2019年11月03日

「鶏」山上龍彦

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川名孝男は『郷土特産品育成委員』です。
全国郷土食品の調査と分析、地域をテーマにした物産展や展示会の企画、郷土食品が全国的な規模で受け入れられるかどうかなどを調査しテストするのが仕事です。
そんな川名がやってきたのは後翅町という地方の町。
後翅地鶏というのが名物で、生産者に会い実際に食べ、それが商品化できるかどうか調査するのが目的です。
しかしそこで出会ったのは突然変異ともいえる鎖につながれた牛ほどもある巨大な鶏で。
しかもその鶏は飼い主から逃げ出し、どんどん巨大化し、人間を襲い、川名を執拗に追いかけ始めます・・・・。
う~ん、田舎の風景や郷土食という作者が書きたかったテーマと、化け物のような巨大な鶏という設定が噛み合っているのかどうか。
私はうまく乳化していないように思いましたが。
たしかにこのテーマだけではあまりにも地味で、なにかしらエンターテイメントな要素を入れる必要はあるでしょうけど、無理やり味付けしたような強引さを感じました。
鶏との格闘は迫力ありましたけどね。
変に理屈っぽくテーマを主張せず、巨大鶏に絞って物語を作ったほうがよかったのでは。
テーマなんて微かに匂わせる程度でいいんです。
ちょっと作者の意気込みが空回りしてしまったように感じました。
ラベル:小説
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2019年11月01日

「清貧の食卓 文人グルメが明かす美味の原点」山本容朗 編

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サブタイトルに“文人グルメ”とありますように、食については一言お持ちの文人たちが書いた食についてのエッセイを集めた一冊です。
古いのになると北大路魯山人のように昭和一桁に書かれたものだったりしますが。
メインのタイトルは「清貧の食卓」ですが、これは必ずしも内容に当てはまりません。
別に貧しい食生活を紹介しているわけではありませんので。
ただ現在のようなきらびやかな料理は出てきませんので、そういう意味では清貧かもしれませんが。
しかし皆さん現在のようなグルメごっこではなくこだわりを書いておられますので、今からすればかえって贅沢な話かもしれませんね。
素材も今と昔では質が違うでしょうし。
登場するのは21名。
対談がひとつ。
東海林さだお氏以外はすべて亡くなられていますか。
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2019年10月30日

10月の一冊

今月は14冊の読書でした。

・「ヘンだと思ってたけどやっぱりヘンだったあのヒトたち ワイドショーお騒がせオンナ列伝」山田美保子
・「侠飯3 怒涛の賄い篇」福澤徹三
・「好きなものを食べて長生きできる 長寿の新栄養学」フレディ松川
・「いつまでも白い羽根」藤岡陽子
・「銀翼のイカロス」池井戸潤
・「フランス料理は進化する」宇田川悟
・「ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領」アンドレス・ダンサ/エルネスト・トゥルボブィッツ 
・「わすれなぐさ」吉屋信子
・「ゆで卵の丸かじり」東海林さだお
・「嘘つきLovers」知念みづき
・「ちばてつやが語る「ちばてつや」」ちばてつや
・「きれぎれ」町田康
・「ビートルズを呼んだ男 伝説の呼び屋・永島達司の生涯」野地秩嘉
・「スイッチ」さとうさくら

「ヘンだと思ってたけどやっぱりヘンだったあのヒトたち ワイドショーお騒がせオンナ列伝」、まあミーハーな本です。(笑)
読んでためにはなりませんが、ひまつぶしにはなります。
「侠飯3 怒涛の賄い篇」、シリーズ第3弾の今回はヤクザ事務所の賄い飯でした。
見た目いかつい柳刃の真摯さがいいですね。
「好きなものを食べて長生きできる 長寿の新栄養学」、健康オタクというのがやたら多いですよね。
好きなものを食べずに我慢してまで長生きしたいのか、と考えさせられます。
「いつまでも白い羽根」、看護師ではなく看護学生たちを描いています。
看護学校とか看護実習のリアリティはさすがに現役の看護師でもある作者ならではしょうか。
「銀翼のイカロス」、半沢直樹シリーズ第4弾。
あいかわらず一級のエンターテイメントですね。
「フランス料理は進化する」、ルイ14世の時代から現代までフランス料理はどのように進化してきたのか。
いろんなシェフや食材、地方料理などにも触れ、フランス料理の魅力を伝えています。
「ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領」、元ゲリラという異色の経歴を持つ元ウルグアイ大統領のルポタージュ。
金持ちになることが幸せではない、と。
「わすれなぐさ」、昭和ロマンな少女小説。
まあ雰囲気はありますね。
「ゆで卵の丸かじり」、ゆで卵は丸ごと口に入れて食べるのがおいしいと看破。
恐れ入りました。(笑)
「嘘つきLovers」、親友に頼まれ見ず知らずの男を誘惑する主人公。
説得力なさすぎ。
「ちばてつやが語る「ちばてつや」」、ベテラン漫画家が語る半生と作品。
とても興味深く読みました。
「きれぎれ」、かなりシュールで難解ではありますが、これはもう深く考えず身をゆだねて読むべし。
そしたらまあバカバカしくて大いに笑えます。
「ビートルズを呼んだ男 伝説の呼び屋・永島達司の生涯」、ビートルズを呼んだ男とのことですが、もちろん他の大物も多数招聘しています。
あまり表に出ることはありませんでしたが、大きな人物ですねぇ。
「スイッチ」、友達も彼氏もおらず26歳で処女。
でもしっかりと自分の世界を持っていればそれでいいんじゃないかと思いましたけどね。

