2020年01月10日

「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」七月隆文

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京都に住む大学生の南山高寿は、電車の中で女の子に一目惚れしてしまいます。
思い切って声を掛け、付き合ってもらえることに。
彼女の名前は福寿愛美。
高寿は何度かデートして会話した中に、どうも腑に落ちない愛美の言葉に気付きます。
なぜか知るはずのないことを知っている。
実は彼女は別の世界からやって来て、この世界とは時間を逆に進む世界の女性でした・・・・。
ちょっと話がややこしいです。(笑)
彼の時間は未来へと進み、彼女の時間は過去へと進む。
そのすれ違いの期間を描いています。
普通、恋愛して付き合うとなると、二人で時間的に同じベクトルを向いて一緒に思い出を築き上げていきます。
一緒に歳を重ねていきます。
でもこの場合、どんどん遠ざかっていくのですね。
電車がすれ違うように。
そのすれ違っている時間が彼らのすべてなんです。
これはせつないですね。
やり切れません。
しかし二人は目一杯その時間を大切に過ごします。
現実離れした設定ではあります。
ですが、愛する人との今この時間。
それがどれだけ貴重で、その瞬間しか体験できないものであることか。
考えさせられる作品でした。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『な』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月08日

「評論家入門 清貧でもいいから物書きになりたい人に」小谷野敦

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世の中いろんな評論家がいますよね。
なにか事件があるとそれに見合ったジャンルの評論家がすかさずテレビに登場します。
戦争が起これば軍事評論家、飛行機事故があれば航空評論家とか。
他にもいろんな評論家がいます。
料理評論家、美術評論家、野球評論家、などなど。
さて、この本でいう評論家とは主に文藝に対しての評論家ですかね。
あとは社会学とか心理学とか、これも文藝評論の流れという感じで。
まあ評論家なんて自分で名乗ればとりあえずは今日からなれるんですけどね。
しかし世間に認められるにはある程度の実績がなければなりません。
やはりまずは著書でしょうか。
本を出しませんとね。
しかしこれがなかなか。
出したからといって売れるわけでなし。
というわけで、サブタイトルにもありますように「清貧でもいいから物書きになりたい人に」となるわけです。
著者の実体験を踏まえ、評論というものについていろんな角度から考察しておられるのですが、これらを飲み込んで、なおかつ評論家、物書きになりたいか。
たぶんそれでもなりたいという人はかなりの数いると思います。
貧乏でもいいから文章を書いてなんとか生計が立てられるのならそれでもいい、と。
でも現実はそんなに甘くないです。
生計を立てられるほどの収入を得ることさえ相当難しいです。
大学教授みたいに本職があって、サブの肩書でなんたら評論家ならいいですけどね。
まったくのフリーで評論家の看板をあげて生活するのはよほどの人でないと。
評論家じゃないですけど、人気作家の伊坂幸太郎氏
サラリーマンをしておられたのですが、小説1本でやっていこうと会社を辞めたとき担当の編集者から「なんで辞めたんですか」と心配されたそうです。
つまり小説を書いて食べていけるなんてほんの一握りの人だけなんですね。
あの伊坂幸太郎でさえ担当編集者は今後の生活(収入)を危惧したわけです。
ましてや評論家なんて。
それでも物書きになりたい人は、ぜひ本書をお読みください。(笑)
posted by たろちゃん at 03:46| Comment(0) | 『こ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月06日

「H(アッシュ)」姫野カオルコ

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10編収録の短編集です。
アパートの壁に穴を開け、隣の空室を覗き続ける男性。
その空室に女性が入居してきます。
セックスなどしそうもない清楚な雰囲気の女性です。
男は勝手に彼女を菜穂子と名付け、覗き続けます。
しかしそこに中年男がやって来て、嫌がる彼女を無理やり・・・・。(エンドレス・ラブ)
自分の店を持つことを夢見ている女性美容師のもとに客としてやって来る友人のミア。
主婦で子供もいて飲食店でパートをしているくせに肩書が『舞台人』な女。
白塗りしてわけのわからないのセリフと踊りを演じているだけの自己満足なショウをやっているだけの女。
そんなミアが大嫌い・・・・。(鞄の中の妖精)
などなど。
う~ん、なんといいますか、収録作すべてではありませんが、けっこうバカエロですね。(笑)
「正調・H物語」は平家物語のポルノ仕立てのパロディですし。
そのあたりのバカバカしさは森奈津子に似たものがあります。
まあ楽しめましたけど、なんだかあと一歩な感の作品集でした。
ラベル:小説
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2020年01月04日

「早起きのブレックファースト」堀井和子

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「早起きのブレックファースト」ということですが、朝食に特化した内容というわけではありません。
タイトルの著書他2冊を文庫化するにあたって1冊にまとめたようですね。
器や雑貨といった暮らしについてのエッセイも収録されています。
自然体だとかエコだとか、肩の力を抜いたちょっとオシャレな生活に憧れる女性が喜びそうな内容ですね。(笑)
1日の始まりは朝にありなわけで、朝食というのはその日のスタートを切る儀式ともいえます。
頭や体を目覚めさせ、午前中の勉強や仕事がはかどるともいわれています。
効果なしなんて説もありますけどね。
しかし慌ただしく家を飛び出すよりも、ゆっくり朝食を食べるくらいのゆとりがあったほうがいいとは思います。
ラベル:グルメ本
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2020年01月02日

「宇喜多の捨て嫁」木下昌輝

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戦国大名・宇喜多直家。
自身の出世のためなら平気で娘の嫁ぎ先を滅ぼし、義父の首さえも切り落とします。
そんな宇喜多直家の半生とはどのようなものだったのか・・・・。
於葉は直家の四女。
後藤勝基に嫁ぐのですが、なんと祝言の場にて直家が浦上家に謀反を起こしたと聞き、血の気が引きます。
浦上松之丞は於葉の姉である小梅の婿です。
その小梅は松之丞に殉じ、自害したとのこと。
その宇喜多の軍勢はいよいよ後藤家にも押し寄せてきます。
於葉は後藤家の嫁として、宇喜多家と戦い後藤家に殉ずることを決意します・・・・。
表題作他5編を収録した連作短編集、というよりは、私は長編として読みましたけどね。
ただそのように読むと時代が前後していたりしてちょっとややこしいのですが。
視点を変えていろんな角度から直家を、出来事を描いています。
宇喜多直家は『尻はす』という病を患っており、体中の古傷から血と膿が大量に滲み出る奇病です。
生きながら体を腐らせていく直家が臥せっている部屋には、腐臭がこもっています。
この腐臭がなんとも全編に漂っているような気がして、非常に雰囲気が重い。
そして直家の手段を選ばない非道っぷりが輪をかけてその雰囲気を強調します。
ですが、ちゃんと直家の内面も描かれており、そのような業を背負った悲しさ寂しさのようなものも感じさせます。
この作品は『第2回高校生直木賞』を受賞しています。
これは直近1年間の直木賞候補作の中から選ばれた5作品について選考に応募した全国の高校が校内で予選会を行い、全国大会として代表が集まった本選会で議論し受賞作を選ぶというものです。
この回の候補作は本作の他、「サラバ」西加奈子、「悟浄出立」万城目学、「本屋さんのダイアナ」柚木麻子、「満願」米澤穂信。
高校生がこれらの作家・作品の中から本作を選んだというのがすごい。
まあ高校生といいましても私ごときなど及ぶべくもない読み巧者な人たちでしょうけど。
作者にとってはこれがデビュー作。
これまたすごい。
ラベル:時代小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『き』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする