱い。
ただ表題作もそうなんですけど、一人称で書かれている作品の文章がちょっと気取りすぎで鼻につきます。
まあデビュー作品集ということで、それもまた初々しさでしょうか。
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2020年01月12日

「あのひとは蜘蛛を潰せない」彩瀬まる

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28歳の梨枝は24時間営業のドラッグストアの店長。
躾に厳しい母のもとで実家暮らしです。
男性経験もなかった梨枝ですが、ある日入ってきた大学生と付き合い始めます。
それがきっかけでしょうか、母に反発し、いよいよ一人暮らしを始めます。
しかし母から離れてみて、自分はいかに母の躾を叩き込まれていたか、ことあるごとに気付かされます。
失踪した中年店員の柳原、彼氏の三葉君、来店するたびにバファリンを買っていく鎮痛剤依存症の“バファリン女”、義姉で幼馴染みの雪ちゃん、いろんな人たちと関わりながら梨枝もひたすら毎日を過ごしていきます・・・・。
梨枝の現状というのがなんといいますか非常に宙ぶらりんなんですね。
ドラッグストアの店長といっても、あちこち主力でない店に回されています。
自分に自信がないので、売り場のレイアウトなども部下に意見を聞かないと不安で独断による決定ができません。
家庭でも28歳という年齢でいまだ母親の呪縛から抜けられていない。
夜勤から帰ってきてもきっちりと栄養のバランスを考えた朝食が用意されています。
家の中はつねに母により掃除が行き届いています。
一人暮らしをしたいと母親に伝えたときは、あんた一人で何ができるのかと罵倒されます。
それでも飛び出して一人暮らしを始める。
うんうん、そんなもんです。
今までできなかった、していなかったことでもいずれはしていかなければしょうがない。
人間関係にしても、立ち向かっていかなければしょうがない。
いろんな人に対して、いろんな状況に対して。
そんな梨枝の成長の物語といえば大げさですね。
少しずつ変化していく日々です。
タイトルの「蜘蛛を潰せない」というのは失踪した柳原さんのエピソード。
深夜の仕事中、レジカウンターに現れた小さな蜘蛛に戸惑う柳原さん。
梨枝がティッシュにくるんで店の外に放ちます。
そんな柳原さんがある日、若い女と失踪する。
柳原さんは最初の章に出てくるだけです。
蜘蛛は最後の章にも出てきます。
平気で蜘蛛を潰せるアルバイトの小林君の前に。
ですが梨枝は「潰さないで」と蜘蛛を外に逃がしてやります。
ラベル:小説
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