では今月の一冊をば。
絞りまして「いつまでも白い羽根」と「銀翼のイカロス」ですね。
「銀翼のイカロス」はさすがの半沢直樹シリーズで面白く一気に読んだのですが、「いつまでも白い羽根」のじんわりと染み入る魅力も捨てがたく。
派手さはありませんが、このような小説がもっと読まれることを願い、「いつまでも白い羽根」を今月の一冊に選びます。

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2019年10月28日

「スイッチ」さとうさくら

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苫子は26歳。
就職活動で落ち続け、現在はフリーター。
友達も彼氏もおらず、いまだ処女。
コミュニケーションが苦手でファミレスのバイトもクビになってしまいます。
なんとか清掃会社にバイトで入り、そこでいろんな人と出会います。
苫子の教育を担当した主婦の中島さん、後輩の元キャバクラ嬢の瑠夏、苫子が清掃しているビルに会社がある短大時代同じ専攻だった結衣。
たまたま仕事帰りに目について立ち寄った喫茶店のマスター、サル男。
いろんな人と関わりながら、苫子の日常が変わってきます・・・・。
これが作者のデビュー作。
以前に「携帯を盗み読む女」というのを読みまして、これがイマイチでした。
ですがこのデビュー作は思いのほかよかった。
最後までじっくりと読まされました。
それぞれの登場人物にいろんな事情があり、苫子がそれに巻き込まれながらも性格的に近づけず距離を置いた付き合いだったりします。
そのあたりをじっくりと描いていますね。
タイトルのスイッチですが、これは人に皆首の後ろにでも小さなスイッチがあり、そのスイッチを押すとその人物がこの世から消える。
そんなスイッチがあればいいのに、という苫子の願望です。
苫子の性格といいますか世の中から浮いていると思っている心理を表しているとは思いますが、タイトルにするほど効果的なアイテムになっているのかなと思いました。
ラベル:小説
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2019年10月26日

「ビートルズを呼んだ男 伝説の呼び屋・永島達司の生涯」野地秩嘉

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1950年代。
呼び屋といわれる人たちが現れます。
戦後の日本に海外の有名なミュージシャンなどを招聘した人たち。
今でいうプロモーターですね。
でも当時はそんなカタカナな言葉などなく、呼び屋という侮蔑的な意味も込めた言葉で呼ばれていました。
しかしそのような仕事に生涯を捧げ、世界中のミュージシャンから尊敬された人物がいました。
1966年にビートルズを来日させた男、永島達司です・・・・。
タイトルにもあるようにビートルズを来日させた人物の半生を描いたノンフィクションです。
内容としましてはビートルズの招聘がメインとなってはいますが、それまでの経歴がすごい。
本書ではまずジャズミュージシャンのジョージ・ルイスから始まります。
彼とのやりとりを読みますと、永島の真摯な姿勢がわかりますし、それに応えるジョージ・ルイスの人物もまたいい。
その後関わった有名ミュージシャンは数知れず。
巻頭にはビートルズの貴重な写真が掲載されていますし、マイケル・ジャクソンやエルトン・ジョンとの写真もあります。
そのビートルズですが、当然当時の呼び屋たちは彼らを狙っていました。
世界的なスーパースターですから。
そんなビートルズであったにも関わらず永島は食指を動かさなかったのですが、向こうから話が来たんですね。
日本でコンサートをやりたいと。
永島、やってくれないかと。
いかに永島が信頼されていたかということですよね。
しかし永島はこの話を断ろうと思っていたそうです。
このあたりのエピソードもまた永島の人物がよく描かれていると思います。
永島達司という人、実に真摯で紳士な人物だったのですね。
当時としては、いや現在でもちょっと日本人離れした感性の持ち主だったようです。
そんな永島達司という人物、そして日本の音楽興行の変遷、その舞台裏、そういったことが記された資料的な価値もある一冊かと思います。
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